268 ◆tKFpP5znIw ブログ

いや。その。まあ、あれですよ。あれ。ブログっていう奴ですよ。

むなぐるま氏と町山氏の会話に寄せて

2004-11-19 13:16:06 | 批評 時評 与太話
切込隊長さんのブログのこの記事を読んで、むなぐるま氏と町山氏の間で
面白い会話がなされていたので、それを読んでの、私なりの感想

むなぐるま氏のこの記事で、氏は、
町山氏の 「2004-10-29 ブッシュが勝つかもしれない理由その3」への返答を行っておられます。

町山氏の主張は、要約すると、こんな感じです。

1。国民の4割が福音派キリスト教徒のブッシュ支持者であり、この支持基盤は強固で揺ぎ無い。
2。レーガン時代に実質的に彼らに共和党を乗っ取られた。ブッシュは福音派に改宗して
彼らの支持を確固たるものにした。
3。福音派は福音派の新聞を読み、福音派専用のニュース・チャンネルしか見ないし、
福音派専用のラジオしか聴かない。

∴こんな創価学会みたいな奴らに支持されているブッシュは、勝って当然である。と。

それへのむなぐるま氏の反論は、氏の文章の劈頭の、この一文、

アメリカ「国民の4割」が「日本の創価学会以上」の投票動員率を持つ、
「どうにも動かせない」「宗教キチガイども」と読めますが、違いますか?



有権者がブッシュ氏支持に回ったのは宗教だけではありません。また、
ドブ板選挙的な選挙戦術の優劣も分析しなければいけないでしょう。

に、尽きるんでしょう。

その後、両氏の対話は、コメントへと続いて行きます。 ここで、両氏のダイアログ
すべてを引用するのは繁雑に過ぎると思いますので、避けます。是非みなさん、
上記リンクをたどって両氏のダイアログをご確認ください。

で、私の感想。

まずもって、事実関係の整理。 町山氏が挙げられる「国民の4割が福音派キリスト教徒」
という数字は、ちょっと検証の余地があるとおもわれます。
(手元にある、“Yearbook of American and Canadian Churches"の数字を、向こうの
コメントに挙げておきます)

また、町山氏の主張全体を通して言えることですが、町山氏が驚き、嘆き悲しんで居られる
ポイントそのものが、「驚いたり、嘆き悲しんだりしてもしかたないこと」のような
気がしてならないのです。 例えば、町山氏が、コメントとして寄せられているこの文面

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また、ハロウィンの時、近所のオバケ屋敷に行ったら、そこはボーンアゲインがや
ってたオバケ屋敷で、人形を使って、ゲイや中絶をした人が地獄で責め苦にあう
パノラマを子供に見せていました。

ハワード・スターンのラジオは住民のボイコットで放送中止に追い込まれただけで
なく、その放送をしていた局(オルタナティブ・ロック専門局)が閉鎖に追い込
まれ、パンクやグランジが一切流れなくなりました。
その番組は地域で最も聴取率が高い番組だったにもかかわらずです。
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これなんて、福音派を持ち出すまでもなく、「まさにアメリカ」って感じでしかないよ
うなきがしてならないんです。 ビートルズがアメリカに上陸した際、アメリカでは一時期
ビートルズのレコードの「焚書」が流行りました。公民権運動はなやかりしころなんて、
ハロウィンの出し物といえば、白人公民権運動家が地獄の責め苦にあえぐもの と相場が
決まってました。(そして、こういう動きをなんだかんだと言って報道したがるメディアが
日本の「チマチョゴリ切り裂き事件」を報道したがるメディアが常に同系列であるのと
同じく、常に同系列であったりしますw)

こういうマスヒステリーは、アメリカの歴史を通じて、事ある毎に出てきます。
一番有名なのは、禁酒法でしょうし、黄禍論もどきの日系移民排斥運動もそうですし、
それによくよく考えると、元はといえば東部の保護貿易VS南部の自由貿易という経済論争
でしかなかった論争が、奴隷制という焦点に移行したとたん、国論が沸騰し、内戦にまで
いっちゃった国なわけです。

つまり、今回の選挙の結果を受けて、いろんな人々が「宗教右派の勢力拡大」を指摘されて
いますが、よくよく考えると、選挙戦の争点に倫理問題が浮上し、それに対して
ヒステリーとも言えるような反応を示す人間が大勢い出たっていうのは、「宗教右派の拡大」
というよりも、「アメリカ特有のマスヒステリーのあり方」であるような気がしてならない
のです。

カールローブの辣腕は、福音派なりなんなりをがっちりと支持基盤に組み込んだという
点にあるのではなく、老獪なまでに、アメリカの通弊たるマスヒステリーをコントロール
した点にあると言えるのではないでしょうか。(この点において、民主党側は見事な
までに、大枠の戦略フェーズで失敗してしまいました)

と、思うと、注意しなければならないのは、アメリカと言う国で、「福音派」でも
なんでもいいですが、「とんでもない価値観の人間が国政を左右している」という点ではな
く、「我々がつきあっているアメリカという国は、時として、そういうヒステリーを
起こす国なのだ」と言う点ではないかと思うのです。

こういった通弊を、前提としてから、選挙分析なりをしなければ、全ては空虚になって
しまうような気がしてなりません。

散々2chで書いていることですが、とかく我々がアメリカの選挙分析をする時は
「ネオコンが」とか「キリスト教右派が」とか、ベーグな言葉をもってきて
全ての疑問を解く鍵にしてしまいがちです。これでは、シルバーボレットを
探すのが大好きな、マスヒステリー下のアメリカ人と変わりありません。

シルバーボレットを探すのを止めて、冷静に現実を直視した分析を施すという
ことこそ、我々「所詮第三者」の外国人の出来ることだと思います。

7 コメント

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ビックリ! (u-1)
2004-11-19 14:39:33
ここも拝見させていただきました。



私は政治にはうといので、ビックリしました!!

アメリカでは、選挙と宗教が密接なんですね。オームみたいで怖いですzo--w.
Unknown (Unknown)
2004-11-19 17:58:04
いや、だから──ま、もちつけ。
Unknown (Unknown)
2004-11-19 20:32:18
↑もしかしておーむっけえ。
Unknown (268)
2004-11-19 21:52:15
いや、そうでなくてね。。。



アメリカでも日本でも、ポリティカルアクティブ

な宗教勢力があるのは、確かです。公明党でも

そうでしょ?



しかしながら、それだけを取り上げて

全ての疑問を解こうとするのは、勇み足では

ないか、ということで、「おちつけ」と

いうことです。
町山さんについて (初心者)
2004-11-20 06:50:35
町山さんのアメリカものは、

「不思議の国ニッポン」とか

「ショッキング・アジア」とか

と同様に受容すればいいのではないですかね。

今回は本気でケリーに勝って欲しかったみたいで、敗けたショックも大きかったようですけど。

ムーアを全面支持してしまうのが、

いつもの町山さんらしくないな、と

ファンとしては思ったりしてしまいました。

Unknown (268)
2004-11-21 18:48:47
>>初心者さん



なるほど、町山さんってのは、そうやって

読んどくもんなんですね。

しかし、いろんなブログよんでると

かなり引用されてるもんですから、

平気でこの人の話が定説化してんのかなと危惧

しちゃいました。
なるほど。 (kudoking)
2004-11-23 21:08:07
面白かったです。ありがとう御座います。

カールローブの功績はマスヒステリーのコントロールにある、というのは面白いですね。民主党の戦略の失敗については、2chの方にもう書かれているのですか?