
いつものことだけれど、お店に入ると自分が酷くみすぼらしく見えてしまう

とくにどんな形にするのか考えていなかったので、何か参考になるものはないかと、雑誌を捲ってみたりする

「(お、これ、なかなかええんちゃう

とかなんとか思ってみても、「こんな感じで」とはなかなかいえない。
なんとなく恥ずかしいのだ

モデルの人が男前だとなおさら恥ずかしくなる

「(こんな感じでっていうのはお客さんの勝手だけれども、この髪型にしてもこの顔にはなりませんよ



と、いうような美容師さんの心の声が聞こえる。
やれやれ

雑誌を指差すのは抵抗があったので言葉にしてみた。
「えっと、あんまり短くはしないで、爽やかな感じで









美容師さんはアゴに手を当てて首を傾けて鏡越しに僕の目をみた

とりあえず笑ってみた

「えーっと、こんな感じはどうでしょう」
美容師さんは僕がさっき見ていたモデルさんを指差した。
「えーーーー、そんな感じで

と、いうわけで髪は切られていった
