神はそれでも意地悪に僕らの魂をいつかは取り上げるのだろう

クズと思われても仕方がない赤裸々な日記。

括約筋をめぐる冒険/中編

2013年05月19日 01時22分47秒 | 日記
劇場内の観客はまばらだったけれど、異様な雰囲気が凄まじい密度で漂っていた。

劇場内を徘徊する何人かの男。女装をした男。ズボンのベルトを外す音。前の座席で不自然な動きをしている二つの影。

俺とTはとりあえず一番後方の座席に腰を下ろした。
最初の数分間は恐怖と緊張で何も考えられなかったけれど、だんだんと状況を把握出来るくらいに落ち着いてきた。
徘徊している男は、どうやらパートナーの品定めをしているようだ。男が後ろの方まで回ってこないところを見ると、後ろの座席は安全圏で、駆け引きが行われているのは主に前の座席なのだろう。

Tは俺に耳打ちして言った。
「前の方に行ってみる」
俺が制止する前にTは立ち上がり、前から三番目の座席に腰を下ろしてしまった。

それからすぐ、女装した男が席から立ち上がり、Tに何かを話し掛けた。
後ろで見ていて心臓が跳ね上がったけれど、女装男はすぐにTから離れて行った。
どうやらTのお尻の貞操は守られたらしい。
Tから離れた女装男はすぐに別のパートナーを見つけ、最前列の座席に移っていった。後ろの座席からだとよく見えなかったけれど、明らかに不自然な動きを始めた。
Tは直ぐさま立ち上がり、最前列の座席に移動した。
俺はその様子を静かに見守っていた。
しばらくしてTが戻ってきた。

俺に耳打ちする。
「モロに見ちまったよ」
何を?
「男同士でアレをこすりあってた」
アレ?
アレというのは、やっぱりアレのことだよね?
ああ、神様。
「二人ともズボンを膝まで下ろして、女装男が相手の男のアレにキスしてやがった。チュッて音がしてた」
もう聞きたくない。



…つづく

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