コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

「工程表」が出てきた

2009-08-03 | Weblog
大統領選挙が、今年の11月29日に行われる。5月に、バグボ大統領がそう発表した。そして、6月末には身分登録作業が締め切られ、650万人が登録を終えた。ところが、それ以来、なんだかさっぱり音沙汰がない。動いているのかいないのか、7月に入って夏休みの季節になったとはいえ、いったいどうなったのだろう、と各国外交官たちは皆やきもきしている。昨年は11月末に予定しながら、やっぱり出来ませんでした、と延期してしまった「前科」があるから、今年もどうなるのか、大いに心配がある。

大統領選挙が、いつどうやって行われる予定なのか。そういう話は、普通の国だと純粋に内政問題なのだが、ことコートジボワールについては、国際問題になっている。舞台は、ニューヨークの国連安全保障理事会、コートジボワールの動静は、ここで定期的に取り上げられ、議論される。大統領選挙は、コートジボワールでの武力衝突の最終的な解決を意味するのであり、また「国連コートジボワール活動」(UNOCI)という国連平和維持活動が派遣されているからである。

7月23日に、その会合が予定されているということもあって、UNOCIのチョイ代表の周囲は騒がしかった。チョイ代表は、16日にアビジャンで記者会見を行い、大いに心配だ、と述べた。6月末に身分登録作業が終了し、650万人を越える人々が登録を終えたのは、大きな進展であった。ところが、これから11月29日の投票予定日まで、作業が順調に進むのかは全く覚束ない。いろいろやらなければいけない段階が多いのに、それをどういう日程でこなしていくのか、「工程表」が必要だ。

とくに、集まってきた身分登録の膨大なデータを、これからコンピューターで処理しなければならない。重複登録や死亡者などを排除して、選挙権のある人を確定する作業がある。ところがそのコンピューターが、ソフトの問題もあってまともに動いていない。ほんとうに所与の作業が進んでいくのか、日にちが迫りつつあるのに「工程表」が出てこないことは、大いに懸念される、とチョイ代表は、その記者会見で述べた。

ニューヨークに飛んで、安全保障理事会に臨んだチョイ代表は、23日の会合で、この懸念を繰り返して表明した。昨年も、6週間で終える予定だった身分登録作業が、結局その期間ではとても終わらず、今年の6月末まで、9カ月以上を要した。このように、各作業に技術的な問題があり得るので、11月29日に選挙が出来るのか心配だ、ともかく今になっても「工程表」が出てこないのが問題だ、そのように安保理の理事国を前にして述べた。

引き続いてコートジボワールの側から、ジェジェ国連代表が発言を行い、その後なんとその「工程表」が出てきたのである。
8月29日 「暫定選挙人名簿」の公示、翌日より異議申し立ての受付
10月8日 意義申し立ての裁定終了
10月16日 立候補締め切り、翌日より立候補資格審査開始
10月22日 「確定版の選挙人名簿」の公示
10月28日 立候補者の公示
10月30日 選挙人証の配布
11月13日 選挙活動開始
11月29日 投票日
12月19日 選挙活動開始(決選投票)
12月27日 投票日(決選)
となっている。

なんだ、「工程表」はちゃんと出来ているじゃないか。手元にあったのなら、なぜ安全保障理事会が開催される前に発表しておかなかったのか。皆から「いったいどうなっているのだ」と急かされてからでなく、その前に日にちを決めて堂々と発表していれば、格好がいいのに、これだと、まるで国際社会の圧力に屈して、渋々出してきたようだ。商売でも、督促状が来てから支払いをする人は、資金繰りが悪いのではと疑われてしまうものである。コートジボワールの話とはいえ、どうにも見た目で損をしているようで、いかにも残念である。

ともかくも、「工程表」つまり大統領選挙に向けての日程が公表された。そして、この日程が出てきたことを踏まえて、7月29日に新しい安全保障理事会決議(決議1880)が採択された。新しい決議により、UNOCIの任期は、2010年1月末まで延長されることになった。

今後は、この日程通りに作業が進んでいくことを期待しよう。まずは、今月(8月)末の「暫定選挙人名簿」の公表がすんなりと行われるかどうか。そのあたりで、チョイ代表が心配している「技術的問題」が、ほんとうにあるのか、あるいは杞憂なのかどうかが、明らかになる。ちょうど夏のバカンスの期間が終わって9月にはいるころに、大統領選挙に向けて、次の動きがあるということである。

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1 コメント

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感銘を受けました (haiho)
2009-08-04 03:15:09
先週アビジャンに到着した邦人企業の出張者です。偶然にブログに行き当たり深い洞察と読み物としても優れた表現(私ごとき僭越ですが)に惹かれて1日がかりでバックナンバー全て読ませ頂きました。反政府を取り込んだ暫定政府のもと選挙を行ったDRCでも選挙後政情不安で我々は入国できなくなってしまいました。我々はともかく問題は数々の苦難で苦しむ国民でしょう。選挙システムは仏SAGEMと聞きますが、単なる技術的問題であればまだ計画性のなさで片付けられるのですが...。 DRCでさえ7000万人の国民のなか指紋で選挙は行われました。問題は技術システムではなくやはり魂ではないかと思っていますが..。 
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