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バットマン・テイルズ 翻訳メモ

※言葉遊びの別訳案などを紹介します。
※以下のメモはShoProの認可を受けたものではありません。

資料:
ピノッキオの冒険
ピノッキオの冒険(動画)
ジンジャーブレッドマン(動画)
エンドウ豆の上に寝たお姫さま
エンドウ豆の上に寝たお姫さま(動画)
ゴルディロックスと3匹のくま(動画)
不思議の国のアリス
ふしぎの国のアリス(動画)
雪の女王
雪の女王(動画)
『不思議の国のアリス』研究--日本語訳の比較
Pun翻訳の比較検討:「不思議の国のアリス」の場合


【PAGE 14】


(最終稿)
実を言うと、別の次元から来た
魔法の小鬼だけど、オイラがいれば、
どうにかこおにかなるのさ!

(別訳案)
魔法のインプさ。オイラがいれば、
何でもできる! これが本当の
ミッション・インプッシブル!


【PAGE 27】


(最終稿)
ボクの足はダンス……だけど拳は顔に命

(別訳案)
敵に囲まれ大ピンチ、拳を握ってパンチ


(最終稿)
自由の翼で羽ばたけ、もうボクは首ったけ

(別訳案)
翼があれば自由の身、後は楽しく生きるのみ
翼の生えたインプ、彼の助けでジャンプ
悪党だらけのこのヤバさ、それを脱するこのツバサ
敵に包囲されたらば、さっさとオサラバ
敵に囲まれ超ヤバイ、翼を使ってバイバイ
背中の翼で空へフライ、欲しいものはミライ
自由を求めてフライ、飛び立つ先はミライ
翼を広げてフラ、飛び立つのさスカ
ボクの翼を見ておくれ、でも少し時代遅れ


【PAGE 32】


(最終稿)
というか、パクリデスよ

(別訳案)
というか、失楽園よ
園じゃなく、園よ


【PAGE 45】


(最終稿)
たとえ翼がなくとも、両手に持ったこの木刀
群れをなす悪党ども、いざ勝負、このボクと

(別訳案)
ボクの背中に翼はない、両手に持ったこの木刀
向かうところ敵はない、いざ勝負、このボクと

ボクには翼はない、だけど両手はフリー
情けなんか必要ない、この心はハングリー


【PAGE 80】


(最終稿)
人さらい/皿洗いもあるだろ

(別訳案)
誘拐罪/愉快罪もあるだろ

※「Kidnap」(誘拐する)と「Kid Nap」(子供が昼寝する)の言葉遊び。NapはNab(取り押さえる)が変化したもので、Dognap(犬さらい)やCatnap(猫さらい)という派生語もある。


【PAGE 91】


(最終稿)
汚れ品で。

(別訳案)
棒価格で。
訳あり品で。
傷あり品で。
ジャンク品で。


(最終稿)
おだまり/ヒマワリって言った?

(別訳案)
うるさい/ウルシって言った?
知るかバカ/白樺って言った?
笑えない/藁がないって言った?


【PAGE 114】


※原書では、アルフレッドとフラミンゴの台詞が入れ替わっている(このままでも通じないことはないが、そう考えたほうが自然である)。日本語版では、吹き出しの形に合わせて少し改変してある。
 左:自分は仕方なくここにいるけれど、どうして君は(翼があるのに)飛んで逃げないの?←アルフレッドの台詞?
 右:そんなに簡単ならいいんだけど。←フラミンゴの台詞?


【PAGE 130】


(最終稿)
女王様がオカンムリだぜ。

※「Crown」は「頭に冠を乗せる」「頭を殴る」という意味。言葉遊びであるにもかかわらず、原文と訳文のシンクロ率が比較的高い例。


【PAGE 131】


(最終稿)
もう…通れない/“とても勝てない”でしょ?

(別訳案)
もう…帰れない/“もう勝てない”でしょ?
もう…くぐれない/“ググレない”って言った?
普通の鏡ですね/“袋の鼠”って言ったの?
不幸の極みですね/“袋の鼠”って言ったの?
通過…できない/“つーか、勝てない”?
行き止まり…ですね/“息が止まる”って言ったの?
置き去りにされました/“大きい猿”って言った?
とおせんぼ…ですね/かくれんぼはここまでよ
これ以上は行けません/あたしはイケイケよ
ああ…手遅れです/お手上げって言ったの?
ああ、もう行けない/ほんま、いけずやわぁ

※この表現は小説からの引用ではなく、ディズニーアニメ版の冒頭に登場する扉の取っ手とアリスの会話であり、以下のように訳されている。アスコム版がもっとも忠実な翻訳なのだが、台詞としてはどうしても不自然になってしまう。いろいろ考えたのだが、ベターな訳文を思いつけなかった。悔いが残る箇所である。

字幕:体が大きすぎて無理だよ/意地悪
吹き替え:とても通れやせんよ/意地悪ね
ノベライズ:体が大きすぎてむりだよぉ~/意地悪!
アスコム版:絶対に不可通だ/不可能ね


【PAGE 132-133】


(最終稿)
あれまあ、これまあ!

(別訳案)
ありゃまた、こりゃまた
びっくり、どっきり
奇妙奇天烈、奇々怪々
不思議千万、奇々怪々
奇々怪々、摩訶不思議
驚天動地の摩訶不思議
面妖至極にございます
あっと驚くアルフレッド
バット驚くタメゴロー

※「Curiouser and curiouser!」というフレーズは、多くの翻訳者を悩ませてきた難問の一つ。「比較級である」「同じ単語を繰り返している」「文法的には間違っているが、発言者の意図はすぐにわかる」という条件を満たしつつ、正確に日本語に訳すのは至難の業である。過去の翻訳者もそれぞれに知恵を絞って、さまざまな訳文を考案している(以下を参照)。この表現が出てくるのは、私家本「地下の国のアリス」(1864年)と「不思議の国のアリス」(1865年)であり、幼児向けの「子供部屋のアリス」(1890年)では割愛されている。本書では、発言者はアリス(少女)ではなくアルフレッド(高齢の男性)なので、彼のキャラも考慮に入れた上で訳文を作っている。

1) いよいよ(ますます)奇妙な(新英和中辞典
2) いよいよ出でていよいよ奇なり(リーダーズ英和中辞典
3) ※おどけた決まり表現(スーパー・アンカー英和辞典
4) もっと、もっと奇妙きてれつ!(ルビ訳
5) 変ちきりん、変ちきりん。(芥川龍之介菊池寛
6) へんこてりんすぎ!(芦田川祐子)
7) へんちきりんだなあ。ますますへんちくりんだぞ。(飯島淳秀
8) ヘンテコリンのコンテコリン!(石井睦美
9) いよいよもって奇妙てけれつかま不思議(石川澄子)
10) へんてこ、へんてこ、へんてこてーん!(石崎洋司
11) 愈々益々奇妙きてれつだわ!(岩崎民平
12) ますます以て奇妙だわ!(井上秀子)
13) てんへこりん、てんへこりん!(大久保ゆう
14) 変すぎ、すぎるわよ!(大西小生)
15) ますますだんだん不思議!(尾上政次
16) へんてこりんがどんどこりん!(河合祥一郎
17) どんどんおかしくなってるわ!(神林サリー)
18) てこへん、へんてこ!(北村太郎
19) やあね、妙ちきりんりんだわ!(きったかゆみえ)
20) 全然へんやーー!(木下信一
21) まあ、ふぎし!(楠悦郎)
22) きみょうね、きみょうね!(楠本君恵
(↑風変わりな表現ではなく、風変わりなアクセントとして表現している。コロンブスの卵のような発想の転換である。)
23) へんちきりんだわ。へんちきりんだわ。(楠山正雄
24) なんこれはなの、なんこれはなの!(久美里美)
25) 妙竹林、妙竹林(みょうちくりん)(酒寄進一
26) へんな気がすると、へんなことが起こっちゃう!(さくまゆみこ
27) ぜんぜんびっくり!(佐野真奈美)
28) へんてこ凛々、ったら、へんてこ凛々!(島本薫)
29) ますます変てこりんになってくわ!(生野幸吉
30) うっひゃあ! 最超におどろいた!(杉田七重)
31) ますますへんてこりんのへんこてりんよ!(すぎもとえみ)
32) てこへんだわ。ほんとにてこりんへん。(芹生一
33) だんだん、へんちきりんになっていくわ!(高杉一郎
34) 変てこだわ!変てこだわ!(高橋宏/地下)
35) ますます、妙だわ、ちきりんよ!(高橋康也・迪)
36) あれえっれれれっ!(高山宏
37) ふぎしったら、ふぎし!(高山宏/新注)
38) チョーヘン、チョーヘン!(高山宏/詳注)
39) いよいよもって奇妙きてれつだわ!(多田幸蔵
40) まあ、へんてこれんな!(田中俊夫)
41) 奇妙きてれつ!(足沢良子
42) まあ、まあ、まあまあまあ、まあ!(辻真先
43) おろろいた。おろろいた。(長澤才助)
(↑個人的には、この訳が気に入っている。7歳の少女が驚きのあまり、舌っ足らずになる感じがよく表現されていると思う。)
44) おどろき、モモの木、サンショの木!(中村妙子
45) ますます、へえーんだわ!(原昌
46) ふしぎふしぎ……ふしぎふしぎ……(平塚武二
(↑主人公の名前が「アリスちゃん」と表記されている。)
47) あらあら、へんちくりんだわ、へんちくりんだわ!(蕗沢忠枝
48) 変てこりんなの、おかしいの!(福島正美
49) あら、へえんなの?(藤原一生
50) いよいよ、ふしぎ。(本多顕彰
51) あらやだ、どんどん変てこになってくわ!(まだらめ三保)
52) 変なの、おかしいの!(松浦茂夫)
53) 奇妙々々(きめうきめう)!(丸山英観)
(↑主人公の名前が「アリス」ではなく、「愛ちゃん」に改変されている。)
54) これは おかしな きもちだわ。(三島由紀夫
55) てんてこりんだわ、てんてこりん!(宗方 あゆむ)
56) おや、なんだか みょうな きもちが するわ。(村岡花子
57) 何これ、どんどんヘンテコりょん!(村山由佳
58) へんてこんて、へんてこんてえ!(矢川澄子
59) なんだか、へんだわ。へんな気もち!(矢崎節夫
60) へんこてりん! へんこてりん!(安井泉/地下&対訳・注解)
61) 奇妙れてきつ、奇妙れてきつ!(柳瀬尚紀
62) チョーへん!(山形浩生
63) 変てらりんだよお!(山崎直美)
64) おや まあ へんてこだわ!(横谷輝
65) おかしいみたいなようで、たまらないわ(吉田健一
66) まあ、へんてこてんだわ!(脇明子

67) ますます変だわ(ディズニーアニメ/字幕)
68) ますます不思議だわ(ディズニーアニメ/吹き替え)
69) こんなのはじめてだわ(ディズニーアニメ [パブリックドメイン版]/字幕)
70) ヘンテコリンのヘンテコリン(ディズニーアニメ [パブリックドメイン版]/吹き替え)
71) ましまし変だわ!(ディズニーアニメ [アスコムDVD版]
72) ヘンテコな事ばかりが続く(「アリス 不思議の国の大冒険」 1972年)
73) ヘンよ。何なの。(「不思議の国のアリス」 1985年版/字幕)
74) ヘンだわ。何よこれ。(「不思議の国のアリス」 1985年版/吹き替え)
75) ますます変なの(「不思議の国のアリス」 1999年版/字幕)
76) へえ、何かしら、おもしろいわ(「不思議の国のアリス」 1999年版/吹き替え)
77) ヘンテコな所ね(アリス・イン・ワンダーランド/字幕)
78) ヘンテコリンのポンポコリン(アリス・イン・ワンダーランド/吹き替え)
79) ますますへんてこだわ。(アリス・イン・ワンダーランド小説版/渋谷正子)
80) どんだんおかしくなっていくわ(アリス・イン・ワンダーランド小説版/入間眞)
(↑“どんどん”と“だんだん”を混ぜた表現。この翻訳も上手い。)
81) 変てこてこりん!(「不思議の国のアリス」 ドラマCD)
(↑男性の声優がアリスを演じているという不思議な作品。)

82) ずいぶん変ったところにいるのね(ジェフリー・アーチャーロスノフスキ家の娘』第23章/永井淳
83) いよいよ出でていよいよ奇なり、だな(ジェフリー・アーチャー『剣より強し』第36章/戸田裕之)
84) どんどん好奇心が湧いてくる。(ナンシー・アサートンディミティおばさま現わる』第2章/鎌田三平
85) いよいよ出でて、いよいよ奇なり、だわ(ミネット・ウォルターズ女彫刻家』第9章/成川裕子)
86) やっぱり何かがおかしかった。(ユッシ・エーズラ・オールスン特捜部Q -Pからのメッセージ-』第13章/吉田薫・福原美穂子)
87) ますますびっくり、びっくりだ(クライブ・カッスラー気象兵器の嵐を打ち払え』第21章/土屋晃)
88) ますます妙だ。(アリサ・クレイグ潮の騒ぐ家』第18章/浅羽莢子
89) これはいよいよ奇妙だな(クレオ・コイル名探偵のコーヒーのいれ方』第22章/小川敏子
90) 興味は深まる一方よ(サンドラ・ブラウン殺意の試写状』第21章/林啓恵)
91) いよいよ出でていよいよ奇なりというわけかな。(ロバート・マキャモン少年時代』第3部第3章/二宮磬)
92) いよいよもってけったいな。(ピーター・ロビンスン渇いた季節』第10章/野の水生)
93) 村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス』第4章に、「どう考えてもプロのホテルマンの声だ。」という文章が出てくる。アルフレッド・バーンバウムによる英訳版では、この直後に「Curiouser and curiouser.」という文章が続く。原文にはないのだが、語り手の心情をわかりやすく表現するために追加されたのだろう。

94) 好奇心旺盛で好奇心旺盛(Google
95) 好奇心旺盛(DeepL


付記1:Henri Buéによるフランス語版(1865年)では「De plus très-curieux en plus très-curieux!」と訳されている。この文章をGoogle翻訳で英語に変換すると「More very curious and more very curious」となり、日本語に変換すると「より非常に好奇心が強く、より非常に好奇心が強い」となる。

付記2:「Curiouser and curiouser.」というフレーズが出てくる映像作品リスト
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