シヤッターのある風景

シャッターの写真を撮りまくる「シヤッター写真家」がシャッターについて語ります。随感、記録など。

シヤッター前の話 〜マニアになるまで〜

2020-09-20 23:37:00 | シャッター
マニアやっていると「なんで〇〇を集め始めたんですか!」「よく〇〇に注目しましたね!」などなど、疑問と驚きの声をいただきます。
自分でも「なんででしょうね?」って感じです。
シャッターを撮る人になるとは全然想像していませんでした。
昔の自分に会いに行ったらきっと面食らうでしょう。

逆にシャッター撮る前の自分の内面ってどんどん思い出せなくなっています。
そんなにのめり込んでいる自覚はなかったのですが、もうすっかりシャッター含めた「自分」のようです。
無理やりシャッターを引き抜こうとしたら多分全身に激痛が走る。

まだ25歳の若造ですが、こうして歳を重ねて出会いを重ねて、元の自分が記憶の隅に追いやられていくんだなぁってつくづく思います。

「マニアの人って、マニアになる前は何だったのでしょうか?」

そう好奇心を抱く気持ちが、今になり本当にわかります。

昔は振り返ることができるうちに振り返るに限ります。
マニア前の自分について考えてみます。
ってことで長い長い自分語りが始まるので興味ある方だけご覧いただけると嬉しいです!

幼少期から高校まで
〜飽き性ながら、マニアの気配も。〜
小っ恥ずかしい記憶ばかりなのでちょこちょこっと。
本当に気まぐれな子どもでした。
現実的な職業でいうと歌手やら奏者やら科学者やら弁護士やら小説家やら画家やらデザイナーやら、とにかくいろんなものになりたがったので家族は大変だったろうなと思います。
こんな人間が一つの対象を追い続けるマニアになるだなんて誠に信じられない。

しかし、少しだけマニアの気がある思い出もありました。

小学生の頃にデジカメを譲り受けて以来、数年間にわたって空の写真ばかりを撮り続けたこと。



大学に入ってから当時のメモリースティックを見る機会がありましたが想像以上にストイックでした。
一切建物や電線などが映り込んでいない空と雲のみのデータがそこにありました。
きっと、プレビュー画面に空以外のものが混じってしまうことを一切許さなかったのでしょう。

空の写真群は今の自分の原点だったかもしれません。
今の作品に通じる「ルールを設けての撮影」はその頃から無意識ながら好きでやっていたことでした。

大学在学中
〜多分野を楽しみ、恩師と出会う〜
デザイナーになりたい!と意気込んで美術大学に入学。
初期段階で「美大生っぽくない真面目すぎる学生」と言われて戸惑ったこともあるけれど、本心から美大生活を満喫していました。

美大の世界は自分が思っていたところと良い意味で随分と違っていました。
自分が入った学科は「デザイン」とついていることからデザイナーの先生方が大勢いらっしゃるものだとばかり思っていました。
しかし入ってみたら情報工学に特化した先生がいたり写真家の先生がいたり。
在学中は一般的にイメージされるデザイン領域にとどまらない多彩な授業を楽しんでいました。

そして、この「写真家の先生」というのが自分のマニア活動の直接的なきっかけです。
「リサーチエンタテインメント」という考え方に基づき、特定の被写体を調査・研究しながら、多くの人が楽しめる写真作品を作ってきた先生。自分が今試みていることですね。
(自分の内面が先生の目に触れると大変恥ずかしいので名前を伏せていますが、この説明でバレるかも)
カメラを持って空を追い続ける楽しみを不意に思い出して、ゼミではこの方にお世話になりたいなと、いつからか漠然と思っていました。

案の定、この某先生のゼミに入った自分。
ただ、卒業制作の対象物を確定させるのには随分と苦労しました。
子ども編で触れた通り、とっても移り気だったので。
生き物や街中で気になったものなどを何も考えずに撮っていました。当然、軸がブレているので卒制に向けた方針が定まらない。



当時はボツにした「農地の美術品」。もしかしたらこういうのばかり撮る人になってたかもしれませんね。

面談を重ねているうちに、先生から一言。
「無意識だと思うけどシャッターが写ってることが多いね。撮ってみたら?」



……本当だ!
無意識のシャッターだ!

そんなこんなで、「無意識にシャッターにひっかかるものを感じている」ということを指摘された自分は、その日の夜からシャッターを真剣に撮り集めるようになりました。

シャッターを見た人の心の動きや、シャッターを撮影していて気がついた周辺の現象。
そういったことを先生と相談しながら、試行錯誤して今の撮影スタイルを定めてきました。

シャッターマニアとしての目覚めをもたらしていただいたこと、リサーチエンタテインメントの楽しさを教えていただいたこと。
当時の先生のおかげで今の自分があると言っても全く過言ではありません。



初期に作ったシャッター写真集。テーマが決定後もしっかり悩み、今に向けて走ってきました。


今とこれから

卒業制作展での作品展示をきっかけに色々なご縁ができまして、今も働きながらシヤッター写真家としての活動を続けています。
大学を卒業するまでは外向きに作品を出していくという経験が今まであまりなかったので、自分の存在がどんどん多くの方に知っていただけることに驚きと嬉しさを感じてばかりです。
皆さん、私のことを知ってくださって本当にありがとうございます。

最近、私はあと何年ぐらいシヤッター写真家であり続けるのかなと考えることがあります。
他の被写体にも興味津々ですので、何か違うマニアに目覚めるというのもありえそうです。
しかし、どんな活動をしていてもシャッターのことは忘れずに撮り続けているような気はしています。
もしかしたら、ずっとシヤッター写真家かもしれません。

変化か、継続か。
先のことは全然読めない性格の自分ですが、これからも楽しく活動してまいります。
これからも皆さん、よろしくお願いします!

シヤッターの顔見知る(おまけ)

2020-09-20 22:03:00 | シャッター

シャッターのポストや手掛、内外錠の高さがちょいちょい変わるという話をしたのでおまけ。
「平均的な部品の位置」について調べてみました!

人の顔でもよく「平均顔」とか作られたりしますよね。
シャッターでも部品位置の平均を出せば「平均シャッター顔」を作れるのではないかと。

平均顔作りって膨大なデータが必要なので、なかなか個人では手を出しづらいところがあります。

しかし!シヤッター写真家ならそれができます。



データならすでにたんまり持ってますから!!

ポートフォリオサイトに登録したすべてのシャッターから、「下から何スラット目に各部品が取り付けられているか(座板は数に含まない)」を調べていくことにしました。



地道すぎて正直泣いていました。
単純に写真の枚数分だけデータを打てばいいわけではなく……



こんなのとか。



こんなものも!

そう、「シャッターの枚数分」のデータを入力していかなければならないのです。
301枚もありました。遠くから撮っていてスラットが見づらいものもありました。数時間ほどかかりました……。

苦しんだ甲斐あって出てきた結果はこちら。



最頻値は、一番よくある部品の高さ、最大値は一番高い位置、最小値は一番低い位置だと思ってください。

最小値がかなり不自然な値になっていますが、それに関してはこちらの画像をご覧ください。


一番左のシャッターに注目。

壁の途中からシャッターになっていることもあるんですよ。
そうなると手掛も限界まで低い位置にないと開けるときに困ってしまいますので、当然一番下のスラットに取り付けられています。

あと、また脱線しますが、同じ建物に複数のシャッターがついているときって「普通は」手掛けなどの部品が同じ高さに統一されていると思いますよね。



このシャッター、左右で部品の位置が若干異なります。
左シャッターは下から数えて手掛が10スラット目、内外錠が13スラット目にあるのに対し、
右シャッターは手掛が8スラット目、内外錠が12スラット目(こっちにしかないけどポストは16スラット目)にあります。本当に微妙な違いですね。

そして、このような違いがあるシャッターの多くは次の特徴も見られます。
「どちらかのシャッターがちょっと新しそう」なのです。
もう一回、さっきの写真を見てください。
おそらく左のシャッターを後から交換したのではないでしょうか?
部品の位置を調べていると、こういった発見もあるんですね。

話を戻します。



各部品の高さ平均値は上記の通り。
これを四捨五入して……。



こうして……!



平均シャッター顔の完成です!
確かによくある顔になりましたね。
平均顔って、多くの場合美形に見えるそうです。どうでしょう?美シャッターになっていますか?

あんまりタメにならないことのほうが多い私のブログですが、今回は大事なことをお伝えできたのではないかと思っています。

Excelって便利だと。

皆さんもMicrosoft Excelのインテリジェンスを駆使して、より良いマニア活動を!

シヤッターの顔見知る(後編)

2020-09-20 07:59:00 | シャッター
前回、シャッターの顔を見る鑑賞視点についてお話ししました。
今日は続きから。シャッターの顔は個性的だという話題です。

前回で「シャッターの顔って言ってもどこでも同じじゃない?」って思った人も多いのでは。
ただ、パーツの配置などによってその印象は随分と違います。

スタンダードなパーツ配置を頭に思い浮かべながら次の写真をご覧ください。



逆立ちしていない!
そしてインドっぽい!
(豆知識:ヒンドゥー教徒の女性が額につける装飾はビンディーというらしいです)
通常、内外錠・手掛の上に取り付けられていることの多いポストが一番下に配置される、珍しいレイアウト。
郵便物を投入しようとすると腰を痛めそうです。

次は逆位置にしたこの写真を。


変顔をしていますね。
口と鼻がズレすぎて大変なことに。
この配置って意外とよく見かけます。

自分が思うに、手掛が中心からズレた位置にくることってそうないんですよ。
手掛ってシャッターを開けるときに使うところだから、変に偏った位置にあると力が不均等に伝わって使いづらそうだし、シャッターが歪んで開いてガイドレールとかに引っかかりそう。

一方、内外錠やポストは好きな場所に取り付けても差し支えないので、使い手の利便性などにより左右どちらかに偏ったり高さを変えられたりしがち。
だからこのような変顔が生まれるんですね。

次もまたポスト位置が低いので正位置で。



もはや顔なんでしょうか?
最初に紹介したものと似てはいるものの、手掛とポストが同じスラットに集められている点で大きく異なります。
魚の正面顔写真っぽいかな?って思いましたが、あらためて画像検索してみると目と口の高さが一直線に揃っている顔って見つからないものですね。
シャッターの顔を認識するAIを開発したとしてもこれははねられてしまいそうです。

「変顔シャッター」、皆さんもぜひ探してみてください。

撮らないシャッターの魅力 〜シャッターアート〜

2020-09-20 05:32:00 | シャッター
シャッターを撮っている人と聞いて多くの人が真っ先に思い浮かべるのは「シャッターアートを撮っている人」。
でも撮っていません。
面白い世界だとは思うんですが、「シャッターをキャンバスにした作品を撮っている」ような気がして。
どこかの誰かのポートフォリオを作っているかのような、そんな感情になってきてしまう。
作品化するとしたらシャッターの周辺にある現象として積極的に撮っていけばいいのか、ちょっと自分の姿勢について深く検討するプロセスを要すると思います。

しかしながら面白いですよね、シャッターアート。
撮らないと言いつつ、初期の検討段階で撮った写真が残っていましたので紹介していきますね。

まず爽やかにこちら。



シャッターの魅力って閉塞感や寂寥感なのですが、それを見事に打ち消している作品。
これを見ても「寂しいなぁ」なんて気持ちには全然なりませんね。

このアートができるまで、持ち主の方は真剣に「シャッター」の本質について考え抜いてきたのではないかと思っています。
「シャッターを閉めていると通行する人に重い印象を与えてしまう……どうすればいいか……そうだ!空を描けば平面に広がりを持たせることができて開放的だ!」
と、きっとこんな感じ。
シャッターと向き合い、寄り添ってきた結果の青空なのではないでしょうか。

観光地ではそこの名物をシャッターにレイアウトすることがありますね。




都心からもアクセスしやすい観光地、川越では「時の鐘」を猛プッシュ。
同じモチーフで、あと上下のラインでフォーマットも統一されているのですが、夕暮れや昼間の晴天下など、お店によって切り取る場面が異なるんですね。
お茶屋さんはお茶を名産とする狭山市と川越市をつないだ、スケールの大きな作品となっています。(正月に撮りに行ったので、飾りの印象に引きずられて年賀状の絵っぽくなっております)



正月といえば、戌年の年賀状用にこのシャッターを撮りに行ったことがありました。
「犬山市」にある犬のシャッターの商店街。
左手のほうを歩くと同じ型紙で描いたっぽい犬の絵がずらっと続いていました。
シャッター年賀状を作る際は、「干支の動物の名前が含まれる地名」から探してみると上手くいくと思いますよ。



こちらの畳屋さんは「カラータタミ」という自らの売りを几帳面かつ丁寧なタッチで表現しています。
Windowsっぽいなぁって思ってしまうのは自分が90年代生まれだからでしょうか。
令和世代には伝わらないネタになりそうで、ドキドキしています。



これは確か中学生か高校生かによって描かれたコンポジションです。
モンドリアンは確かにシャッターに馴染みますね!
渋い筆文字の店名とのギャップも素敵です。

余談ですが、モンドリアンのこの作品って第三者の手によって色々展開されすぎて、たまに原画がどんな感じだったかわからなくなってしまうことがあります。本当に余談でした。

今まで見てきた中でもわかると思いますが、シャッターアートは直線的なカッチリしたデザインの方が描きやすくて人気です。

ただ、本当に「店の人が描きたいもの描いたんだろうなぁ……」と思われる自由な作品もそれはそれで味わい深いです。


こちら、なんだと思います?



歌うバナナです。律儀に体に「バナナ」って描いてあります。
寝る前にしっかりと目に焼き付けて、夢の中で取材してみたいです。なんで?って。



水上タンデム自転車でお別れ。


シヤッターの顔見知る(前編)

2020-09-18 08:22:53 | シャッター
人と親しくなることはまず、顔を知るところから始まります。
子供の頃は「顔の知らない人を簡単に信用してはいけません!」なんて口酸っぱく言われましたっけ。

さて、皆さまは今までのブログで少しでもシャッターに親しみを感じていただけましたでしょうか?
顔のない無生物相手に、難しかったでしょうか。
しかし、シャッターに顔らしきものを見つけることは可能なんです。

ということでこれから皆さまには、シャッターと顔見知りになっていただこうかと思います。

前回記事で説明の通り、シャッターの表面には「ポスト」「内外錠」「手掛」の3つの目立つ部品が取り付けられています。


拡大するとこんな感じ。

これを180度回転すると……。



ほら、顔に見えませんか?
「いつも眠そうですね」なんて言われてしまう顔。
なんならうっかり居眠りしてもバレるリスクが低いような顔。


鼻なしくんと口なしくん。

眠そう(または眠っている)にもかかわらず、常に逆立ちをしています。



徹夜明けで外に出たときなどに見ると、とても元気が貰えます。



最近はチラシが鬱陶しいのか、ポストを塞いでしまう持ち主も多いです。
口をガムテープで塞がれて、囚われの身なのでしょうか……。
眠そうだわ、拘束されているわで気の毒な気がしないでもないお顔です。



それでも毎日毎日、シャッターは逆立ちして頑張っています。
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