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斉東野人の斉東野語 「コトノハとりっく」

野蛮人(=斉東野人)による珍論奇説(=斉東野語)。コトノハ(言葉)に潜(ひそ)むトリックを覗(のぞ)いてみました。

断想片々(22) 【陰謀論】

2020年12月02日 | 言葉
 「陰謀論」というコトバを頻繁に耳にするようになった。1人ないし少数者の考えた筋書き通りに世の中が動いている--とする「陰謀論」。背景にネットへの盛んな匿名投稿があり、根拠の無い、あるいは根拠の薄い「陰謀」でさえ広まりやすい社会構造がある。11月30日付け読売新聞文化面「論壇誌」欄で、5人の識者の論考を担当記者が紹介していた。

 米国では「国の機密情報だ」として偽情報をネットで広める「Q」と、これを信じる「Qアノン」という存在を紹介(渡辺靖氏、「文芸春秋」誌)。トランプ大統領支持勢力の1つを形成するという。石戸諭(さとる)氏もやはり「文芸春秋」誌で、「中国『千人計画』が実は軍事研究で、日本学術会議が積極的に関わっている」とするデマ情報について考察した。石戸氏は「日本の安全保障を不安視するなら、研究者が中国を頼らざるを得ない現状をこそ、問題視すべきだ」と主張。日本の学術予算は少なくなる一方とあって、頭脳流出先も米国から中国へ変わりそうなご時世。「中国で軍事研究」のデマ情報は政権にとれば、学術会議から「10億円」の予算を削るための、好材料かもしれない。

 偽情報を信じる側と、「それはデマ、陰謀だ」と退ける側。デマや陰謀の横行暗躍する一番の原因は、政権やメディアの説明不足、説明下手(べた)だろう。疑問の余地が無いほど説明し尽されて、状況が明快であれば、陰謀やデマが大手を振るう余地も無くなる。ところが現代は真実が見えにくいために、揣摩臆測(しまおくそく)が世にあふれ、人々は不安に駆られつつ「陰謀」の2文字でツジツマ合わせを試みる。「陰謀」をたくらむ側にとっても、これほど好条件の時代はない。
 コロナ禍の不安、学術会議問題、ぶり返した「桜を見る会」疑惑・・。政権はモノゴトを、きっちり説明しておくべきだ。やはり、あの人の、顔が浮かぶ。

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