コートジボワール日誌

在コートジボワール大使・岡村善文・のブログです。
西アフリカの社会や文化を、外交官の生活の中から実況中継します。

決選投票の日が決まった

2010-11-15 | Weblog
大統領選挙の決勝投票の日取りが、11月28日に決まった。ここに至るには、少々混乱があった。

まず、10月31日の投票で第三位になって落ちたベディエ候補が、私たちに予告していたとおり、不服を申し立てた。開票の過程で、バグボ大統領の支持者たちによる大幅な不正行為や捏造があり、本来ならばベディエ候補が得るべき票が、バグボ大統領の票に行ってしまった、そうでなければ自分(ベディエ候補)が通っていた、というのである。

それと並行して、ベディエ候補の「民主党」の支持者たちが、選挙結果への不満から街に出て騒ごうとした。「民主党」の本部前の大通りは、支持者たちによって封鎖され、古タイヤなどが燃やされた。そして、ベディエ候補と選挙協力を組んでいたウワタラ候補もかけつけて、一緒にベディエ候補の不服申立てを支持したのである。

ウワタラ候補が、不服申立てをするのは、変である。第一回投票で、ウワタラ候補は第二位につけて、決選進出を決めた。その第二位の候補者が投票結果への異議に賛同するというのは、自分ではなく第三位のベディエ候補が本来は通っているべきであった、という主張になってしまう。いやいや、違うのである。ベディエ候補は、自分の票はバグボ大統領に横取りされたのであるから、自分が一位でバグボ大統領は三位という逆転になるはずだ、と主張をしているのだ。つまり、ウワタラ候補は二位で決選投票に残ることには変わりはない。

その計算では、60万票が不正行為や捏造でひっくりかえらなければならない。そんな大規模な不正など想像できないし、そんな不正行為があったら、かなり多くの人の目に明らかになるだろう。でも実際には、だいぶん注意をしていた選挙監視団にも、そのような不正行為は見つけられなかった。そういうわけで、ベディエ候補の不服申し立ては、誰の目にもかなり無理があった。

それでも、ウワタラ候補は、ベディエ候補の言い分が正しいと言わざるをえない。なぜなら、32%得票のウワタラ候補にとって、ベディエ候補の25%得票を決選投票で味方に引き込めるか否かが、決定的だからである。ベディエ候補とその支持者たちの機嫌を損ねるようなことは、決してできないのだ。

さて、バグボ大統領に対抗する2候補が、揃って投票結果に不服を申し立てたわけであるから、その処理にはさらに時間がかかるに違いない。そうすると、憲法院による選挙結果の「確定」は、ずいぶん先延ばしになるではないか。そう思っていた矢先に、憲法院が突然発表した(11月6日)。
「憲法院は、選挙管理委員会の発表した選挙結果を、確定する。」
そして、付け加えた。
「今次投票で過半数を獲得した候補がいないので、決選投票を行う。日取りは、投票結果確定から2週間後に決選投票を行うとの憲法典の規定に従い、11月21日とする。」

なんともあっさりしたものだ。野党連合の不服申立ては、いったいどこに行ったのか。憲法院は、「憲法院は、期限までには、書類による申立てを何ら受け取らなかった。」と言ってのけた。嘘だ、書類は出したはずだ。憲法院まで、欺瞞に満ちている。野党連合は、当然ながら激しく反発した。再び、「民主党」の党本部前の大通りは封鎖され、支持者たちが示威行動のために集まってきた。

ふたたび対決の雰囲気になってきたところで、憲法院は説明を出した。
「憲法の規定によれば、不服申立ての期限は、投票締切り後3日となっている。」
それで、みんなあわてて憲法典を開いたのである。「開票結果発表後3日」だとばかり思い込んでいた期限は、憲法の規定を読むとたしかに「投票締切り後3日」と書いてあった。野党連合が不服申立てを出した時、すでに期限を3日も過ぎていたということになる。これで、「」民主党の抵抗も萎えてしまった。

一方、決選投票の日取りとして、みんなが想定していた11月28日ではなく、11月21日と1週間も前倒しになった。これを聞いて、選挙管理委員会は焦って言った。
「それは無理だ。」
なぜなら、決選投票のための公式印刷物、投票用紙や結果記入の開票調書などを準備しなければならない。それがとても間に合わない。各投票所までの輸送の手順を考えると、11月21に決選投票を行うためには、11月13日には、アビジャンですべての印刷物が刷り上がっていなければいけない。あと1週間の間に、印刷を全て仕上げるのはとても無理だという。

それで、ソロ首相はただちに政令を出して、決選投票はやはり11月28日とする、と定めた。それでは、「第一回投票の開票結果確定から2週間で決選投票を行う」と書いてある憲法の規定に反するではないか。でも、できないものはできない。現実の方が優先する。野党の不服申立てには、「投票終了後3日」という憲法典の規定を厳格に守った憲法院も、決選投票について「結果確定から2週間」という、もう一つの憲法典の規定については、あっさり譲った。

それにしても、「民主党」はお粗末だった。大統領選挙という大勝負のときに、憲法の規定さえちゃんと読んでいなかった。党員たちは、せっかく振り上げた拳を、下ろしようがなくなってしまった。いったい党に法律顧問はちゃんといたのだろうか。この国で一番伝統のある政党だけれど、やっぱりコートジボワール流の、詰めの甘さがある。

そして、それにしても憲法院。決選投票の日取りを、首相府や選挙管理委員会などと一切相談せずに、一方的に発表した。日本だったらそんなことはありえない。ちゃんと根回しをして、四方八方大丈夫なことを確かめてから、発表にまで至る。しかし、こちらでは政府部内の各機関が、てんでばらばらに仕事をしている。これもまた、コートジボワール流である。

ともあれ、決選投票は11月28日と決定した。今度の選挙は、バグボ大統領とウワタラ候補との一騎打ちである。選挙運動期間は、投票日に先立つ1週間、つまり11月20日から始まる。いよいよ、コートジボワールの大統領選挙は、大詰めを迎える。

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