ギタリスト天野丘のブログ『恋するギター弾き』

日々感じる事、音楽、人間・・・自分の心の中の「今昔物語」

一人は・・・「独り」じゃない。

2022-02-26 21:34:25 | 日記
ずっと一緒だった、音楽がずっと一緒にいてくれた。

小学生の頃・・・ホントに小さかった保育園児の頃のこともいつか書こうかなと思ってるけど、
今日は小学5年生の頃かな?・・・その頃の話。

一人を・・・後で知った「独り」って漢字、寂しいよね・・・でも寂しいって思ったことは多分一度もない。

きっと自分では分からずに愛してもらえてワガママに生きてきたからだろうな。
だけど音楽だけはね、いつもいつもオレの心をノックして「こんにちは、今日はどうしてる?大丈夫?」って訪ねてきてくれた。

誰でもいいからそばに居て欲しいって思ったことはない。
勝手なんだ、すごく勝手なんだってわかってはいるけれど、それは「好きな人」でなければ意味が無いんだよ。

4年生から入部ができるブラスバンド、勿論入部した。
「太陽にほえろ!」のテーマがたまらなく好きだった、当然ドラマの中身も何もかも好きだった。
ジーパンとシンコの恋はオレの憧れだった、ジーパンが死んだ時のシンコのことを思うとオレは今でも涙が出る。
だから当然サックスを志望したけど籍が空いていなかった。

それで最初は良く解らなかったけどクラリネットを吹いた、パートは確か・・・セカンド。
華やかなリード・パートは元々中々クラにはセッテイングされることはない、だけどオレは本当に魅了されたんだよ。
何にって?うん、
あのワルツに、練習曲だし有名な曲じゃないから曲名は忘れちゃったけど。

クラのセカンドパートが受け持つ、ハーモニーの、真ん中へんを吹くんだけど、
・・・なんて言ったらいいのか・・・二度と食べられないくらい旨いチョコレートケーキを目を瞑って食べたみたいな(何言ってんだか、笑)「これ、ホントか?!参った、ホントに参った」って思ったんだよ。

衝撃っていうのはさ、何も打撃的なもの、激しいものばかりじゃないんだってもしかしたらオレはこの時初めて知ったのかも知れないな。

そう、それで先生の指揮棒が曲の終わりを案内してくれた後に思わず「・・・良い曲だなぁ・・・」って小声でつぶやいてしまったんだ。そしたら先生・・・大岩先生っていうんだ、専門はオーボエ。最高の指導者!・・・「おーい天野!彼女と踊ってるとこ、想像してたのかあ?(笑)」って(爆)
小学生のオレに彼女って・・・そんなあ、恥ずかしい・・・そこには、顔を真っ赤にしたクラリネットをもった少年がうつむいていた(笑)
ブラバン全員が爆笑して(笑)オレをからかって・・・いや、からかってなんかいない。全員で奏でたあのワルツの素晴らしいハーモニーを全員で味わったその後なのだから。
最高のバンドだったね。

人が人を意識する時・・・愛してしまう時。
きっとオレはこの時のことを思い出す。
毎朝登校しなきゃいけない「何年何組」の教室より断然放課後の音楽室で練習する方が何百倍も幸せだった。

大岩先生には本当に多くを教わった。
おっと、普通の教科の中の音楽の授業の藤本先生にも。

でも今日の本題、
オレはなんで一人は寂しくないか、ってこと。

ホルンの子が好きだった。
意識し過ぎて話し掛けるのも難しかったんだよ、家も近いし朝にもばったり会っちゃったりして、恥ずかしかった。

ある年のコンクールでブラバン全員が電車で移動・・・そうそうあるもんじゃないよね・・・その日は一日中彼女を見ていることができる。帰りの電車でも話し掛けられず(泣)駅の階段を下りてく、そうだね、最後のチャンスか・・・ほんの少しだけ話せた(笑)勿論しどろもどろで何を話したか全然覚えてない体たらく(笑)

思い切ってオレは大岩先生に相談するという中々の暴挙に。

だけど先生は、
何と!彼女にオレの気持ちを伝えてくれて、何をどうすることもできないこの小さな子供の想いを大切にしてくれて、大切なことを教えてくれたんだ。

後日先生に呼ばれて「彼女と話したよ、ちゃんと伝えた」「君の気持ちは知ってるって(マジか!何も言ってないのに)」

「でも、天野君、なんか優し過ぎて、気持ち悪い・・・って言ってたよ」
「私は人を好きになることは当たり前のことだし、悪い事でもなんでもないと思う。だけど思うんだよね・・・伝え方、伝わり方(多分、そういう内容の事を先生は言ってくれてたと記憶してる)も大事だと思う・・・あ、でも『上手に』ってことじゃない。」

「自分を、しっかり持とうよ。彼女に好かれることを目的にしないで。彼女が好きなら、好きでいていいんだよ。ずっとそれでいい」

全然わかんないです。
そりゃ無理だよ、クソ餓鬼にゃ(笑)無理ですわ。

でもね、今なら、少しはわかりますよ、先生。
本当に人を好きになったら。

愛しているなら。

それは「独り」じゃないですよね、
たとえ「一人」でも「独り」じゃない。
相変わらずちっとも上手にはなれないけど。

オレは。
ずっと変わらず、あのワルツを奏でたい。聴きたい。
ハーモニーの真ん中のパートはデカくても小さくてもダメ。
激しいだけでも優しいだけでも。

先生、オレ、先生に会えて本当によかったです。
人にとって一番大切な事を、あの時教えて下さって有り難うございました。
愛する人が、いないこと。それが「独り」なのだということを。













アートの生涯を一瞬で受け止めるって・・・そんな。

2022-02-22 19:38:38 | 日記
2022.1.11

初めてこんな風にしたためてみようと思う。
私が音楽と出会った記憶は何となく覚えてはいるけれど、「捕らえられた」・・・とっ捕まったのはいつだったのか。

音楽を生業にすることを許してもらえて大分経ったのだけれど、演奏や録音で自分が何かをしている時の話じゃ・・・やっぱり、そうではない。
アート・ペッパーの「A ballad of the sad young man」を初めて聴いた時。

それから多分36年くらい経ってる。
ううん、こんなタイプのとっ捕まり方、オレには、そうだな、数限りなくはないけど、記憶してるだけで数十例はあって。
そのことを全て覚えていて。
憶えてるってことは、中々結構な辛さを伴うってこと・・・それをできたら恥ずかしいからじゃなくてホントに辛いから、人を辛くさせる為に音楽はあるワケじゃないから、読まれなくって良いんだけど。

でも、書いておこうと思います。
その中の一つを。

2年前の2月。
日本工学院でのオレの最後の授業。
家で生徒さん達への、オレの最後の生徒さん達への贈り物、感謝の贈り物としてソロ・ギターを、限りある時間のできるだけを使って練習して、

そしてアート・ペッパーのLP「No limit」を持って学校へ向かった。

20年と少し働かせてもらった場所だけれど、今と同じに饒舌さのかけらも得られないで去るのはとても辛いものがあったな。
でも今日は最後、本当に最後だから・・・でも辞意を伝えたのはこの日の後だったけどね・・・
最後の最後に言う事は決めていた。

「私がみんなに伝えたい事は音楽の『やり方』じゃないんです、今日は最後だしもう授業でメモを取らなくて良い」
「今日かけるレコードの音楽を毎回のように、それから今日は最後にソロ・ギターを演奏させてもらいます、その中から『私と音楽の関係、私と音楽との歴史』をきっと取り上げて下さい」

「いいですか。人と人が出会う時、きちんと挨拶を交わすようにしなければいけません・・・あなた達の中には目に余るほどの失礼な挨拶があるのを私は知っていますが(笑)・・・でも音楽は私のような子供にもきちんとした言葉で「こんにちわ、初めまして」と言ってくれました。とても礼儀正しく、誰にでも分け隔てなく接してくれました。そうして私は音楽を、信じたのです。それから随分経ちましたが、それが今日までの私と音楽の出来事の全て、『歴史』です」

・・・感じ悪い先生(笑)だね。

でも決めていたこと、多分教壇に立つ最初の時から音楽教師が本来しなければならないことと、おぼろげながらに思っていたことをやっと授業ですることができて20年以上経って初めて果たせた責任なのかもと思った。

たった一人だけだけど(苦笑)「先生の伝えたい事、わかりました」と授業後に泣きながら話してくれた子がいたな。
でも、オレは忘れないぜ、君はこの授業・・・朝イチだからしょうがないけど、必ず一番後ろでいつも気持ちよさそうに寝ていたよなぁ(笑)

オレも大学ではいつも授業中は寝てばかりだったけど、
アートのNo limit・・・「A ballad of the sad young man」で目を覚まし、酒を飲んではまた聴き、
楽理の勉強なんか全然お留守だったけど、そこに本当の愛があるんじゃないか、オレはやっぱり何にも分かってないんじゃないかとか。

アートの最期は大好きなローリーの両手に抱かれて幸せに死んでいったらしいとバイトしていたレコード屋の社長さんに教えてもらって何度も思い出しては、
・・・今でもちゃんとオレは分かってはいないのだろうが、何度も泣いたんだよ。

そこまでは、授業で泣くわけにもいかないからな(笑)話せなかったよ。
だけどね、授業全部を終わって、君たちに「話を聞いてくれて、本当にどうも有り難う。さよなら」
ちゃんと言えてよかったよ。
Good luck!



『恋するギター弾き』始まりました。

2022-02-22 19:05:14 | 日記
今年になって新しいウェブサイトを立ち上げました。
それに伴って、半ばライヴスケジュールの更新の為だけに存在してしまっていたこのブログをタイトルを一新。

『恋するギター弾き』
もうすぐ60歳に届こうという人間が、と思うところもありますが(笑)
こんな自分の、今と若い頃・・・子供の頃・・・よく最近思い出すことが多くなってきて。

段々、
恥ずかしくなくなってきて。

自分の記憶を、書き留めておいても良いかなと思うようになって。

書きなぐりというか、言葉遣いもあまり丁寧にではない、そんな・・・文章に、できる限り本当の自分とのかい離がないものを、
残しておきたくなりました。

勿論書いているのは「今」
ですから今のことを書いたりメッセージしたりしていることは間違いないので。

これからも。
皆様。
宜しくお願い致します。

みんなの人生が、
希望に、毎日、満ちた日々でありますように。

さて・・・一通目の手紙を開いて頂けたら嬉しいです。

天野 丘