森の中の恍惚

野山が笛を吹いている

川島の鬼鎮さま

2016年02月27日 | 空色の休日 2016 

「福は内、鬼は内、悪魔外」の節分祭でお馴染みの比企郡嵐山町「鬼鎮神社(きじんじんじゃ)」。ただいま人気の“鬼ちゃん”所縁の神社ですね。

当社は、市野川右岸に鎮座する。ここは、江戸時代、広野村の南の方向に当たる飛地で、「川島」と呼ばれた。地理的には、志賀村の中にあった。川島の地は、広野村の村人共有の「秣場(まぐさば)」(肥草山)であった。勧請年代は明らかではないが、村の鎮守として祀られた。祭神は、衝立久那止命(つきたつくなどのみこと)、八衢比古命(やちまたひこのみこと)、八衢比売命(やちまたひめのみこと)の三柱である。
(Resource:「埼玉の神社」埼玉県神社庁)
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【秣場(まぐさば)】秣を刈りとる野原。入会地である場合が多い。
【秣・馬草(うまくさ)】牛や馬の飼料にする草。かいば。
【飼葉(かいば)】牛馬のえさとして与える草や藁(わら)・穀類など。まぐさ。
【入会地(いりあいち)】入会権が設定されている地域。
【入会(いりあい)】一定地域の住民が、慣習的な権利によって特定の山林・原野・漁場の薪材・緑肥・魚貝などを採取することを目的に共同で使用すること。


安徳天皇の御宇、寿永元年(一一八二)に坂東平氏の一派である畠山次郎重忠公が菅谷城を築城するに当たり、鬼門除けとして当社は奉斎された。主祭神である衝立久那止(船戸)神は、神代の昔、伊邪那岐命が、妻伊邪那美命を黄泉国に訪ねた後、築紫の日向の橘の小門の阿波岐原に禊祓い給いし時に投げ捨てる御杖よりなる。この神は、国の四方家門に塞がりて諸々の枉神をおさえる御利益がある、と説く。当社は、近在の村々をはじめ比企郡中に知られる名社で「菅谷の鬼神様」と親しまれ、日ごと参詣者の絶えたことがない。
(Resource:「埼玉の神社」埼玉県神社庁)


歴史にしっかりと裏付けされた由緒もいいですが、こんな由緒もまた楽しいですね・・・・。
鬼鎮様(きぢんさま)
 昔々のお話です。
 川島に、刀を造る鍛冶屋さんが住んでおりました。朝から晩までトンテンカン、トンテンカンと刀を造っていました。とても立派な刀が出来るので、評判がよくなり大勢の侍たちが買いに来るようになりました。
 ある日、若い男がやって来ました。「僕、刀が造りたいのです。教えてください。」と鍛冶屋さんに頼みました。鍛冶屋さんも弟子を持ちたいと思っていた時ですから「よしよし。」と承知しました。
 若い男はとても熱心で、休み時間も休まずに、夜も遅くまで一生懸命、刀造りをするのでよい刀が出来るようになりました。何年か過ぎた時は、もう立派な刀鍛冶になりました。
 この鍛冶屋のお家には、美しい女の子がおりました。だんだん大きくなって立派な娘さんになりました。若い男は、鍛冶屋の主人にその娘さんを僕のお嫁さんにくださいと頼みました。主人は少し考えて「それでは、ひと晩に刀を百本造ったらあげよう。」と言いました。若い男は喜んで、いろいろ準備して約束の日を待ちました。
刀を造る鬼|挿絵 約束の夜になりました。トンテンカン、トンテンカンと刀を造る音が休みなしに響いてきます。みるみるうちに、三本、五本と出来ていきます。夜も遅くなりました。主人は心配してそっと鍛冶場をのぞきました。出来ました、出来ました、出来たばかりの刀が山のように積まれていました。けれども驚いたことには、刀を造っている若い男はいつもの男ではありません。まるで鬼です。トンテンカン、トンテンカンと打つ槌も火を散らしてその辺は火の海です。するどい眼、頭には角まで生えております。何本かの手は次々に出来た刀を積んでいます。主人は「アッ」と飛び出しました。そして、あの男にかわいい娘をくれられない、それには、にわとりを鳴かせて早く夜が明けなくてはと考えて、大急ぎで鳥小屋へ走りました。「ココケッコー」にわとりが鳴きました。
 主人は、またのぞきに行きました。鬼になった男は、まだまだ刀を造っています。けれどそのうちに東の空が明るくなって夜が明けてきました。
 刀は九十九本出来ていました。鬼の男は、槌(つち)を握ったまま倒れています。側へ寄って見ると死んでいました。主人は涙がとめどもなく流れてきました。亡くなった男を抱きあげて外へ出ました。そして庭の隅へ埋めて、『鬼鎮様』というお宮を造りました。
 それから、長い年月がたちました。菅谷村へ畠山重忠の館が建ちました。そしてこの川島の地が鬼門にあたるというので、信心深い重忠は、鬼鎮神社という立派なお宮を造り、今、日本にただ一つの鬼鎮様として各地から参拝する人が絶えない状況です。
『嵐山町の伝説』嵐山町教育委員会編

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