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漂う「仕掛け」のにおい…疑惑だらけの高値つかみ
2011.10.28 07:28
「オリンパス株式会社御中 株式会社アルティス 株主価値算定報告書 2008年2月29日」と表紙に書かれた内部資料が手元にある。横書きA4サイズで計14枚。オリンパスが、医療関連の産業廃棄を手がけるベンチャー企業アルティスを08年までに288億円で買収した際に用いた企業価値算定書、つまり買収価格見積書だ。(フジサンケイビジネスアイ)
オリンパスはM&Aを経営の中核に据えていた。06年5月から08年4月にかけてアルティスなど国内ベンチャー3社を計734億円で買収したが、オリンパスは買収完了後1年もたたないうちに、買収支払いの75%に相当する556億円を減損処理した。解任された元社長が追及した不透明な資金の流れ・会計処理の代表格である。
で、アルティスだが、買収後に減損処理した額は196億円と簿価の約7割に相当する。いかに高値つかみしたか分かる。
高山修一・新社長は「医療の総合メーカーを目指す」とM&A戦略を弁解の材料に用いる。が、算定報告書の出来具合を見る限り、日本を代表する精密機器会社が第三者機関に依頼したにしては「大胆すぎる」中身なのだ。
まずは基本となる計算手法。算定書では将来のキャッシュ・フロー(現金収支)を割引率を用いて現在価値に引き直す「DCF法」だけを用いている。300億円にも達する規模の案件なら、仮にベンチャー企業とはいえ、通常なら類似会社の取引比較、純資産や利益を用いた倍率などさまざまな算定手法を並行的に用いるのだが。
ターミナル・バリュー(継続企業価値)の算定では、通常なら複数の類似企業を参考にするところ、1社だけを引用している。プロの見積書としては物足りない。「コア事業である医療事業とのシナジーを狙った」とオリンパス側は説明するが、相乗効果の価値についても触れていない。学生の答案なら、Bマイナスのレベルだろう。
極めつきは事業計画書だ。08~12年度を予想しており、売り上げの増加率は年135%(複利)。尋常でない伸びだが、成長の源泉となる技術や資産の評価には触れていない。12年度に急に運転資本が減少に転じたり、ターミナル・バリューを求める際に税引き後でなく税前利益を使ったり。DCFの見積もりが大きくなるような「仕掛け」のにおいが漂ってくる。
筆者が計算したところ、算定書の買収価格は12年以降に年率で17%成長し続けるのと同等の価値算定となっている。そこまでバラ色の計画書なら、なぜ1年で大半を減損したのか、ということになる。「違法もしくは不正な点があったという事実はない」と主張するのなら、どうぞ。ならば、逆に「経営陣の能力が相当低かった」と善管注意義務の未達を認めたことになる。(産経新聞ニューヨーク駐在編集委員・松浦肇)
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/111028/biz11102807370004-n1.htm
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オリンパス
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