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歯科技工士・岩澤 毅

東京歯科保険医協会 歯科技工所アンケート 報告書が完成しました!

2021年01月30日 | 森元主税
https://www.tokyo-sk.com/featured/20235/

歯科技工所アンケート 報告書が完成しました!
2021年 1月 13日掲載 : facebook, Featured, 協会ニュース

歯科技工所アンケート 報告書が完成しました!
 歯科技工所が大変な状況にあることがマスコミなどで度々取り上げられています。低収入・経営難が恒常化し、若手技工士の離職率も高い状態が続いており、歯科技工士養成学校の閉鎖も相次ぐなど、10年後には歯科技工の担い手がいなくなるとの指摘もあります。

 その中で、問題解決のためにはまず我々歯科医師が、歯科技工所の現状を正確に理解・共有することが必要であると考え、2020年9月、東京23区に所在する歯科技工所にアンケートを実施し211件(回収率18.7%)から回答が寄せられました。

 今回のアンケートでも、歯科技工所での長時間労働、低収入となっている厳しい状況や問題点が明らかとなりました。また、率直な意見も多数寄せられています。

 協会では、今後このアンケート結果をもとに、歯科技工所の厳しい状況の解決に向けた議論を深め、国会議員や行政への要請活動などに活かしていく予定です。

ダウンロードはこちらから
https://www.tokyo-sk.com/wp/wp-content/uploads/2021/01/8ca2fdf410870d0ec0a6cef219f51024.pdf

<主な特徴点(抜粋)>

 開設者の年齢は60代が最も多く、次いで50代、40代となった。開業形態は、個人が63%、法人が37%となり、前回実施したアンケートから大きな変化はみられなかったが、開設者の年齢が高くなると個人開業が多い傾向がみられた。

 歯科技工所の規模は、歯科技工士1人のみが37%、歯科技工士1名と事務職員1名が17%と、合わせて54%の技工所が歯科技工士1名であった。

 1日のうちの歯科技工にかかる時間と営業や納品などの外交にかかる時間では、10時間が19%と最も多く、次いで8時間(17%)、12時間(10%)となった。1週間の労働時間を見ると、48%が60時間を超えている。1週間の休日についても週1日以下の技工所が60%となっており、過酷な環境での労働となっていることが示された。

 昨年度の総売り上げについては、500万円以内が27%と最も多かった。個人では500万円以内が39%、501~750万円が23%の順で多かったが、法人では5001万円以上が35%と最も多かった。売り上げに占める保険と自費の割合は、保険を80%以上行っている技工所が52%と半数を超えた。自費が100%の技工所は8%であった。個人では保険が総売り上げに対して大きな割合を占める技工所が多く、法人では自費が大きな割合を占める技工所が多かった。可処分所得を見ると200万円以内が22%と最も多く、次いで201~300万円が24%となり、41%が300万円を下回る所得と回答した。特に個人開業では54%が300万円以内の所得と回答しており、長時間労働、低賃金の状況が窺えた。

 「歯科技工物の価格が安くなる原因と思われるもの」の設問では、4項目全てで半数以上が「そう思う」と回答した。中でも歯科技工所間のダンピング競争は84%が「そう思う」と回答した。また、ダンピング競争を「そう思う」と回答した方のうち、歯科医院の値下げ圧力を「そう思う」と回答した割合が77%、歯科医院の値下げ圧力を「そう思う」と回答した方のうち、ダンピングを「そう思う」と回答した割合が94%いることから、歯科技工所間のダンピング競争の原因の一つに、歯科医院の値下げ圧力が一定あると考えられる。

 技工物の現行料金と希望する料金の設問では、現行料金と希望料金が相違しているケースが多く、インレー、FMCでは、保険点数の7割を求める意見が多かった。一方CAD/CAM冠やチタン冠、鋳造二腕鉤では、保険点数の7割以上の報酬を求める回答が多く、保険点数の設定が低すぎるとの意見が多いことが示された。また、保険技工物で不採算と思うものでも、インレー、FMC、有床義歯、硬質レジン前装冠という回答が多く、現行料金と希望料金が一致していないことが分かった。さらに、40年間技工料、技術料が変わらず、報酬が低く抑えられていることも不採算との回答が多くみられた。

 自由記載欄には、現在の歯科技工所の状況や問題点、今後の展望や希望など多くの意見が寄せられた。


https://blog.goo.ne.jp/akisigi/e/8fab71ccb12d0e27bd880d15d9355086

日本歯科新聞 2021年1月19日号 第2141号

投稿・寄稿 

東京歯科保険医協「歯科技工所アンケート」
自由記載欄には「幻想の残影」が

岩澤 毅 (歯科技工士)

 昨年末、東京歯科保険医協会歯科技工士問題検討委員会が9月11日~30日に行った、「歯科技工所アンケート」の集計結果が発表された。

 調査対象は、東京23区の届出されている歯科技工所のうち情報開示請求で住所を入手できた1239件。返信は211件であり、回収率は18.%。回答者の中心は、六十代、開業歴31年以上、ワンマンラボ、保険技工対応とのことだ。

 歯科医療保険制度・歯科補綴装置に関する今後の望む方向や自由記載欄に現れた回答者の声は、歯科技工業界の現状への諦めを含む各人の人生の苦闘が刻印されている様だった。「呪詛」という言葉が頭をよぎった。

 数十年前に流布された「7:3大臣告示」や「直接請求」と言う言葉が当時の理解のままに検証それることなく根強く残っていることが読み取れる。当時もそして今も歯科技工士にとって、この二つの言葉が希望に満ちたものなのだろう。

 過去に目指した、歯科補綴装置関連の保険点数の歯科医師と歯科技工士の分配を公的に定める制度改革、歯科医療機関を経ずに安定して歯科技工料金を歯科技工所が手にする制度改革は、歯科技工所が直面する困難の解決策と思われ続けているのであろう。

 しかし、「7:3大臣告示」を歯科医療機関と歯科技工所の分配の定めと理解するのは、保険制度内に位置を持たない歯科技工所が保険制度のルールにより運用・支配されるという無理な解釈だろう。「直接請求」に関しては、患者の保険資格の確認機会も一部負担金・窓口負担金の回収機会を持たない歯科技工所にとっては、基本的に仕組みとして無理があるだろう。

 集計に現れた「希望の概念」は、医療保険制度を学ぶ機会のない歯科技工士が作り上げ、今も持ち続ける「幻想の残影」と言うには忍びないが、歯科医療と歯科技工の持続可能性を高めるため、その欠陥を自覚し他の方策を考えなければならないだろう。

 長年、歯科技工士が放置されてきたのは、医療保険制度運営にとって不都合ではなかった現実がある。


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