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16年目突入。ビッグイベントに心躍らせながら、草の根のスポーツの面白さにも目覚めている今日この頃です。

最も印象に残った球児   31.和歌山

2012年09月07日 | 高校野球名勝負

◇もっとも印象に残った球児

31.和歌山



石井 毅   投手  箕島   1978年 春夏  1979年 春夏    


甲子園での戦績

78年春   1回戦    〇   1-0   黒沢尻工(岩手)
        2回戦    〇   4-1   小倉(福岡)
        準々決勝  〇   2-0   PL学園(大阪)
        準決勝    ●    3-9   福井商(福井)
    夏   1回戦    〇   1-0    能代(秋田)      
        2回戦     〇   6-1    広島工(広島)
        3回戦     ●   4-5    中京(愛知)
79年春   2回戦    〇  10-4   下関商(山口)
        準々決勝  〇   5-1    倉吉北(鳥取)
        準決勝    〇   4-3   PL学園(大阪)
        決勝     〇   8-7    浪商(大阪)
    夏   2回戦     〇   7-3    札幌商(南北海道)
        3回戦     〇   4-3    星稜(石川)
        準々決勝   〇   4-1    城西(東東京)
        準決勝    〇   3-2    横浜商(神奈川)
        決勝      〇   4-3    池田(徳島)


通算14勝2敗。
これが箕島春夏連覇のエース、石井が残した記録です。
PLの桑田に抜かれるまで、
『甲子園最多勝』記録として残っていました。
まさに燦然と輝く記録です。

和歌山で印象に残った選手を選ぶにあたって、
昭和期の箕島と平成期の智弁和歌山、
その両チームからたくさんの選手をピックアップしました。

箕島ではこの石井のほかにバッテリーを組んだ島田の名前が上がりました。
主砲・北野や77年の”定時制エース”東。
上野山や吉井といった好投手も、もちろん名前が上がりました。

智弁和歌山では何と言っても2000年のチームの4番、主砲・池辺。
柔らかいスイングから放たれる打球は、マッハのスピードを持っていました。
その他でもこの年の山野、堤野や97年組の中谷。
その後の”豪打・智弁”の中心に座った橋本や坂口なども、忘れられない球児です。

しかし、なんといっても石井毅は、
その独特のアンダースローから投げ込まれる安定感抜群の投球が、
箕島野球の象徴のような気がして、
『和歌山県代表』としてピックアップしました。


石井はデビューから、
センセーショナルな投球を披露しました。
【選抜連覇】のかかった78年、
2年生エースとして春のセンバツで甲子園デビュー。
黒沢尻工につけ入るスキを与えず完封。

その後小倉戦で1失点完投勝利の後、
待っていたのは優勝候補の本命と目されたPL戦。

PLはこの年の夏を制するメンバーがずらり。
エースの西田-木戸のバッテリーをはじめとして、
凄いメンバーでした。

そのチームを相手に回し、
石井はこれ以上ないピッチングを披露。
なんと6安打で完封してしまったのでした。

準決勝を迎える前、
残った学校を見て、
ほとんどのメディアが『箕島の連覇が濃厚』との見出しを躍らせました。

しかしそこに落とし穴が待っていた。

きちっと守って、
せめては小技と機動力を駆使して塁を進め、
勝負強い打撃で好機をものにする。

これが箕島野球と言われるものでしたが、
準決勝の福井商戦、
前戦でPLを破った気のゆるみが出てしまったか、
若い箕島のナインは今までとは全く違った、
信じられないようなミス連発の凡試合をやって、
『負けるはずのない』福井商に3-9と完敗を喫してしまいました。

被安打12,9四死球、6失策。

後にも先にも、
『あの箕島』が、これほどまでに乱れた試合はこれ一つきりでした。

夏は3回戦で【実力No1】と言われた中京に対して果敢に挑みましたが1点差で涙を飲み、
箕島は涙にくれて1年を締めくくりました。

しかし、
エース石井に捕手・島田。
主砲・北野に主将・上野山などキラ星たちをほとんど残した新チームの箕島は、強かった。

この年は、
この箕島と牛島-香川の超大型バッテリーを軸にした浪商が実力双璧といわれ、高校野球界を引っ張りました。

両者の実力の高さとそのつばぜり合いは、
すべての高校野球ファンをワクワクさせました。

選抜の決勝で雌雄を決することになった両校の戦いはすごかった。
今でもセンバツ史に残る戦いと言われています。
箕島は浪商の強力打線を抑え、
攻めては得意の『プッシュバント攻撃』を仕掛けて得点を奪い、
8-7と1点差で逃げ切っての歓喜の優勝を果たしました。

その後両校ともに牙を磨いて対戦を待った夏の選手権。

箕島は3回戦で、
星稜とあの【延長18回】の大激闘を繰り広げます。

語っても語っても語りつくせないほど、
見事な試合でした。

苦悶の表情を何度となく浮かべる星稜の山下監督に対し、
尾藤監督は『修羅場の数はこっちの方が踏んでいるさ』とばかり、
常にベンチ前で笑みを絶やさなかったのを覚えています。

石井は、
この大会では初戦から連打を浴びるなど苦しい投球が続きました。
星稜戦でも、
18回で3点を奪われ、
苦しい場面の連続でした。

しかし石井の真骨頂は、
苦しい場面にこそ発揮されました。

最後の最後まで粘り切った石井の投球が、
最終回でのサヨナラ劇を生んだのでしょう。

準々決勝、準決勝は比較的楽な戦いの中、
石井は本来のピッチングを取り戻したように見えました。

準決勝第1試合を取って決勝にコマを進めた箕島。

当然待っている相手は第2試合に登場する、宿敵・浪商。

しかしここで、
予期せぬ展開が待っていました。

ベテラン・蔦監督に率いられ、
『やまびこ打線』前夜の池田高校が、
あの浪商を倒して決勝に進出してきたのです。

決勝は勢いに乗る池田との対戦。

肩透かしを食らったかのような箕島ナイン、
どことなく決勝は動きがおかしく、
前半にリードを許してしまいます。

しかしここからは王者の意地が炸裂。

後半追いつくと、
決勝点は得意のスクイズで。
外されたたまに飛びついての、
素晴らしいスクイズでもぎ取ったのでした。

石井は池田の打線につかまりかけましたが、
最後の最後まで粘り強いピッチングを展開。
自身14勝目を完投で挙げ、
有終の美を飾りました。

この最後の大会での石井。

結局5試合中完封試合は1試合もなし。
3点以上奪われた試合が3試合と、
決して本調子ではなかったかもしれません。

しかし得意の粘りの投球は、
最後の最後まで相手に主導権を渡さない、
今の言葉で言えば『クオリティ・スタート』をどの試合でも見せたのでした。

その粘りは、
今彼が携わる『独立リーグ』の運営にも生かされている気がしてなりません。

この年の箕島。
名将・尾藤監督の最高傑作のチームでした。

ものすごい剛速球エースも、
またホームランをバンバン叩き込む手法もいませんでしたが、
全選手が粘り強く自チームのペースに持っていくという能力に長け、
歴代の甲子園を制したどのチームよりも『負けにくい』チームだったと思います。

尾藤監督のあの笑顔とともに、
忘れられないチームです。


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