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歯科技工士・岩澤 毅

平山 洋 (著) 福沢諭吉の真実 (文春新書)

2010年09月15日 | amazon.co.jp・リストマニア
福澤諭吉をめぐる歴史探偵物語, 2010/9/15

By 歯職人

 福澤諭吉の死後、福澤諭吉名での著作が付け加えられ、その付け加えられた著作により死後数十年を経て弾劾されたとしたら、福澤諭吉もさぞあの世で居心地が悪かろう。
 本書は、福澤のアジア観と「脱亜論」を正当に位置づけ、福澤のアジア観と「脱亜論」とされたいたものの正体を解明する言わば歴史探偵(学術的に試行的に)としての役割を担った平山洋による理詰めでスリリングな一冊です。
 平山は、初出紙誌、福澤存命中やその死後のそれぞれの時代に発行された『全集』とその発行事情を、福澤の書簡等を詳細に読み込み、相互の関連を明らかにする。そして、「無署名論文」が『全集』収載され、福澤真筆とされていく過程を追う。そして人の嫉妬という病理も。
 戦後の価値観の転換の中で、既に歴史の人である福澤は一部から偽著作を材料に弾劾を受ける。身に覚えのない言わば「冤罪」である。
 福澤諭吉をめぐる歴史探偵物語は、「冤罪」の構造解明と真犯人とその共犯者(意識的・無意識的を問わず)を明らかにする。それは、福澤諭吉の膨大な顕名著作群に紛れ込まされた無署名論文群に正当な評価を下す物語でもある。
 平山洋により、推理小説の様なスリルを味わいながら、文系の科学的論証の方法論の提示を受ける一冊となっている。
 「福澤諭吉救出作戦」と言ったところか。

http://www.amazon.co.jp/gp/product/4166603949/ref=cm_cr_mts_prod_img 

平山洋関連
http://blechmusik.xrea.jp/d/hirayama/

『福沢諭吉の戦争論と天皇制論』の逐語的註
http://blechmusik.xrea.jp/d/hirayama/h29/

フクザワユキチノシンジツ ブンシュンシンショ
文春新書
福沢諭吉の真実

平山 洋【著】
文芸春秋 (2004/08/20 出版)

244p / 18cm
ISBN: 9784166603947
NDC分類: 289.1
価格: ¥756 (税込)

詳細
日本の文明開化を先導した偉大な思想家福沢諭吉は、アジアを蔑視し中国大陸への侵略を肯定する文章をたくさん残している。
それを理由に福沢を全否定しようとする動きも絶えない。
確かに現在も刊行されている福沢の全集にはその種の文章が多数収録されている。
しかし、それを書いたのは本当に福沢本人なのか。
もし、誰かが福沢の作品ではないものを福沢の真筆と偽って全集にもぐりこませていたとしたら…。
この巧妙な思想犯罪の犯人は一体誰なのか。


第1章 『時事新報』の「我輩」たち(日本近代最大の文章家・福沢諭吉と『時事新報』の創刊;福沢の甥・中上川彦次郎と後年の外交官・波多野承五郎 ほか)
第2章 『福沢全集』はいかに編纂されたか(一八九八年・福沢編纂の明治版『福沢全集』;一九二五年・石河編纂の大正版『福沢全集』 ほか)
第3章 検証・石河幹明は誠実な仕事をしたのか(全ては『福沢諭吉伝』の執筆依頼を受けた時に始まった;大正版『全集』と『福沢諭吉伝』の関係 ほか)
第4章 一九三二年の福沢諭吉(『福沢諭吉伝』が描く福沢像;『福沢諭吉伝』が描かない福沢像 ほか)
第5章 何が「脱亜論」を有名にしたのか(一八八五年・『時事新報』紙上に掲載される;一九三三年・『続福沢全集』に収録される ほか)

著者紹介
平山洋[ヒラヤマヨウ]
1961年、神奈川県生まれ。慶応義塾大学文学部哲学科卒業、東北大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。倫理学・日本思想史専攻。現在、静岡県立大学国際関係学部助手

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