

ただ、今回初めて公表した月1回以上ラインを使っている「月間アクティブユーザー(MAU)」は1億7000万人にとどまっている。無料通信アプリ業界の競争が激しくなる中、ラインは音楽配信や決済サービスなどの新規事業への参入で収益力拡大を図る。
「コミュニケーションをベースに進化する。普段の生活にイノベーションを起こす」。千葉県浦安市で開いた事業戦略説明会でラインの森川亮社長はメッセージのやりとりやゲーム、インターネット通販といった既存事業だけでなく、新規事業を強化することで利用者の日常生活の利便性を高めたい考えを示した。
音楽配信はエイベックス・デジタルとソニー・ミュージックエンタテインメントと共同出資会社を作り、年内にサービスを始める。
提携店舗での買い物の支払いのほか、ラインの仲間同士で割り勘や送金ができる決済サービスも今冬から始める。
2011年6月にサービスを始めたラインは、「スタンプ」と呼ばれる大きな絵文字やゲームの課金収入などが収益源。14年4~6月期の主力事業の売上高が前年同期比2.45倍の182億円となるなど、事業は急拡大している。新規事業を加えることで、熱心な利用者を増やして収益源の幅を広げることを目指す。
ラインは9月、年内の上場を見送ると発表したが、森川社長は「一番大事なことは上場することではなくて、事業を安定的に伸ばしていくこと」と述べ、当面は新規事業を軌道に乗せることに注力する考えを示した。
国内での登録者は5400万人と圧倒的なラインだが、無料通信アプリを巡る世界的な競争は激しさを増している。展開している世界230カ国・地域のうち、ラインの利用者が東南アジアやスペインなどに偏っていることも課題。森川社長は「アジアだけでなく欧州や北米でもユーザー数を伸ばしたい」と意気込むが、巨大市場である北米では交流サイト米フェイスブックの傘下となった「ワッツアップ」が強く、中国も「微信(ウィーチャット)」などに押されており、道のりは険しい。
◇無料通信アプリ
スマートフォンやパソコンなどで使えるアプリ(応用ソフト)の一つで、インターネットに接続できれば無料で通話やメッセージのやり取りができる。ツイッターやフェイスブックのように情報を不特定多数の人に発信するのとは異なり、やりとりする相手を仲間内に限定できるのが特徴だ。
国内ではラインが最大だが、米国ではフェイスブック傘下となった「ワッツアップ」(利用者6億人)、中国では「微信(ウィーチャット)」(4億3800万人)、韓国は「カカオトーク」(登録者1億人以上)などがあり競争が激しくなっている。先駆けと言われるのは「スカイプ」(利用者3億人)だが、携帯電話中心でスマホ対応は遅れ気味だ。
