日々是好日

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ボロディン交響曲第二番 カルロス・クライバー、エーリッヒ・クライバー

2005年03月27日 | 音楽
バーンスタイン、カラヤン亡き後の最後の巨匠と呼ばれていたカルロス・クライバーの新譜です。
この録音はメディアフォンからリリースされていましたが、カップリングがラインスドルフの『火の鳥』というあたりが意味不明の盤で、3年程前に廃盤になっていましたので、正確には新譜ではなく再発盤です。

今から20年程前にカルロス・クライバーの指揮によるベートーヴェン交響曲第5番を聴いてとても驚きました。日本では運命と呼ばれてとても有名曲なのですが、この曲が全く新しい生命力を吹き込まれたかの様な演奏をしていて、特に第3楽章から第4楽章の繋がりは苦悩から歓喜へ!というベートーヴェンの一生涯のテーマを本当に上手く表現していて、不覚にも涙が出る程に感動したものです。
カルロス・クライバーは去年の突然の訃報にとても驚いてしまった訳ですが、結局生演奏は一度も聴けなく残念に思います。
新聞報道によると、妻を失ってからずっと健康的にすぐれず、演奏をするのは難しい状況だったそうです。最後の演奏は1999年のバイエルン放送交響楽団で、それ以降は全く公演がなくファンはもう一度と願っていたのですが、結局果たせない夢となってしまいました。
私事になりますが、今から20年程前の初来日の日にチケット売り出しの際に何度も電話したのですが全く繋がらず断念した事がありますが、その時にもっと熱意を持って電話をすれば良かったと悔やまれます。

ボロディンの交響曲第2番はクライバーのこの盤で初めて聴く訳ですが、若干武骨な面もありながら、華麗な管弦楽が美しい良い曲ですね。
カルロス・クライバーはレパートリーが少ないと言われた指揮者ですが、マイナーとも言えるボロディンの交響曲第2番の録音が残っているとはちょっと意外な感じを持ちました。

奥付を見ると録音年は1972年となっています。
私が持っている盤で最も古い(というかグラモフォン正式デビュー)盤がウェーバーの「魔弾の射手」で、録音は1973年ですので、私が持っているクライバーの中では最も古い録音です。
当時カルロス・クライバーは42歳で、コンサートデビューしたての頃ですが、カルロスの指揮は十分に成熟した感じがあり、カルロスらしい勢いのある演奏は矢張り素晴らしいと思います。
ロシア的な雰囲気を余り感じさせない点は良いのか悪いのか。しかしチャイコフスキーを今更ロシア的な演奏をするのが私は正しいとは思えないので、ボロディンもこういった解釈をするのも良いかと思います。実際、聴いていて楽しい名演なのですから、こういう解釈もアリだと思います。

曲が曲のせいか、若しくは録音が秀逸なのか、他の盤より管弦楽の扱いが華麗に感じられ、カルロス・クライバーの違った魅力を感じさせる名盤だと感じました。
この盤の面白いところはカルロスの父で往年の名指揮者であるエーリッヒ・クライバーの同曲の演奏がカップリングされているところです。
カルロス・クライバー自身が父親のエーリッヒ・クライバーのスコアの書き込みなどを良く研究したそうで、親子ともキビキビとした演奏という感じを持ち、解釈は良く似ていると思います。
改めてカルロス・クライバーとエーリッヒ・クライバーの比較をして感じた事ですが、レパートリーの広かった父親に較べ、レパートリーが少ないという面はカルロスにありますが、演奏自体の質という点では父親に決して負けておらず、現代的な感覚を持つカルロス・クライバーの方が私の様な現代の聴衆には好まれるでしょう。

音質面は、一昨年カルロスの息子が持っていたカセットから起こしたベートーヴェン交響曲第6番とは大きく異なり、この盤のカルロス・クライバーのトラックの音質は極めて優秀だと思います。