COMPARTMENT

またの名を「みのりんnoバ~」
短歌がメイン、日記はサブ、誰がなんと言おうとです
by Akinaka Minori

タンカスキー先生、ブラックにつき

2017年12月21日 | タンカスキー先生
ある日の短歌カフェ。
スーカスーカポン、スーカスーカポン、ポポポポポ。
「ねえ、毎回ドアの音を突っ込まないといけないの?」
「気が向いた時でいいんじゃない?」
「いらっしゃいませ。タンカスキー先生、いらっしゃってますよ。どうぞこちらへ」
「こんにちは」×2
「あら、こんにちは。どうしたの、しみったれた顔して」
「会うなりそれですか」
「だって、10年履いたスリッパを鴨川で3日ふやかしたような顔してるわよ」
「まあまあ、さあ、こっちに座ってください。タンカスキー先生、はいどうぞ。いつもの生姜入りアップルティーです」
「ありがとう。私もさっき来たところなの。ま、適当に注文しちゃって。言えばなんでも出てくるから」
「はい、じゃあ私は浅煎りのキリマンジャロ」
「そしたら僕は、氷出し抹茶」
「はい、少々お待ちください」
「あるんだ、、、」
「あるのよ。指先一つでなんでも作れちゃうんだから楽でいいわ」
「え、どういうこと?」
「気にしないで、こっちのことだから」


「タンカスキー先生、ちょっと聞いてくださいよ」
「なになにどうしたの」
「保森くんにいじめられたんです。私、頑張って短歌つくってみたんです。それをみてこんなんのは短歌じゃないって、ひどいんです。」
「ええ〜、そんなこと言ったの保森くん。それじゃ田原さんがあんまりじゃない。言葉は選ばなきゃ」
「とりあえず、私にも見せてごらんなさい」
「はい、これなんですけど」
「スマホね。まあ最近だったらそんな人も多いわ」
「やっぱり紙に書かないとダメなんですか?」
「そんなことないわよ。自分にとって作りやすいもので作ればいいの。タブレットペンを使っても、フリック入力でもなんでもいい。それぞれのツールにはそれぞれの味があるんだから。良いも悪いもない」
「そう言ってもらえるとホッとします。やっぱり本格的にやってる人って筆で書いてるのかなって」
「そんな化石みたいなの私が知る限りいないわよ。あ、でも宮中の歌会始の応募とかはそうかな。毛筆じゃないといけないのよ。でも身体障害者ならパソコンでもいいとかね。だったら、みんなそれでもいいじゃん。もったいつけてんじゃねーよって思うけどさ。まあ他にも何かのイベントならするでしょうけどね、ほとんど気分を出すためのコスプレみたいなもんよ」
「先生ヤメて、ネトウヨがわいてくるから」
「タンカスキー先生には物が挟まる奥歯がないんじゃないでしょうか」
「多分、生まれつきないと思うよ。歯に着せる衣も持ってないと思うし」


「で、どれどれ見せてもらいましょうか」
「うーん、保森くん、短歌じゃないっていうのは見る目がないわ。これはゴミよ、ゴミ。産業廃棄物並みのゴミよ。一歩間違えたらダイオキシン発生」
「ええ〜!そんなにダメなんですか。どこがダメなんですか?」
「どこがとかじゃなくて、もう全部だめ。あんた、これを短歌って並みの心臓じゃないわね」
「そうでしょ、僕もそう思ったんですよ」
「ちなみに保森くんはなんで短歌じゃないって思ったの?」
「中身もそうなんですけど、一番は57577になっていないからかな」
「そっか、よし今日はそれについて話しましょう」
「57577ですか?」
「そうよ。中身はね、これはこれでいろいろあってめんどくさいからおいといて、まずは形から入りましょうか」
「形ってそんなに大切なんですか?」
「そうね。確かに中身が大切っていうのはよく聞くけど、だいたいそんなこと言う奴に限って大したことないのよ。どっちも大切。形って言ってるけど、短歌の世界ではよく音数とか律とか言われてる。まあモーラとか音節とかいろいろ専門的な言葉を使って説明することもできるけど、ここではリズムって思ってくれれば良い。それでなんかごちゃごちゃ言われても、適当にあしらっておけばいいから」
「リズムって、あのタンタンタタンみたいなものですか」
「そうよ、それがわかれば十分なんだから」
「だから57577っていうのは、タタタタタ・タタタタタタタ・タタタタタ・タタタタタタタ・タタタタタタタってことでいいんですよね」
「保森神拳、お前はもう詠んでいるって感じね」
「タンカスキー先生、今の学生さんにはわかんないですよ」
「あら、そう。黙ってるわね二人」
「こういう時は黙ってろって就活講習で習ったんで」
「こういう時ってどういう時よ?!」
「まあまあ、飲み物が冷めないうちにどうぞ」


「とりあえず、タタタの代わりに何か実際に口に出して言葉を入れたら良いの。はじめのうちは実際に口に出して入れてみたほうがわかりやすいかもね。それでほとんどリズムは解決」
「え、そんな簡単なんですか」
「そう。文字にしたら、あれはこう、それはこうってなんかいろいろ規則があるみたいに思えるけど、実際口に出して当てはめてオッケーだったらそれでそのまま文字にしてオッケー」
「ちっちゃい「っ」とか、あーとか、うーとか伸ばす時もですか」
「そうそう。ちっちゃい「っ」て音は出ないけど、間をおくでしょ。楽譜でいうと休符。時間を取ったものはリズムに入れるの。伸ばす時も時間をとるでしょだからリズムに入れる。逆に「キャ」はキとャで分けないでしょ。2字あるけど1回分しか時間は取らないからリズムとして1つ。そうやって実際に口に出してリズム的にオッケーだったら良いの。ひらがなとかカタカナとかで書いて文字数と合わなくても、とにかくリズムが合ってれば良いの」
「でも、短歌の別名が三十一文字って書いてみそひともじって読むって聞いたことありますけど」
「それは紀貫之って人がね、古今和歌集って天皇が作れって言った短歌本のはじめに仮名序っていうかなで書かれた序文で神話から出たやまとうたを紹介した時に、それがたまたまかなで書いたら31文字だっただけ」
「古今和歌集、文学史で習いました。やまとうたって短歌のことですか?」
「学問的に言うと違う。でも、57577は同じ。その辺はテストに出るとか研究者やマニアになりたいとか素人にちょっといきりたいとか、そういう人が勉強すれば良いことだから、気にしないで良い。気になるんだったら、ググればいくらでも偉そうに説明してくれてる人がいるからあたってみて」
「なんかちょっと棘があるような」
「そんなことないわよ。まあ、三十一文字の由来を知らないまま31音だからっていう人もいるけど、それじゃ三十一文字の「文字」が説明できないじゃない。言葉にその程度の注意しか向けてない輩の言うことなんて大したことない。どうせ誰かの聞きかじりを偉そうに素人にくっちゃべってるだけなんだから」
「マスター、先生なんかあったんですかね」
「いろいろあったみたいだよ」


スーカスーカポン、スーカスーカポン、ポポポポポ。
ドアの向こうに夕暮れが見えた。そして丸メガネの塩顔イケメンが入ってきた。
とっても生真面目そうな人だ。マスターが出迎えに行く。
「後畠さん、いらっしゃい」
僕たちはしばらくマスターの帰りを待ちながらカップの飲み物を干した。
タンカスキー先生の目が獲物を見つけたかのようにギラギラしているように思ったのは気のせいかな。
なんとも中途半端なところだけど今回はここまで。


さ〜て次回のタンカスキー先生は
・余り、足らずもどんとこい
・自由ってあるの
・後畠さんは何者
の3本です。
次回もまたみてくださいね。
んが、ん、ん


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