九州2日目、
宿に着く前に高千穂峡に寄りました。
神話によれば天村雲命という神様が天孫降臨の際に、この地に水がなかったので水種を移し、これが天真名井として湧水し、滝となって流れ落ちているといわれています。

こちらの高千穂峡の川幅が狭まった部分に流れ落ちる滝を、真名井の滝といいます。
日本の滝百選の一つのようです。

この水の流れに癒されます。
そして、この日泊まることにした椎葉村は、宮崎県の秘境地にあり、旅館は平家の落人伝説の残る素敵なところでした。
少し悲しげなお話でもありますが、日本版ロミオとジュリエットのようなそんな感じです。
およそ800年前、壇ノ浦の合戦に敗れた平家の武士たち。追っ手を逃れて、各地のふところの深い山奥へ。
古文書「椎葉山由来記」は次のように伝えています。
道なき道を逃げ、平家の残党がようやくたどりついたのが山深き椎葉だった。
しかし、この隠れ里も源氏の総大将頼朝に知れ、那須与一宗高が追討に向かうよう命令される。
が、病気のため、代わって弟の那須大八郎宗久が追討の命を・・・

こうして椎葉に向かった大八郎、険しい道を越え、やっとのことで隠れ住んでいた落人を発見。
だが、かつての栄華もよそに、ひっそりと農耕をやりながら暮らす平家一門の姿を見て、哀れに思い追討を断念。幕府には討伐を果たした旨を報告した。

普通ならここで鎌倉に戻るところだろうが、大八郎は屋敷を構え、この地にとどまったのです。
そればかりか、平家の守り神である厳島神社を建てたり、農耕の法を教えるなど彼らを助け、協力し合いながら暮らしたという。
やがて、平清盛の末裔である鶴富姫との出会いが待っていました。・・・

いつしか姫と大八郎にはロマンスが芽生えました。
「ひえつき節」にもあるように、姫の屋敷の山椒の木に鈴をかけ、その音を合図に逢瀬を重ねるような・・・

庭の山椒の木鳴る鈴かけて
鈴の鳴るときゃ出ておじゃれ
鈴の鳴るときゃ何というて出ましょ
駒に水くりょというて出ましょ

大八郎は永住の決心を固め、村中から祝福されます。
ところが、やがて幕府から、「すぐに兵をまとめて帰れ」という命令が届き、夢ははかな・・・

和様平家の公達流れ
おどま追討の那須の末よ
那須の大八鶴富おいて
椎葉立つときゃ目に涙よ

このとき鶴富姫はすでに身ごもっていました。
しかし、仇敵平家の姫を連れていくわけにもいかず、分かれの印に名刀<天国丸>を与え、「生まれた子が男子ならわが故郷下野(しもつけ)の国へ、女ならこの地で育てよ。」と言い残し、後ろ髪を引かれる思いで椎葉を後にするのです。
生まれたのはかわいい女の子。
姫は大八郎の面影を抱きながらいつくしみ育てました。後に、婿を迎え、那須下野守と愛する人の名前を名乗らせたそうです

それにしても、なぜ大八郎は平家の落人を発見したとき、すぐさま討伐しなかったのでしょうか。
それほど哀れな姿に映ったのでしょうか。
それだけならとどまることなく黙って引き返してもよかったはずです。
椎葉に魅せられた作家の一人、吉川英治が「新・平家物語」の中で、椎葉をこの世の理想郷として描いているのが、ひとつの答かもしれません。

敵も味方もない。富も権力も意味を持たない。
戦い、憎しみ合ってきた源氏と平氏の間に美しい恋さえ芽生える・・・
人間はなぜ争うのか?という問いの答を、椎葉での鶴富姫と那須大八郎の物語から学んでみようではありませんか・・・
一般社団法人椎葉村観光協会
平家落人伝説より

鶴富屋敷より歩いてすぐの所に、平家の守護神である椎葉厳島神社がありました。

立派な神社で相撲をとるところもありました。

御祭神は市杵島姫命と素戔嗚命です。

朱塗りの立派な拝殿です。
平家の姫を愛した源氏の武将・那須大八郎が、椎葉山中での平家一族の暮らしを哀れんで建立した神社です。
社殿は小高い丘に位置し、村の中心部を一望することができます。
水の神様とされる市杵島姫命。
市杵島姫命は平清盛の建立した広島の厳島神社で祀られている宗像三女神の一人です。
平清盛の末裔が鶴富姫。
椎葉厳島神社は広島県・宮島の厳島神社の方角を向いて建てられたのだそうです。
椎葉村の厳島神社は、平家の落人のために源氏の総大将が建てた神社🥹
市杵島姫は、弁財天と同一視されることから財富・芸事の神様としても祀られます。
平家の落人伝説、こちらに泊まらなければ知る事もなかったお話。
鶴富姫は娘を産み、離れ離れになった那須大八郎を愛し続けたんでしょうね。
生まれた子供が男の子なら引き取る、女の子なら連れて来るに及ばすと言ったとか。。。
こんな山奥の人里離れた村で、およそ900年も昔、愛する人の子供を産み、大切に娘さんを育てたんですね。
そして、その子孫は脈々と今に続いていて、椎葉村の村民の約30%が「椎葉」さん、次いで第2位は「那須」さんで、村民の約20%なんですって。。
那須大八郎も我が娘に会いたかったでしょうが、その愛ある行動の痕跡は、今もなおこの地にとどまっています。
何だか、悲しいけど美しいお話ですね🥹。