≪第95回全国高校野球選手権大会≫
【優勝予想】
今年も甲子園の季節がやって来ました。
昨年は大阪桐蔭が春夏連覇を達成した『夏の甲子園』。
しかし今年は、有力校が散らばる【戦国大会】の様相を呈しており、どんな展開が待っているかは神のみぞ知るところ。
そんな中、今年は地区ごとに有力校を探っていきたいと思います。
【北海道・東北】
優勝候補に名を連ねる仙台育英。北照、聖光学院のセンバツ組は、8強越えを狙う。
ここ数年、毎年優勝戦線に絡んでくるチームを輩出する北海道・東北地区。昨年は春夏共に光星学院(青森)が決勝に進出。その力を見せつけた。ここ数年の東北地区の有力チームの傾向としては、とにかくパワーがあって、相手を粉砕するチームであるということ。その特徴を生かしたチームとして、今年は何と言っても仙台育英があげられよう。秋の神宮大会で”日本一”を達成して臨んだ春は打線が力を出せずに準々決勝で涙を飲んだが、元々全国屈指の強力打線と安定した投手陣を誇る今年の”東北勢イチオシ”。春の選抜帰りからも東北大会で優勝を飾るなど勢いを衰えさせることなく夏を迎え、今大会の有力校に上がることは必至だ。鈴木、馬場の2枚看板の投手陣も心配なく仕上がっており、今年こそは『本気で狙いに行く』年になりそうだ。この仙台育英に近い力を持つのが、南北海道の北照。こちらも選抜ベスト8の実績を持ち、左腕の技巧派・大串の投球が冴える。いわゆる『勝ち方』を知ったチームなので、大串が大きく乱れなければ安定した戦いぶりで上位を伺うことになるだろう。波に乗ることが出来れば、04年、05年の”駒苫の再現”も有り得るか。県内92連勝で5季連続の出場を決めた聖光学院は、こちらも選抜8強の実績。しかし今年の夏の戦いぶりはいつもと違い、接戦、逆転の連続。苦しい中王座を守ったという強烈な自負を持って全国の舞台に挑む。今年のチームは軸になる投手が見つからず戦力的にはやや苦しいものの、今や名前で勝負できるまでになっているチームの熟成度で、ひと波乱を狙う。しぶとさを見せたのが花巻東と秋田商。花巻東は盛岡大付属との決勝で圧倒的に振りを予想されながら、初先発の細川を大事な試合に送るという勝負手に出て、見事に難敵を下した。小技の精度はピカイチ。グッと盛り上がるチームは、声と全力疾走で相手をじわじわと追い詰める。6年ぶりに夏を射止めた名門・日大山形は打線が看板。荒木監督ご自慢の打線は1試合7,8点は軽く取りにいける破壊力。弘前学院聖愛と帯広大谷はいずれも元女子高で歓喜の初出場。しっかりと聖地にその歩みを残してきたい。
【関東】
春夏連覇狙う浦和学院が充実。日大三、横浜も覇権争いに加わる。
力を持った常総、前橋育英も控え豪華な顔ぶれがそろう。
いつになく強豪が波乱なく聖地に集結したという感じで、活躍が期待される大会となった。まずは選抜優勝で春夏連覇を狙う浦和学院は、自慢の強打よりもエース小島の成長で戦いぶりが安定してきたのが好材料。上手く大会に入ることが出来れば、十分に連覇を狙える位置に立つ。小島はとにかく制球力と球のキレが抜群で、まさに”難攻不落”のエースへと成長。50イニングで3失点は並の投手じゃないことの証明だ。打線は相変わらず山根、高田、小暮の中軸を中心としてよく振れており、重圧のかかった県大会を突破したことで甲子園ではノビノビとした攻撃力を発揮できそうだ。選手は大阪桐蔭へのリベンジを口にしており、両校が戦えば歴史に残る激闘が展開されるかもしれない。強打で鳴らす日大三も、今年のチームでは密かに2年ぶりのVを狙っている。こちらもエース大場の成長が心強い。140キロ台中盤の速球でグイグイと内角を強気に攻める投球は圧巻。控えに4人のピッチャーを揃える豪華な布陣で、守りは一手に引き受ける。打線はまだ本領を発揮しているとは言い難いが、打球の速さは他校にはない。球威のある相手Pには打ち上げてしまう悪癖が出なければ、どんな相手からも5,6点は奪えそうだ。桐光・松井を攻略して2年ぶりに帰ってきた横浜は、2年生がレギュラーのうち8人を占めるという若いチーム。その若さが大舞台では心配の種だが、相変わらずその”野球力”は恐ろしく高い。エース伊藤は結局県大会をほぼ投げ抜いて準決勝、決勝を連続完封。浦学・小島タイプのキレと球の出し入れで勝負する好投手。初めて対戦するバッターが完全に彼を攻略することは、まずないであろう。高濱・浅間を中心とした長打力抜群の打線が火を噴けば、【1年早い】全国制覇も。その他でも主砲・内田が県大会で4本塁打を放った常総学院、2年生エース高橋が145キロの速球を連発する大型チーム・前橋育英、甲斐のダルビッシュ・山田がマウンドに仁王立ちする日川など、楽しみなチームが多い。どのチームも8強以上を狙える戦力を持っており、久々の豪華な布陣と言えるだろう。その他でも3年連続の夏で切れ味抜群の小針采配で臨む作新学院、強打でライバル・帝京を粉砕した修徳、2年連続で聖地に届いた木更津総合など、戦いぶりに特徴を持つチームもあり、楽しみな大会だ。
【東海】
打線看板で投手も安定する常葉菊川が地区最強。愛工大名電、大垣日大なども虎視眈々と上位狙う。
強打のチームが揃った印象だ。選抜で2勝をあげた常葉菊川は、その余韻をかって春の東海大会を制覇。『春の覇者は夏には勝てない』というジンクスのある静岡大会も勝ちきって、しっかりと甲子園までたどり着いた力は特筆されるべきだろう。東海地区では、最も力を持っている。エース堀田は投手陣の中心としてその存在感を放っているが、控えの渡辺竜にも完全にめどが立ったのが大きい。あとは甲子園でもしっかり振り抜く打線が機能するかどうか。狙いは8強。その力は十分に持っている。名将・坂口監督の大垣日大は、今年の大本命・県岐阜商に堂々と挑んで完勝。波に乗っている。もともと打線の力はあるので、投手陣がしっかりと抑えれば甲子園でも戦える戦力だ。愛工大名電は、さすがと言われる夏の戦いぶりだった。攻守に穴を感じさせなかったが、スケールの大きさは昨年ほどではなく、監督悲願の『夏1勝』がなるかどうかは、県大会同様のしぶとい戦いができるかどうかだ。投手陣好調の三重は、対戦相手にもよるが、競った展開に持っていきたい。
【北信越】
悲願達成の上田西、富山第一。強豪撃破した名門・星稜、福井商、日本文理。
『悲願成るか』と言われていた学校が多く姿を見せる各地区の大会となった。上田西と富山第一は、まさに”長年恋焦がれていた”甲子園初出場。上田西は柳沢、浦野など信頼できる投手陣が好調を維持している。富山第一にも、宮本、石川、梶尾と3枚看板が控える。両校ともに甲子園の雰囲気に慣れれば十分に夢の1勝をもぎ取れる力がある。ライバルを倒しての進出は、星稜と福井商だ。星稜は確実に相手を突き放す安定した戦いぶりが特徴。福井商はエースの中村文が大きく成長。敦賀気比、春江工のライバル2校を連破し、その力を見せつけた。日本文理も、相変わらず攻守に精度の高い野球を見せて2年ぶり。3校ともに、甲子園での目標は1勝ではなく2勝だ。
【近畿】
夏連覇を狙う大阪桐蔭の戦いぶりに注目。各地で起こった地殻変動、なじみのない学校の進撃がなるか。
今年の地方予選は、近畿地区に大地殻変動を生んだ記憶される大会になるだろう。まずは和歌山で、9連覇を狙った智弁和歌山が敗れ去り、その間隙をぬって名門・箕島が復活した。箕島は看板の黒潮打線を引っ提げ、尾藤監督の息子・強氏が初采配を振るう大注目株だ。ならではもっとすごいことが。なんと43年も続いた天理、智弁、郡山の3強時代についに穴が開き、桜井が初出場を決めた。『どんなチームが出てくるんだろう』という、全国の高校野球ファンの間でも話題沸騰のチームだ。そして兵庫では、『駅伝の』と枕詞のつく西脇工が初の進出。まったくの無印だっただけに、どんな野球をするのか、こちらもさっぱり情報がない状態だ。滋賀では藩校でもある彦根東が初出場。200年の歴史を持つ学校が、大いに盛り上がることだろう。そんな”まっさらな”チームに交じって、やっぱり実力を見せたのが大阪桐蔭。森捕手を軸にして、水谷、近田らで組む打線の破壊力はやはり全国屈指。『夏連覇』の重圧がかかることは想像に難くないが、『現代の高校野球NO1チーム』である大阪桐蔭の戦いぶりは、いつも注目の的だ。関東、東北らの優勝候補を相手に、いったいどんな戦いぶりを見せてくれるのか。福知山成美には、あの太田幸司氏を父に持つ太田主将が控える。注目されることは間違いない。
【中国・四国】
久々大会の主役になれるか?四国勢
中国勢では、タフな豪腕を持つ瀬戸内に注目
ここしばらく鳴りを潜めていた四国勢が、久々に息を吹き返しそうな気配だ。優勝候補の一角として挙がる明徳義塾に選抜準優勝の済美は、優勝争いの中心にいるはず。両校ともにしっかりした投手陣を中心に守りから試合に入り、打線は破壊力こそないが”点の取り方を知っている”上手い攻撃で得点を重ねるスタイル。本来の【四国野球】のスタイルを踏襲したこの両校が、優勝候補として大会を引っ張る存在になれるか。心配な点は、明徳は打線に破壊力がないところ。ここ数年明徳の”泣き所”となっているこの点は、今年も完全に解消されたとは言い難い。小技、選球眼、走塁などで得点力をある程度維持できれば、最上位校とも互角の戦いができるだろうが、どうか。済美は春の選抜でも見られた、安楽に過度に頼りすぎること。まだ2年生。そして選抜以上に過酷な条件での連投となるため、最後まで安楽が持つのか。その両校以上に甲子園に皆勤している鳴門は、これで4季連続。相変わらず打撃のチームだが、年々しぶとさを増してきており、面白い戦いが出来そうだ。丸亀は3年連続準優勝はご免という気迫が代表を手繰り寄せた。
中国地区で最も注目されるのは、決勝の2試合24イニングを一人で投げ抜き無失点に抑えた瀬戸内のエース、山岡。今大会屈指の好投手に上げられる。このタフネスな豪腕を上位に上げるか否かは、バックの援護にかかっている。自信を持って臨めれば、かなり面白い存在になりそう。選抜で履正社を完封したエース高橋の岩国商は、心配された【燃えつき】の症状を見せることなく夏も覇権を奪い取ったのは見事。ひ弱さが感じられた打線がどこまで得点力を増しているか。鳥取城北、石見智翠館は全国的に見ると苦戦が予想されるが、なかなかの戦力を持っている。暴れることが出来るか。玉野光南は久々の登場。かつて”最強”の日南学園、寺原に追いすがったり、延長で逆転サヨナラ勝ちしたり・・・・。何かをやるチームというイメージが強いが、今年は創立30周年の年でもあり、初戦突破は譲れないところだろう。
【九州】
大物はいないがしぶとく接戦を制するチーム多い。身体能力も高く、決して侮れない。
例年夏の甲子園の上位に何校も顔を出す九州勢だが、昨年から今年にかけては音なしだった。今大会でも今ひとつ力を持ったチームは見当たらないが、その中で活躍を期待される学校としては、沖縄尚学と熊本工が双璧か。沖縄尚学はセンバツでまさかの初戦大敗。一時は評判を著しく落としたが、ここにきてさすがに復活して代表の座を射止めた。2枚看板の投手陣は、新チーム結成時から注目を浴びていたが、今度こそ甲子園で本来の力を発揮したいところ。打線は沖縄らしい低いライナーを連発する破壊力のある打線。上手く大会の波に乗れれば4強以上も十分に可能な戦力だ。一方の熊本工。エース山下は安定感抜群の投手。それを支える打線に勝負強さが備わったのは好材料。なんとなく96年の準優勝チームに雰囲気が似ているところもあり、もしかしたら快進撃が期待できるかもしれない。福岡で初出場の自由が丘は、大きな特徴はないが、エース久保が相手打線を抑えているスキに打線がしっかりと点を奪って逃げ切るという戦術。県大会でことごとく強敵を倒してきたところから見ると、かなり力を持ったチームであることがうかがえる。延岡学園も力がある。佐世保実も連続出場を果たし、昨年以上の実績で2勝、3勝目を狙う。打線の破壊力は全国の強豪にも引けを取らない。樟南も伝統の力を見せた。有田工、大分商というしぶといチームを加えて、すべてのチームが8強入りを狙っている。
【優勝候補】
Aクラスの戦力を持つ浦和学院、連覇を狙う大阪桐蔭、破壊力満点の打線もつ仙台育英、試合巧者・明徳義塾の4強が大会をリードする。
それを打線の破壊力抜群の日大三、野球力の高い横浜、安楽の済美が追う展開。
ダークホースでは、大串投手の北照、連続出場の常総学院、力のある前橋育英。エース山岡の瀬戸内も面白い。沖縄尚学も絡むか。
面白いと思われるのは、聖光学院、福井商、常葉菊川、佐世保実、熊本工など。
さて、
どんな大会になっていくでしょうか。