いつものことだけれど、お店に入ると自分が酷くみすぼらしく見えてしまう。
とくにどんな形にするのか考えていなかったので、何か参考になるものはないかと、雑誌を捲ってみたりする。
「(お、これ、なかなかええんちゃう?)」
とかなんとか思ってみても、「こんな感じで」とはなかなかいえない。
なんとなく恥ずかしいのだ。
モデルの人が男前だとなおさら恥ずかしくなる。
「(こんな感じでっていうのはお客さんの勝手だけれども、この髪型にしてもこの顔にはなりませんよ。カットした後に鏡をみてショックを受けてもよければ切りますよ)」
と、いうような美容師さんの心の声が聞こえる。
やれやれ。
雑誌を指差すのは抵抗があったので言葉にしてみた。
「えっと、あんまり短くはしないで、爽やかな感じで、エロいんだけど、わざとらしいエロさじゃなくって、例えば風が吹いて、サラっと揺れるときに淡い妖艶さがでてくるような感じで、でも、それは中性的というわけではなくて、イメージとしては月そのものではなくて、湖に映る月が波を通してかもし出す雰囲気のような感じで、そしてトゲトゲしさを持ちつつ全体としては柔らかな清潔感が漂うような感じで、モテなくていいから人目みて印象づけられるような感じでお願いします」
美容師さんはアゴに手を当てて首を傾けて鏡越しに僕の目をみた。
とりあえず笑ってみた。
「えーっと、こんな感じはどうでしょう」
美容師さんは僕がさっき見ていたモデルさんを指差した。
「えーーーー、そんな感じで」
と、いうわけで髪は切られていった。
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