ぶどう館

このブログは今世紀最大の巨匠と全国八百屋団体の間で噂のぶどうによる奇妙奇天烈なブログである・・

あの話のサイドストーリー④

2005-07-02 10:02:07 | よた話
芳子は酔っていた。


家で一人でいくら飲んでも、こんな気持ちよく酔えたことなどなかった。


加藤君のいる居酒屋・・・・・。


彼が女性でも入りやすいと言っていたが
なるほど 決して若くない女性二人が居ても違和感はない。
店の大将と、板前の加藤君、バイトの子が一人・・・・

3年ぶりの彼はどこか垢抜けていた。
髪も伸びて、お洒落になっていた。

・・・・・というより 一瞬 別人のような違和感すら感じた。

しかし 実際言葉を交わしていく内に
此処にいるのは まぎれもない 『今』 の加藤君だ・・・・。
そう確信した。


カウンター席とテーブル席が3席
20人はいったら満員になってしまうであろう店内には
自分達以外にはカウンターに中年サラリーマン風の2人連と
テーブル席に、恐らくは学生だと思われる5人グループがいるだけで
それほど忙しくないせいもあってか、加藤君は 自分達の話によくはいってきた。


酒の肴になるのは やはり 3人共通のスーパーでのことであり
嫌な上司のことや、納得いかない社内のシステム・・・・
同僚の陰口・・・・・など
酒のせいもあってか、芳子は久しぶりに饒舌になった。


「ごめん 芳子。あたし もう帰らないと・・・旦那がうるさいから」

どれくらいたった頃だろうか
そう言われて芳子は時計を見た。


《なんだ・・・・まだ10時前じゃないの・・・・・》 


どうせ まだ和則は帰って来てはいないだろう
今日出かける事は言ってないが、その事で和則が怒ったり 何か言ってくるとは思えなかった。


悟も友達の家に泊まるって言ってたし・・・・。

・・・・・・・・・

カレンダーに○印をつけた次の日
悟は、その日は友達と遊びに行って、そのままその子の家に
泊めさせてもらう・・・・・

そう言い出した。

ひょっとして・・・・

ひょっとして あの子なりに何かを感じ取っているのかしら?


しかし 芳子には予定を取りやめにすることは出来なかった。


今回を逃せば もう会えない・・・・・・ そんな気がした。


「・・・・ごめんね。もしなんだったら芳子は残って飲んで行ったら?飲み足りないでしょ?」


ふと 我に帰ると そんな話になっていた。

「そうですよ。芳子さん もう少しゆっくりして行ってくださいよ!」

正直 料理も酒も もう足りていたが
今はまだ此処からでたくなかった。


和則が帰ってくるまでに帰ればいいだろう・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・

11時

店の客は段々と減って、芳子一人になった。



「芳子さん 帰らなくても大丈夫ですか? 旦那さんとか心配されてるんじゃあ・・・」

「・・・・大丈夫よ あの人 今日は遅いって言ってたし」

「そうなんですか・・・・じゃあ 俺 今日は11時半には上がれるんで
 よければ一緒に飲みにいきませんか?」


心臓が跳ね上がりそうになった。

帰りたい訳ではないが、いつまでも此処にいる訳にもいかないし・・・

正直 帰るタイミングを失っていた。


加藤君と二人で・・・・・・・


どうしよう・・・・・

どうしよう・・・・・

どうしよう・・・・・


しかし この期に及んで悩む という事は もう答えは決まっているようなものだ。


芳子は少女のように ときめいた。



続く・・・・・・