税理士法人 税の西田 税金Q&A

日々の暮らしに役立つ税金の知識をQ&A形式で紹介します。

家業の青色事業専従者はどのように承継すべきか

2018-10-17 14:09:48 | 所得税
Q.質問
 施設野菜の栽培と不動産貸付事業を営んでいた父が今年の8月に亡くなりました。 相続人全員による遺産分割協議が整い、長男の私が家業の承継者として必要な財産を引き継いで事業を開始しました。引き続き母と妹が私の事業に従事してくれることになりました。そこで、農業と不動産貸付の事業を初めて開始したとき、今年から青色申告者になろうとするとき、母や妹を青色事業専従者として給与を支払う場合に何か手続きが必要ですか。誰でも青色事業専従者になれますか。将来、私の所得が基礎控除額以下になったときは専従者の扶養親族になることができますか。仕事が暇なときに母や長女はパ-トとして他で働いても差しつかえありませんか。

A.回答
・事業を承継した場合の税務
 相続が始まると相続人は相続財産を調べたり遺産分割の協議に時間をとられ、事業承継に伴う税の手続きを失念しがちです。所得税では被相続人の廃業届、後継者の開業届は1ケ月以内に、開業に伴う青色申告承認申請は相続が始まった日の翌日から4ケ月以内に、青色事業専従者に関する届出は事業専従者がいることとなった時から2ケ月以内に、源泉徴収税額の納期の特例の申請、必要に応じて消費税の課税事業者届出書等を提出します。

・事業を承継するには
 父が営んでいた事業は相続が開始した時に相続人全員が法定相続分にしたがって承継していることから、遺言がなければ遺産分割協議を経て承継すべき者と必要な財産を特定しなけれはなりません。相続開始の日の翌日から4ケ月以内に承継者が決まらないと相続開始年の後継者の所得税は白色申告ということになり、青色事業専従者給与などの特例を受けられません。そこで、家業を承継する予定者は期限内に青色申告承認申請書を提出しておき、事業開始の日から2ケ月以内に青色事業専従者給与に関する届出書を提出することをおすすめします。

・親族間の所得計算のしくみ
 所得税では、事業者と生計を一にする配偶者その他の親族が、その事業者の営む事業に従事したことその他の事由により対価の授受があっても、受け取った金額を配偶者等の所得にしない代りに、事業者の必要経費にもしないとしています。これは親族間とくに生計を一にする家族内でのやりとりによって過度に税負担を軽減しようとする動きを封じるためのものです。

・青色事業専従者給与の特例
 その反面、青色申告の普及を奨励するために青色事業専従者給与の必要経費算入を特例として認めています。青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族が専らその事業に従事していることなどを条件に、専従者給与等の額が仕事の内容などから相当と認められる場合は、農業所得や不動産所得の金額の計算上必要経費にするというものです。

・青色事業専従者になるには
 青色事業専従者になれる生計を一にする親族の年齢は、その年12月31日の現況で15才以上であること、その年を通じて6ケ月を超えて従事すること、その事業が年の途中における開業・廃業・休業、事業者の死亡、従事者の死亡、病気、婚姻その他の理由により事業に従事できなかった場合には、従事することが出来ると認められる期間を通じてその二分の一の期間を超えてその事業にもっぱら従事すれば足りることになっています。なお、学校の生徒・学生、他に職業を有する者(その事業にもっぱら従事することが妨げられないと認められる者を除きます)は青色事業専従者には該当しません。

・事業専従者は扶養親族になれない
 事業者の必要経費に算入される青色事業専従者給与の支払を受けている親族は、たとえ支給額が103万円以下であっても、生計を一にするいずれの親族の扶養親族や控除対象配偶者にも該当しないことになりますから留意して下さい。ところで、事業者の所得が基礎控除額以下になったときは、事業者は専従者の扶養親族になることができます。なお、青色事業専従者である長女が年の途中で結婚した場合、事業主と長女の夫とが生計を一にしていないことを条件に控除対象配偶者に該当することになります。

・パ-トとして他で働くこと
 事業専従者は、その事業に専ら従事すること、その対価が適正な額であることなどが要件になっています。専ら従事することとは、従事すべき時間内において、そのほとんどの時間を従事することであって、他に職業を持っていても従事する時間が短いなど事業に専従することを妨げられないと認められる場合は専従者に該当することにしています。文字通り農閑期等の限られた期間である場合でも作業日誌をつけるなど農閑期を明かにしておく必要があります。