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田舎ぐらし(159)

 ー 過 去 ー

 


 過去にこだわるな、という。
そう言われるとそこはそれ生来の天邪鬼、俄然過去に首を突っ込みたくなる。

 まず、勤務先のひとつからもらっておいた人事記録を探し出した。次いで大きめの方眼紙を広げて所属、勤務地を時間を追って書き出し、これに住まいや家族の異動を加えた。

 終わって眺めてみると、よくもまあこんなに転勤したものだと思う。東京ー九州ー北海道と大体3年ごとに転々している。
 
 この間、皆の関心の的は知る限りでは同期の中で誰が最初に昇進するかだった。昇進するためには試験に受かる必要があった。しかし、登竜門とされていた試験の受験は断った。他にやりたいことがあったからである。他方、転勤はひとつも断れなかった。

 仕事はきついことも多々あったが概してやりがいを感じることができた。だから、日曜日、ガラガラの山手線に乗って職場に行くことも一向に苦ではなかった。

 こうして過去を見ていくと、時折行間に魑魅魍魎が顔を出す。単語だけ書き出すと例えば、無給、取り付け詐欺。確かにそれは一時生活にマイナスに働いたが、一面では人生にメリハリをつけてくれた。
 凸凹のない人生などランドセルを背負った小学生のまま一生を終わるようなものだろう。来世で閻魔様も大笑いするに違いない。ひとしきり笑った後こう言う。「ボク、ママはどこにいるんだ?」。

 過去を振り返るかやめておくか。いずれにしても、人生は選択の連続。折々に自分がした選択の結果が今の自分である。

 最後になったが、世間一般と違い「こだわる」ということばはネガティブな場面に限って使うことにしている。


 
 
 

 

 

 


 

 
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