日本のマスコミ、特にテレビの論調を見ていると、金余りでまたバブルが生まれつつあるというものが多い。しかし、一旦バブルがはじけてしまい、デフレのリスクが生まれているときには、インフレによるリスクよりも一旦デフレになってしまったときの弊害がはるかに大きいのである。これが日本でリフレ派と呼ばれている岩田規久男氏などのエコノミストの理解であり、米・中・欧の金融当局の考えているところだと確信している。それでなければ、どうしてこれらの国の中央銀行が日本銀行と比べはるかに金融緩和の方針で金融政策を運営しているのか理解できない。
この国の人々の頭の中では、金融というのは自分の生活とは関係のない話で金融政策でバブルになり金儲けをしたりする連中がいるものの、自分の「地に足のついた」本業や生活とは関係ないのだと思っているのだろう。しかし、以前から述べているように他の国はともかく、日本では食費とエネルギーを除いた消費者物価指数はマイナスになっておりデフレになっている。そして、デフレになれば雇用が大きな影響を受け、デフレが少しで進めばさらに多くの雇用が失われるのである。そうしたことを軽視して、この国で出口戦略が論議されるのは大きな問題である。
本日のサンデーモーニングで日本総研の寺島実郎氏が今回の連立政権が失敗すると、ファシズムの可能性が出てくるという指摘をしていた。全く同感である。
現在の景気の状況は、決して楽観できるものではないと思う。マーケット・エコノミストは経済の数字を見てリセッションは終わったと言っているような向きも多いと思うが、たとえ「二番底」が来ても別のサイクルが始まったというような人々なわけで、学問的な分析としては重要でも、投資家・生活者としての我々にはあまり参考にならない。むしろ、「二番底」の警告をしている不動産関係の情報のほうが我々には役に立つと思う。
日本の景気を本格的に回復させるには、高橋是清の行った財政金融政策を行うしかないと理解している。一部の人々はハイパーインフレーションを警戒しているようだが、生産能力に余裕があり、海外から財政赤字の分を調達してきているわけでもない日本の場合、直ちにそうしたことが起こる可能性はかなり低いと思う。
非正規雇用の問題や年金の問題を考えても、若い世代が経済的に割りを食っているのは明らかで、このあたりをうまく救済していかないと、経済的にはともかく政治的には非常に深刻な問題が起こる可能性がある。そうした意味で、今度景気が下向きになり、経済が長期的に低迷することは絶対に避けるべきだと思っている。日本のマスコミもその責任は重大だ。NHKをはじめとするマスコミも「リフレ派」の主張をその報道から意図的にシャットアウトしているとすれば、新政権の経済運営を失敗させ、景気を落ち込ませる要因を作っていることになる。今後もそうした姿勢が続くとすれば、景気後退が深刻化した際に断罪されることになるだろう。