いわき民話さんぽ

福島県いわき市に古くから伝えられてきた昔話や伝説を取り上げ、紹介し、あれやこれやと考えを巡らせてみたいと思います。

明神様の化物   『永井の昔ばなし』から

2012年02月02日 | Weblog
昭和の終わり頃、
いわき市三和町永井の人たちが
地域の昔話を集め、
『永井の昔ばなし』という1冊の本を作りました。
とても素晴らしい内容の本です。

今回は、
その中に収められた「明神様の化物」という話を紹介します。

 明神様の化物

 上永井のはずれ、高戸に、
杉の木立に囲まれた小さな明神さまの社があります。
 今でこそ県道が、その近くを通るようになりましたので、
高台とは云えなくなりましたが、
昔は道が川にそってついていましたので、
このあたりはこんもりと繁った丘になっていました。
 高戸の人々は明神様を中心に仲よく暮していました。
人々はそりゃ信心深くて、
月の十五日には、どんなに忙しい時期でも仕事を休んでおまいりし、
又、「初物」といって、その年初めてとれた作物や、
めずらしい物などは、明神様に供えてからでなければ
決して食べませんでした。
 そんな風でしたから、「明神様の道」とよばれる細い道は
内の近道で何かと便利な道でしたが、
不幸のあった時や、葬式の出入りや、赤ん坊が生れて七日の間は、
そこは通れないことになっていました。
 ところが、となり村から引っこして来た大工の家のバアさまは
そんなことはとんとおかまいなしで、
の人が供えた物はとって食べてしまうし、
十五日には、皆でなんぼすすめても、お参りもしませんでした。
 さて、ある夏の夕暮れのことでした。
の年寄りが死んで、とむらいの手伝いに行くことになりました。
皆は明神様の道は通らないのに、大工の家のバアさまは、
「バカバカしい」
と一人でそこを通って行きました。
すると、今までサヤサヤとやさしい音をさせていたしめ杉が、
ピターとなりをしずめたかと思うと、
モウソウ竹が、一せいに生物のようにざわめき出しました。
気の強いバアさまも、背すじが、ザワーッと冷水をかけられたようになって、
一歩も動けなくなってしまいました。
次のしゅんかん、しめ杉の上から身の丈が、
並の男のニ増倍もある太夫さまが下りて来て、
大手を広げてバアさまの前に立ちふさがりました。
さすがのバアさまも、目ん玉ひんむいて、ひっくり返ってしまい
心配してもどって来た人達に助けられたときには、
腰がぬけていざっていたそうです。
 それからは、バアさまも皆と同じように、
明神様を拝むようになりました。


■いわき市三和町永井の昔話を収録した『永井の昔ばなし』という本が
発行されました。
新書判で、1冊840円(税込み)です。

ご購入を希望される方は
次まで、はがきで、お申し込みください。

平電子印刷所
〒970-8024
福島県いわき市平北白土字西ノ内13

注文をされる方のお名前、ご住所、電話番号と、
本の名前(『永井の昔ばなし』)と
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ご記入の上、
はがきでお申し込みください。

なお、本の代金のほかに
送料160円がかかりますので
よろしくお願いいたします。 

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