その教師はＫ見という男性教諭だった。
年齢は、あの当時で３０代後半か４０代前半くらいだっただろうか。
今から４０年前のことです。
以前から怖い先生とは聞いていたＫ見教諭でした。
一方で指導熱心な先生とも。
この先生の担任だけは逃れたかったのだが・・・・。
５年１組 Ｋ見のクラスになってしまった。
そして間もなく、この男の本当の怖さを体験することになった。
朝、ガラッとドアを開けて教室に入って来た時から分かる
この男の機嫌が良いか悪いかが。
目がギョロッと大きく、鷲鼻、こめかみに浮き出た血管
眉間のシワ、短く刈り上げた髪型
ポロシャツから出た腕の浮き出た血管
小柄な男だったが、アイツの顔だけは未だに忘れない・・・いや、忘れられない。
機嫌の良い日は終始穏やかでにこやか、冗談を言いながら授業をする。
ところが機嫌の悪い日は本当に地獄だった。
何かにつけ怒る材料を探し始めるＫ見。
宿題を忘れた男子生徒などいようものなら
激しくしかり飛ばし、挙句に叩く。
Ｍ里君という男子がいたのだが
彼は最もターゲットにされていた。
時には体が吹っ飛ぶほどの体罰。
小学生が大人に突き飛ばされれば、そりゃ吹っ飛びます。
彼の家は少し貧しかった。
母子家庭と記憶している。
彼が餌食となる日は、かなり激しい体罰で見ていて本当に怖くて辛かった。
もう一人Ｋ藤君も激しく体罰を受ける男子生徒だった。
彼は少し学習障害があった。
勉強にも付いていけてない状態だった。
そんな彼をＫ見教諭は執拗に叱り飛ばしたり体罰を与えた。
もちろん彼らだけではなかった。
体罰は主に男子だったが
言葉での体罰は女子にも向けられた。
もちろん、私にも。
ある時、教室に飾っていた花瓶の花を抜くと
水に浸かっていた部分がヌメっていた。
それを、私のせいだと責められた。
当時、私は母と共に生け花を習っていたのだが
「〇〇(私の旧姓)は、生け花を習ってるのに、こんなこともできないのか！」と。
私はそれ以来、授業中はできるだけ目立たないように
Ｋ見と目が合わないように
ひっそりと座って授業を受けた。
やがて私は、怖くて学校へ行けなくなった。
夜も眠れなくなり
布団を被っては声を殺して泣いた。
朝になると、何かと具合が悪いとウソをつき休むようになった。
ある日、父親になぜ学校へ行きたくないのかと問い詰められた。
私は涙ながらに正直に父親に話した・・・「先生が、怖いねん。」と。
父はそれを聞いて、どんな風にこわいのかと尋ねてきた。
私は教室でのＫ見による体罰の地獄絵図を話し始めた。
それを聞いた父は激怒し、学校へ乗り込んでくれた。
母と、当時、私と同じく不登校になっていた友人のお母さんも同行。
Ｋ見の発言の一部始終を録音するため
手提げバッグにテープレコーダーを仕込んで。
４０年前のテープレコーダーはかなり大きい物で
テープが切れた時にカチャッと音が鳴り
母たちは慌てて咳をしてごまかしたと言っていた。
Ｋ見は、どういうつもりで体罰をしているのかと
机を叩いて激しく抗議する父にタジタジになり
受け答えもしどろもどろになったと言う。
帰りに、親が来たことで子どもに"仕返し"など絶対しないように釘を刺したと言う。
そんな姑息なこともしかねない教師だったからだ。
と言うのも、私が花瓶の花のことで責められたのも
実はこの以前に、抗議に同行した友人の母親が電話での抗議をしており
その際に私の名前も出して
体罰を怖がっているのは自分の娘だけではないことをＫ見に話していたからだった。
この男は本当に性根が腐っていた。
後日、我が家はクラスの保護者でいっぱいになった。
５年６年は担任もクラスも組替えも無く持ちあがりだったことに対して
クラス替えをしてもらうように学校へ抗議するためだった。
ほとんどの保護者が賛同したが
中にはＫ見の仕返しを恐れ同調しない家庭もあったようだ。
母子家庭だったＭ里君
学習障害のあったＫ藤君の親御さんは参加しなかった。
ほどなくクラス替えがあり
私は女性教諭で優しく生徒想いの良い先生のクラスになった。
Ｋ見は、その後どうなったのか覚えていない。
後から聞いた話では
Ｋ見の妻は当時、入院していて
家庭には娘とＫ見だけ。
家事はＫ見がしていたらしい。
仕事と家事に疲れ苛立ち
体罰は、そのストレスからではなかったのかとも。
それにしても、どんな事情があったにせよ
ストレス発散の標的にされた児童の私たちはたまったものじゃない！
４０年経った今でも小学校５年生の時の恐怖は忘れられない。
５１年の私の人生の中で
一番嫌いな人物がこのＫ見教諭だ。
もし今、あの鬼畜教師Ｋ見にどこかで会うことがあったら・・・
聞いてみたい
「あなたにとって教師ってなんだったんですか？」と。
だから体罰は許せない！
体罰は暴力以外のなにものでもない！
体罰を受けた生徒にも、それを見ている生徒にも
心の傷は一生残る！
先生、体罰という名目で生徒にこぶしを上げるのは止めてください！
