透明人間たちのひとりごと

使い捨て社会の弊害

 チャップリン『モダン・タイムス』 の如く
人間の尊厳が失われ、単なる機械の一部分のようになって
巨大な歯車に飲み込まれてゆく …

 人間を機械やモノや消耗品としか考えずに、経費の調整
言わば人件費の調節弁として雇用対応する現実、とりわけ
若者の 「使い捨て」 が問題であり、ハローワーク(旧職安)
や民間の紹介事業でもトラブルが絶えないようで労働相談
の件数はうなぎのぼりに増加中だとか …

 『ブラック企業と共謀罪』 にいただいたコメント
のなかに、「日頃からコンプライアンスを声高に叫んでいる
企業が労基法を遵守せずに超過勤務や残業代の未払いを
公然と行っているようでは格差以上にやり切れない世の中
になってしまう」 という書き込みがありました。

exclamation http://sun.ap.teacup.com/japan-aid/344.html(参照)

 その答えにはなりませんが、

 『ブラック企業と共謀罪』 の続編として、若者
「使い捨て」 について考えてみたいと思います。

 まずは、その前提として 「ブラック企業」ボク
なりに定義することにします。

 「労働条件や労働環境の厳しい会社は昔からゴマンと
あったよ
」 ―

 「ブラック、ブラックって、耐性のない温室育ちの若者が
闊歩するだけのひ弱な国にしてどうするんだ
nose6

 常套的な1号 さんの逆説論法です。

 労働条件だけではなく、違法行為(主に労働基準法違反)
にしても日常茶飯事のことで、だからこそ労働組合などの
活動が必要であり事実活発だったそうです。

 「成長期や変革期にはそうしたことも不可避的な必要悪
だったのかも知れませんねnose7


 すかさず 2号 さんが相づちを打つかたちでフォローを
入れますが、

 1号 さんは丸2日間ぶっ通しで仕事をしての帰り道で
居眠り運転をしてしまい、信号待ちの乗用車(カローラ)に
追突して、ボーナスどころか貯金まではたく破目に陥って
しまったのだとか …

 それじゃ、ダメじゃん

 差し詰め、いまなら

 「超過労で追突 ブラックな〇〇〇」
なんて見出しの記事が紙面に躍っていたのかも …

 その会社、現在は〇〇ホールディングスという総合流通
グループの一員ですが、1号 さんが在職中には1部上場
の企業だったそうです。

 ところで、逆手(さかて)取りの1号 さんの肩を持つわけ
ではありませんが、右肩上がりの時代にはそうした企業は
珍しくもなく、あたりまえの存在だったのかもしれません。

 現にいま、急成長を続けている会社のなかには、多かれ
少なかれブラック傾向がみられるわけで、なかには平然と
ブラック色を真っ黒なままに露呈させてみたり、ブラックさを
むしろ売り物にすることで宣伝してみたり、 といった具合で
発展著しい企業のブラック度合いの濃さが目立つのです。

 労働条件が過酷だとか、非常に厳しい環境での勤務を
強いられているとか、違法行為を行っている会社を指して
「ブラック企業」 と呼ぶことに ボク は少なからず
抵抗というか、ズレを感じます。

 厚生労働省の重点監督のデータにもあるように、厳密な
意味で言えば、大半の企業で違法な労働が行われている
のは周知の事実であって、明確に悪質な法令違反をして
いる会社を除けば 「ブラック企業」 だと決めつける
のには現状では曖昧さが残ります。

 そこで、本当の意味での 「ブラック」 とは何か

 それを ボク なりの 「ブラック企業」 の定義と
したいと思います。

 それは、どんなに努力し頑張ったとしても決して報われる
ことのない会社や企業を指して 「ブラック」 だと
したいのです。

 ★ 端的に言えば、若者を使い潰(つぶ)す会社です

 まず、失われた20年を象徴する長期の不況下で求人が
落ち込み、新卒者の就職が難しい現実がありました。

 次いで、2000年代後半になって、非正規雇用が増えて、
若者の貧困化が問題となりました。

 その解決策として正社員化が謳われ、多くの若者たちが
正社員を目指して頑張ってきたわけですが、それを逆手に
悪用する企業が現れ、「正社員採用」 を募集コピー
に人を集め、月間何百時間もの残業や執拗なイジメなどで
使い潰すといった行為が横行したのです。

 要は、 

 弱みにつけ込んで大量採用して酷使をするわけですが、
3ヶ月、半年、1年という短いサイクルでコイツは使えない
と判断すると、残業代を払わずに超過勤務を強要しては、
パワハラで威嚇し、イジメを繰り返して退職へと追い込む
わけです

 反対にコイツは使えるとなると …

 残業代が発生しない店長や管理職に昇進させて無制限
に近い滅私奉公としてのサービス残業をさせるための
奴隷として塩漬けにするのですdokuro

 その結果、心身を病んだ若者はうつ病や心身症を発症し
、体を壊して過労死する者や絶望して自殺をはかるように
なるわけですnose3ase

 こうしたイジメや長時間労働で精神や身体を病んでしまう
と再就職は困難を極め、働く意欲を失ってしまいます。

 そうなると、これは本人のみならず社会的にも大きな損失
につながるだけではなく、日本国の存亡にも直結するような
大問題に発展する事態にもなりかねないのです。

 「おいおい、そんなに間口を広げて大丈夫なのか

 隣からこっそりとのぞき見ていたのは 2号 さんです。

 「確かに過重労働を強いられるのは若者に多いし、日本
の少子高齢化が進んで生産年齢人口が減少するなかで、
明日の担い手たちが使い捨てられて廃品のように廃人化
していくのだとしたら、それは社会にとって大きな損失だけ
ど、あまりに労働者の側に立った労働基準行政を実施して
企業を閉鎖や倒産などに追い込むとそれはそれで不安定
な雇用環境をさらに増大させるという別の問題が発生する
んじゃないのかな」 ―

 「急成長をしている企業にブラックが多いのは、産業構造
の変化が要因で、新興の産業や企業に偏っているはずだ」

 「確かに IT関連、外食、流通、小売、介護、保育 etc...
が多いですね」

 「労働法制の規制緩和で非正規雇用が広がり、代わりは
いくらでもいるとして、正社員を目指す過酷な競争に若者を
駆り立てている社会の仕組みに大きな問題があるんだよ」

 「じゃあ、みんなが就職しなければいいじゃん」

 4号さんとチームを組んでいるバイトのみっちゃんです。

 「ブラック企業も会社である以上は、人が入らなければ、
困るわけだし、ネットの力でブラック企業の情報をビシバシ
発信して、ブラック企業に就職する被害者たちを減らせば、
自然と潰れていくわけでしょ」

 「それと労働組合の対応だな」

 突然割り込んできたのは、暫く姿が見えなかったはずの
1号 さんでした。

 「日本の労組は企業別で、産業別のユニオンじゃ
ないから身内だけの御用組合になっちゃうんだ」

 「外国は違うんですか」

 「ああ、産業別や業種単位だから、他社の人権問題にも
無頓着ではいられないけど、日本の場合、他社は他社だし
他人は他人、だからね」 ―

 「それでも労務管理が確立していなかった戦後の一時期
には存在価値があったんだが …」

 「春闘といっても、ベアなど自社の賃金を上げる努力しか
して来なかったし、産業構造が変化しても対応力がないと
いうわけですねase2

 「だから、労組じゃなくて労基署に駆け込むわけか」

 少しだけスッキリとした ボク でしたが、問題の解決には
まったくなっていません。

 「フランスの労組は職業別の最低賃金を設定する交渉時
に組織率が10%以下でも、その職種のすべての労働者が
関わるような問題設定の仕方で全員の参加を呼びかける
ので団交での結束力は経営者側にとっても脅威となるが、
日本ではまず無理だろうな」

 「目先の利益やコスト削減のために若者を食い潰すよう
では、企業としての社会的責任が問われるし、そんな企業
が蔓延(はびこ)ることを許す社会には未来はないという
ことですねnose6anger

 ここで、2号 さんと ボク の意見は完全に一致をみた
わけですが … 

 結局のところ、現状では各界の自浄努力に委ねることしか
方法はなく 隔靴掻痒 の感は否めません。

 どうやら、

 どのような仕事でも給料をもらえる仕事をしている以上、
従業員側に耐えてもらいたいというのが労働基準監督署
の本音のようですし … ネっ

 やれやれここで結論です

 どんなに過酷で苦しい仕事でも、その職業や会社に対して

 希望が見い出せるのならば、

 「ブラック」ではありません

コメント一覧

半熟マン
ブラック企業の時のコメントに応ずるかたちでのエントリーに感謝です。
学生や若者に巣食う「ブラックバイト」も相当にヤバイって話ですよ!
おいら
一流会社の労働組合がいう基準がブラック企業ならば、中小零細会社はほとんどブラック企業でオイラの会社もそうだわ。

ココナン
一流企業とされる会社でも肩たたきや追い出し部屋の存在が取り沙汰されます。
企業戦士の厳しさはわかりますが、だからと言って、目をつむり、口を閉ざしていい問題ではありません。
皮肉のアッコちゃん
東京都知事選に立候補した宇都宮健児氏(元日本弁護士連合会会長)が、ブラック企業を規制する条例の制定を訴えているようですが…
たしかに、夢と希望が持てるならブラックとは呼べないよな!
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