「おい、本当にここで面白い物が見れるのかよォ」
私が連れだした一方通行が半信半疑のようだ。場所は原子力実験炉付近。ここにはこれという物はない。
「しかし幻想御手(レベルアッパー)に多才能力(マルチスキル)か。けっ、くだらねぇ事しやがる」
「まあ木山も目的があってやっているにすぎないし仕方ないわ」
上の道路は既にアンチスキルによって封鎖されている。そうこうしている内に爆発が起こった。
「始まったわね」
能力で道路の上に登り、木山とアンチスキルの戦闘を観戦する。木山が複数の能力を使用して、アンチスキルを圧倒していた。
「へえ~、マジで複数の能力を使ってやがるぜェ」
「ええ、見物ね」
アンチスキルは数で勝っているものの多才能力者が相手では分が悪い全滅するのも時間の問題だろう。
「なっ、なぜ君達が!?」
アンチスキルを全滅させた木山が、こちらに気付いて表情を変える。
支配領域と一方通行。いずれも学園都市の最強の一角を占める猛者。アンチスキルならば兎も角そんな化け物じみた者達がいるのだから驚くのは無理もない。
そこに御坂が登場する。
「佐天さんも来ていたのね」
御坂は私が既にいた事に驚いていた。
「……まさか絶対能力者に超能力者が二人も来るとはな」
「言っておきますが、今の私はただの観客なので、手を出すつもりはないわ」
「ちょっと佐天さん!貴女の妹さんもこいつの仕掛けた幻想御手の被害にあっているのよ!」
「そうですか。でも風紀委員でもない権限のない一般人が、勝手な行動をするといろいろと問題があるでしょう?」
御坂の言葉に一般論で答える。一応正論なので御坂さんは押し黙る。
「それに幻想御手にしても、ちゃんと理由が合っての事だろうしね」
「どういう事よ?」
「幻想御手は樹形図の設計者の代用品として使うつもりで、多才能力はあくまで副産物に過ぎない。そうでしょう木山さん?」
「君は知っているのか?」
「これでも情報通なものですから……」
「そうか」
「もういいわ、私一人でやる。貴女はここで見学してなさい!」
痺れを切らした御坂さんは、そう言い放ち木山に向かっていった。原作通り、御坂さんと木山さんが派手に戦っている。私と一方通行は観戦モード。
「おい、のンびり観戦してていいのかよォ?」
「まあ、命に関わるようなら手を出すけど、可能な限り干渉したくないのよね。それに私はこの後に現れるアレに興味があるしね」
「アレ?」
「ええ、幻想御手によって生み出される存在。私達にとってもいろいろと興味深いからね」
アレはAIM拡散力場の集合体。つまり私の絶対能力と同質の存在なのだ。一方通行がそれを目撃することで彼の”自分だけの現実(パーソナル・リアルティ)”に何らかの影響を与えることができるだろう。
実は一方通行が脳を破損するイベントを潰してしまったので、一方通行の”自分だけの現実”にAIM拡散力場の数値を入力させないといけない。今回はそれの工作なんだよね。
そして『幻想猛獣(AIMバースト)』が出現した。幻想猛獣。それは胎児のような姿で現れた。そして背中から幾つもの光の線を放出する。それは幾重にも別れた天使の翼にも見えた。それが急成長して怪物となった。
「なンだァ、あの怪物はよォ!」
「AIM拡散力場よ。でも拙いわね」
「なにがだよォ?」
「アレの進行方向にある建物は、原子力実験炉よ」
「……マジかよ!」
本当にシャレにならない。原作では問題なかったが、一歩間違えれば大惨事だ。
「こういうのは趣味じゃないけど、しょうがないから超電磁砲を助けてくるわ」
流石に無視はできない。
「しょうがねェなァ」
一方通行も渋々同意する。
舞空術で空を舞い、上空から幻想猛獣に気功波を放つ。
「なにっ!」
いきなり放たれた攻撃に御坂さんが声を上げた。次の瞬間私が彼女の側に降り立つ。
「佐天さん!」
「非常時だから手を貸すわ」
そう言いながら、私は幻想猛獣を見る。今の気功波はかなりの被害を与えていたが、元々が実体を持たないAIM拡散力場の集合体、すぐに再生していく。
「……やはりまともな生命体ではないアレには効果が薄いわね。ならリミッターを外す」
「リミッターですって!?」
御坂さんが私の言葉に驚く。
私は右手に付けている腕時計型の重力制御装置を弄る。30Gと表示されている画面を1Gにする。体に掛かっていた重力負荷が消える。コキコキと体を動かす。負荷を外すのは久しぶりだ。
「全力戦闘は久しぶりね」
私の力は超能力だけではない。気を用いた戦闘力。これも私の大きな力。
「アレはなんなのよ?佐天さん知っているの?」
「アレは幻想御手によって束ねられた約一万人のAIM拡散力場の集合体で、虚数学区の正体でもあるわね。厄介な事に学園都市に満ちる他のAIM拡散力場をも吸収して成長を始めているわ」
「なんですって!」
「なんだと!」
二人が驚く!
「ついでにいうと絶対能力というのは、学園都市に満ちる大量のAIM拡散力場を操る事で発現する能力ね。アレと私の絶対能力は同質であるから、アレは擬似的な絶対能力者でもあるわね」
「そんなのどうするのよ!」
トンデモな話に御坂さんが食ってかかる。
「御坂さん忘れたんですか?私は絶対能力者(レベル6)ですよ」
その言葉と共に、私は光翼を展開する。
「疑似はあくまで疑似、所詮は紛い物にすぎない。真の絶対能力者(レベル6)の力を見せてあげる」
私はアレが吸収しようとしているAIM拡散力場を根こそぎ奪い取る。能力で幻想猛獣と競い合いながら、気功波で幻想猛獣を消し飛ばす。といってもやりすぎると周囲に与える影響が大きいので手加減しながらだが。
私が圧倒的な力で幻想猛獣を叩き潰しているもののすぐに再生してしまう。
しかし、私に焦りはない。アカシックレコードからの情報で、原作通り初春が幻想御手のアンインストールを行おうとしている事を知っているからだ。ならば時間を稼ぐだけでいい。
幻想猛獣が放つ光の翼の攻撃を私も光翼で迎撃する。攻撃を防ぐ一方で、幻想猛獣を構成しているAIM拡散力場を奪うために干渉する。それは幻想猛獣も同じようで、私達は周囲と相手のAIM拡散力場の奪い合いをやっている。
しかし、一万人もの人間の脳を束ねたとはいえ、この私の能力と競い合うとはね。思ったよりも幻想猛獣の能力は高いようだ。
長期戦ならば生身の人間である以上私の不利かもしれない。だが時間制限がある現状では……。
そして幻想猛獣の様子が変わる。幻想御手のアンインストールが開始されたからだ。
「タイムリミットね」
この戦いは私の勝ち。同じ絶対能力のぶつけ合いは、流石の私も初めてなのでそれなりに楽しめた。
「油断するな!まだアレは一万人ものAIM拡散力場の集合体なんだぞ」
木山さんが怒鳴る。
「油断?違うわ。これは余裕!」
私は構成が弱まった幻想猛獣を構成するAIM拡散力場に一気に干渉する。その干渉で幻想猛獣の体が崩壊して、幻想猛獣を構成する核が露出した。
「これでゲームオーバーよ」
私が放った気功波は核を消し飛ばした。
やっぱり一方通行にはLevel.6になってほしいです。
御坂もLevel.6の秘密を知ってしまったので、Level upしそうですね。
あと、ミサカシスターズの顛末を御坂がシスターズに会うなり、ハッキンッグで知るなりで上条との仲を縮めてほしいです。
次回の更新も楽しみに待ってます。