税理士法人 税の西田 税金Q&A

日々の暮らしに役立つ税金の知識をQ&A形式で紹介します。

遺産分割の調停で相続税はどう変わるか

2019-02-20 18:29:59 | 相続税
Q.質問
 去年の8月に父が亡くなったので、相続人(配偶者と3人の子)が分割協議を進めていたところ、突然、裁判所から遺産分割の調停を開く旨の通知を受けました。相続税の申告期限までに遺産分割の話合いがまとまらなかった場合は、相続税の申告納税はどうなるのでしょうか。母親の相続のときはもっと争うのではないかと心配しています。これに向けてこれからどんな準備が必要ですか。

A.回答
・なぜ、相続人全員の合意が必要なのか
 相続は人の死亡によって開始し、相続が開始すると相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継することになっています。相続人が二人以上の場合はこれを法定相続分で共有することになります。まさに、遺産分割協議はこの共有物を分割することに他ならず相続人全員の協議による合意が必要なのです。

・遺産の分割を調停や裁判に委ねる
 亡くなった人の財産について、遺言書がなく死因贈与契約もない場合は、改めて遺産分割協議によって誰が承継するかを決めなければなりません。相続人間で話合いがつかず相続財産が相続人の共有のままですと不安定で不便ですから、遺産の分割を裁判所の調停や裁判に委ねる必要があります。つまり、第三者に分けてもらうということです。

・合意が得られないときの相続税の申告
 相続(遺産分割によって財産を取得すること)又は遺贈(遺言や死因贈与契約によって財産を取得すること)によって財産を取得した者は、相続の開始を知った日の翌日から10ケ月以内に相続税を申告納税しなければなりません。期限内に何を相続するかが決まらない場合でも申告納税は猶予されません。つまり、申告期限までに分割協議や調停によっても遺産を分割することができないときは、各相続人は法定相続分で財産を取得したものとして相続税を申告し納税しなければならないのです。

・未分割の場合は不利な申告納税に
 相続財産が期限内に分割されない場合は、各相続人が特定の財産を取得したことにならない訳ですから、相続又は遺贈によって財産を取得した者に認められている特例を適用する余地がなく、10ケ月以内に提出する相続税の申告書は分割した場合にくらべて不利な内容になってしまうのです。

・相続預貯金が使えない
 遺産は未分割でも、全員の合意によって預貯金だけ払いもどしを受けて納税に当てることは可能です。自己資金で納税できる相続人はこれに賛同しないことも考えられ、余裕で調停に望むことが出来ますが、相続預貯金を当てにしていた相続人は納税資金に窮することになります。

・相続税の延納を申請すると
 金銭で一括して納付することが困難な場合は、相続税を延納することができますが、延納税額が100万円を超える場合は担保が必要になります。未分割の相続財産は共有財産ですから、納税者は持分があるも、換金性がないとして延納を許可してくれません。固有の担保物件を持っていない相続人にとって厳しい納税環境を強いられることになります。調停が長引くと担保を用意できない相続人は延納申請を却下されるおそれがありますから留意して下さい。

・未分割財産は物納申請できない
 相続又は遺贈によって財産を取得した者が納付すべき相続税は、金銭で納税することが原則ですが、金銭で納税できない部分は延納することができます。延納によってもなお納税できない部分は相続によって取得した財産を物納することができます。まだ分割されていない財産はたとえ相続人の持分があっても単独で処分できないので物納することができません。なお、相続税を物納する場合は申告期限内に物納申請書を提出しなければなりません。したがって申告期限内に調停が整わない場合は物納することができないことになります。

・相続税の納税猶予は受けられない
 相続又は遺贈によって農地を取得した場合の農地の相続税の納税猶予制度は、申告期限内に取得した農地とともに農業相続人としての適格証明書が発行される見込みがなければ適用を受けることができません。この特例は申告期限後において農地を分割取得されても適用を受けることはできません。

・分割できるまで小規模宅地の評価の特例はない
 被相続人が住んでいた居宅の敷地、被相続人の事業用の建物の敷地などについては最高730㎡までの部分を80%減額できる有利な制度(小規模宅地の評価の特例)は、相続人がこれらの財産を相続又は遺贈によって取得した場合に適用されます。したがって適用対象者がこれらの土地を調停などによって取得できるまではこの特例の適用がありません。そこで、申告期限内に提出する未分割の申告書には、近い将来に分割の見込みである旨の「分割見込書」を添付して、調停成立後にこの特例の適用を受けることにします。なお、申告期限から3年以内に調停が不成立であり、さらに訴訟が提起される場合には、その時から2ケ月以内に「やむを得ない事情の申出書」を提出しておかなければ後日この特例を受けることができません。

・分割できるまで配偶者の税額軽減はない
 相続又は遺贈によって被相続人の財産を取得した配偶者が納付すべき相続税については、相続税の総額のうち、相続財産の1/2または1億6000万円のいずれか大きい金額に対応する部分は軽減されます。したがって、相続又は遺贈によって取得した財産がこれらの金額の範囲内であれば、相続税を納税する必要はありません。ただし、遺産が分割(調停が成立する)されるまではこの特例の適用を受けることが出来ません。

・これからどうする
 遺産分割の調停では、相続の本質に立ち返り共同相続人としての権利と義務を明確にして、相応の遺産を承継することが大切です。次の相続で同じ轍を踏まないためにも、生前協議を重ねて承継すべき財産と債務を特定し話合いの結果を遺言書にまとめること。申告期限までに想定される納税額に相当する共済金が支払われるよう共済に加入し受取人を指定しておくこと。各相続人ごとに特定した財産はできるだけ生前に贈与していく工夫が必要です。相続が円満であれば相続税を余計に納めないで済むわけですから、くれぐれも節税対策を優先することなく、結果としての効果を求めることが得策です。
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生前贈与があった場合は相続税にどんな影響がありますか

2018-12-20 18:25:28 | 贈与税
Q.質問
 父はかねてから家族へ計画的な生前贈与を進めていました。今年9月30日には、①自らの居宅とその敷地の一部を母に贈与したので、来年3月15日までに贈与税の申告書を提出して配偶者への居住用財産の贈与の特例(2000万円まで非課税)を受けることにしていました。ところが父は10月10日に急逝したのです。父はこのほかにも子や孫たちに贈与をしていました。②私は昨年の秋に農地の生前一括贈与(贈与税の納税猶予を選択)を受け営農に勤しんでいます。③弟は3年前に賃貸用の倉庫を相続時精算課税によって贈与を受けています。④姉は平成27年の11月に居宅を新築するにあたり、住宅取得資金の贈与を受け適法に申告しています。⑤2年前には孫達全員(4人)に各500万円の教育資金の一括贈与をしています。さらに、⑥父は母と子ども3人の相続人に各110万円の現金を昨年と今年の2回贈与しています。これらの生前贈与は父の相続においてどんな影響が考えられますか。この相続で各相続人は何んらかの財産を取得することにしています。

A.回答
・贈与税と相続税の関係
 生前贈与は相続税の軽減や相続人の自立を目指して一家団内で行われるものだけに、相続が始まる間際の贈与は相続財産減らしを意図したものが多く、相続開始前3年以内に集中する傾向にあります。そこで、贈与税は基礎控除を相続税より小さく、税率は相続税より高く、相続や遺贈によって財産を取得した相続人が相続開始前3年内に贈与を受けた財産は相続財産に加算することにしています。つまり、相続税の課税を容易に回避できないしくみなのです。

・生前贈与の効果
 ところが、誰もが長生きできる時代を迎え、相続財産が高齢者に偏っているとして、親の財産を子や孫たちへもっと移転して消費を拡大する政策が講じられたのです。一定額まで非課税で贈与できる住宅取得資金の贈与、婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用財産の贈与における二千万円の配偶者控除、二千五百万円の特別控除と20%の定率課税で贈与できる相続時精算課税制度、農地の生前一括贈与における贈与税の納税猶予制度、非上場株式等の贈与税の特例納税猶予制度、子や孫への教育資金の一括贈与、結婚・子育て資金の一括贈与など、高齢社会を反映した目的のある贈与を奨励しています。非課税・配偶者控除・特別控除・定率課税・納税猶予・納税免除など節税効果も大きく相続対策として欠かせない手段といえます。

・生前贈与が相続税に及ぼす影響
 ①配偶者へ贈与された居住用財産は特定贈与財産として相続開始年のものであっても相続開始前3年以内の贈与であっても、相続税の課税価格には加算されません。配偶者は贈与税の配偶者控除の適用を受けるために来年の3月15日までに一定の書類を添付して贈与税の申告書を提出しなければなりません。この贈与によって生前贈与した分だけ相続財産を減らしたことになります。
 ②農地の贈与税の納税猶予の特例を受けた農地については、贈与された農地を相続開始時の価額で相続財産に加算して相続税額を計算します。この場合、改めて農地の相続税の納税猶予の適用を受けることができますから、営農を続ける限り農地に対する相続税は納税を猶予されることになります。
 ③の相続時精算課税制度によって贈与を受けた倉庫については、贈与を受けた時の価額を相続財産に加算して算出した相続税額から、贈与時に納付した贈与税額を控除し、控除しきれない部分は還付を受けることができます。この場合のメリットは贈与時から相続開始時までの家賃収入が相続人へ帰属することで、相続財産をふやさない効果があることです。
 ④の住宅取得資金として姉が贈与を受けた金銭は、相続開始前3年以内のものであっても非課税財産ですから、相続財産に加算する必要はありません。この贈与によって、子どもの独立と相続財産を減らす効果がありました。
 ⑤贈与によって教育資金口座へ預けられた貯金は、受贈者が30歳になるまでは相続開始時に使い残しがあっても、相続税が課税されることはありません。
3年以内の贈与加算の必要がなく、子や孫達の教育の保障と相続財産を減らす効果がありました。
 ⑥父の財産を相続した各相続人は、昨年贈与された現金110万円と今年受けた110万円を相続財産として相続税の課税価格に加算する必要があります。つまり相続開始前3年以内の贈与は、相続財産を取得した相続人にとって節税効果は無かったと云えます。
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家業の青色事業専従者はどのように承継すべきか

2018-10-17 14:09:48 | 所得税
Q.質問
 施設野菜の栽培と不動産貸付事業を営んでいた父が今年の8月に亡くなりました。 相続人全員による遺産分割協議が整い、長男の私が家業の承継者として必要な財産を引き継いで事業を開始しました。引き続き母と妹が私の事業に従事してくれることになりました。そこで、農業と不動産貸付の事業を初めて開始したとき、今年から青色申告者になろうとするとき、母や妹を青色事業専従者として給与を支払う場合に何か手続きが必要ですか。誰でも青色事業専従者になれますか。将来、私の所得が基礎控除額以下になったときは専従者の扶養親族になることができますか。仕事が暇なときに母や長女はパ-トとして他で働いても差しつかえありませんか。

A.回答
・事業を承継した場合の税務
 相続が始まると相続人は相続財産を調べたり遺産分割の協議に時間をとられ、事業承継に伴う税の手続きを失念しがちです。所得税では被相続人の廃業届、後継者の開業届は1ケ月以内に、開業に伴う青色申告承認申請は相続が始まった日の翌日から4ケ月以内に、青色事業専従者に関する届出は事業専従者がいることとなった時から2ケ月以内に、源泉徴収税額の納期の特例の申請、必要に応じて消費税の課税事業者届出書等を提出します。

・事業を承継するには
 父が営んでいた事業は相続が開始した時に相続人全員が法定相続分にしたがって承継していることから、遺言がなければ遺産分割協議を経て承継すべき者と必要な財産を特定しなけれはなりません。相続開始の日の翌日から4ケ月以内に承継者が決まらないと相続開始年の後継者の所得税は白色申告ということになり、青色事業専従者給与などの特例を受けられません。そこで、家業を承継する予定者は期限内に青色申告承認申請書を提出しておき、事業開始の日から2ケ月以内に青色事業専従者給与に関する届出書を提出することをおすすめします。

・親族間の所得計算のしくみ
 所得税では、事業者と生計を一にする配偶者その他の親族が、その事業者の営む事業に従事したことその他の事由により対価の授受があっても、受け取った金額を配偶者等の所得にしない代りに、事業者の必要経費にもしないとしています。これは親族間とくに生計を一にする家族内でのやりとりによって過度に税負担を軽減しようとする動きを封じるためのものです。

・青色事業専従者給与の特例
 その反面、青色申告の普及を奨励するために青色事業専従者給与の必要経費算入を特例として認めています。青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族が専らその事業に従事していることなどを条件に、専従者給与等の額が仕事の内容などから相当と認められる場合は、農業所得や不動産所得の金額の計算上必要経費にするというものです。

・青色事業専従者になるには
 青色事業専従者になれる生計を一にする親族の年齢は、その年12月31日の現況で15才以上であること、その年を通じて6ケ月を超えて従事すること、その事業が年の途中における開業・廃業・休業、事業者の死亡、従事者の死亡、病気、婚姻その他の理由により事業に従事できなかった場合には、従事することが出来ると認められる期間を通じてその二分の一の期間を超えてその事業にもっぱら従事すれば足りることになっています。なお、学校の生徒・学生、他に職業を有する者(その事業にもっぱら従事することが妨げられないと認められる者を除きます)は青色事業専従者には該当しません。

・事業専従者は扶養親族になれない
 事業者の必要経費に算入される青色事業専従者給与の支払を受けている親族は、たとえ支給額が103万円以下であっても、生計を一にするいずれの親族の扶養親族や控除対象配偶者にも該当しないことになりますから留意して下さい。ところで、事業者の所得が基礎控除額以下になったときは、事業者は専従者の扶養親族になることができます。なお、青色事業専従者である長女が年の途中で結婚した場合、事業主と長女の夫とが生計を一にしていないことを条件に控除対象配偶者に該当することになります。

・パ-トとして他で働くこと
 事業専従者は、その事業に専ら従事すること、その対価が適正な額であることなどが要件になっています。専ら従事することとは、従事すべき時間内において、そのほとんどの時間を従事することであって、他に職業を持っていても従事する時間が短いなど事業に専従することを妨げられないと認められる場合は専従者に該当することにしています。文字通り農閑期等の限られた期間である場合でも作業日誌をつけるなど農閑期を明かにしておく必要があります。
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子や孫たちに遺すべき財産は何がいいのか

2018-08-31 10:09:13 | 相続税
Q.質問
 全人口に占める働く人の割合が60%を割ってしまった。これからの超高齢社会では医療や年金、税金を誰がどれだけ負担すべきなのかが明確になってきたようです。老若男女の誰もが社会の負担金を分かち合わなければならないとすれば、負担してくれる次の世代がいない我が子や孫の生活はどうなるんでしょうか。年寄りの蓄えを当てにしてきた子どもたちの生活設計はより一層親がかりになりそうです。そこで私たちの相続においては子や孫たちに何を伝え、何を遺すべきでしょうか。そのために今何をしておく必要がありますか。

A.回答
・我が家の生活設計を見直す
 働き方や生活の多様化が進むと、来年、5年後、10年後、20年後の家族の出来事を想定して必要な資金を準備する生活設計も毎年見直さなければなりません。とくに、いつ発生するか分らない相続への備えは猶予がありません。万一のとき家業をどうするのか、祭祀は誰が主宰するのか、配偶者の老後は万全かなど今から家族で話し合っておかなければ落ち着けない。

・相続財産の中身が変わる
 相続税の申告に長く携わっていると、遺産は被相続人の人生観とか家族観、相続観を反映したものになっていることがよく分ります。先祖伝来の土地と家をしっかり守り続けてきた家承継型。先々を憂い預貯金を蓄えてきた貯蓄優先型。家族のためにと生命共済に加入し、社会経済の動きを模索しながら財産を株式や債券、投資信託、金口座などへ遺産分けしやすく組み換えしてきた家族対策型。多額の債務をともない貸家経営に専念してきた相続税節税型など、いずれも謹厳実直そのものです。相続とは文字通り被相続人がやってきた仕事と生活を相い続けることなのですが、家を守るための相続から相続人の生活設計を優先した相続に変ろうとしています。つまり、次世代にとって親元に戻って家を守る必然性、家業を継ぐ経済性が希薄になってきたのです。当然、遺産は相続してもらうために組み替えておかなければなりません。とくに、次世代へ遺すべき事業用財産は子ども達の生活設計をとらえたものにならざるを得ないでしょう。

・子どもたちの本音
 親の遺産には家の安寧と子ども達の生生発展が込められているが、子どもたちは仕事と子育てに追われ、家業はおろか家を考えることさえ難しくなってきている。親元から離れて暮らす子どもたちにとって、実家の土地には興味がなく、祭祀などの煩わしさから逃れ、重い荷物は背負いたくないというのが本音のようです。とりあえず配偶者が遺産と家業を引き受けることで決着するも仮の姿である。それでいて子の生活設計は親の財産を当てにしたものが多く、当然のように金銭で法定相続分を主張されるので均分相続の定着とあいまって分割協議は一層むずかしいものになりそうです。

・子どもたちの自立は生前に見届ける
 自ら遣わず子供や孫のためにと親が貯めてきた預貯金も、貯蓄の目的が曖昧だと子供たちの蓄財のために安易に分割されてしまうのです。使い道(子どもの自立や子育て、教育などの必要資金)を指定して非課税の生前贈与を進めておくと、親は必要以上の財産を持たず相続税も余計に納めないで済むことになり意義があるかもしれません。

・相続されるべき生活用財産とは
 そうすると、配偶者の居住用財産としての100坪の土地と30坪の瀟洒な居宅、万一の時の遺族の立ち直り資金として各相続人が 500万円づつ受け取れる生命共済契約、配偶者の老後の生活資金として介護費用をも想定した2,000万円程度の金融資産。の備えで十分かもしれません。

・相続されるべき事業用財産とは
 土地は財産ですから、収益性があって換金性がなければなりません。とりあえず、土地の価額の6%以上の収入を見込める土地をめざします。調整区域の農地は農地として、市街化区域の農地は宅地として利用することが土地活用の原則であり、税負担の軽減にもなります。家を守るべき相続人の生活と祭祀費用を賄うための農業は後継者のために法人成りをして経営の安定と効率化をはかります。できれば農地は後継者に生前一括贈与をして贈与税の納税猶予の特例を受けておきます。不動産賃貸事業は、建物保有会社をつくり不動産の収益目標を確保します。

・相続に関する民法の改正
 親の財産は子の養育の過程を経て子に十分施されている。子の権利より配偶者の老後の生活を配慮した40年ぶりの改正がありました。均分相続における配偶者の財産権や生活権を明確にしたものです。現行では生活資金等を優先して取得すると居住用財産を確保できなくなる場合があるとして、新たに居住権の制度を設け終身利用できるようにしたのです。居住権を相続しない場合でも、分割協議が終わるまで又は6ケ月間の短期居住権も認められます。20年以上連れ添った配偶者からの居住用財産の非課税贈与で取得した土地建物については相続財産として持ち戻し計算を要しないことになったことから、その分他の財産を余計に貰えることになりました。
 なお、遺留分の減殺請求については金銭での引渡しを請求できるようになりました。不動産を中心に取得する相続人は遺留分相当額の金銭を用意しておかねばなりません。自筆証書遺言については、本文は自筆でなければなりませんが目録はタイプでも可能になりました。書き終わったあとは法務局へ保管を依頼できるなど高齢者への配慮がなされています。
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家族名義預貯金は相続財産ですか

2018-06-27 16:33:05 | 相続税
Q.質問
 夫が他界し遺産を整理していたところ、 家族名義の定期貯金証書が出てきました。妻である私名義のものが6千万円、長男名義のものが5千万円、二人の孫(大学生)の名義がそれぞれ3千万円でした。夫が、10年前に公共事業のための土地の譲渡で手にした資金が源資と思われますが定かではありません。これらの貯金の存在は夫から知らされていましたが、夫が全て管理していたので詳細はわかりません。相続人の名義ですから相続財産に載せなくても差し支えありませんか。それとも相続財産とすべきでしょうか。

A.回答
・名義預貯金とは
 子どもたちに預貯金を遺してやりたいが本人に手渡すと浪費してしまうのではないか。勤労意欲を削いでしまうのではないか。被相続人の名義のままだと重い相続税がかかるから減らしておきたい。などとして本来の所有者でない家族の名義で預入れ、源資の所有者が管理し続ける預貯金のことです。ただし、源資の所有者から名義人へ正しく贈与されたものであれば、実質的に受贈者の預貯金ですから名義預貯金ではありません。

・名義預貯金は誰のもの
 家族名義の預貯金であっても、名義人の収入、保有資産の状況などからその源資が名義人のものであることが明かなものは名義人の固有の財産ですから、その帰属を争う余地はありません。被相続人が自己の資金を家族名義で預入れ、利息の受取りや満期の書換などの管理をして、通帳・証書を印鑑とともに手許にしてきたものは、単に名義を借りた預貯金に過ぎず被相続人の財産そのものです。

・相続財産に計上すべきか否か
 ご質問のとおり、家族名義で預け入れた貯金の存在を知らされるも、名義人に贈与を受けた認識がなく、被相続人が自己の財産だとして管理し続けたものであれば単なる名義貯金ですから相続財産に計上すべきものと考えます。念のため、そもそも名義貯金の源資は土地代金だけなのか。預け入れの時期はいつごろだったのか。どんな管理をしてきたのか。利息はどうしていたのか、名義人との贈与契約はなかったのか。なぜ各名義人の証書の額面が均等でなかったのか。遺言書に名義貯金の帰属などを裏打ちしていないか。など丁寧に調べて名義貯金(相続財産)なのか、贈与財産なのかを特定する必要があります。

・名義貯金の性格を特定するには
 名義貯金の源資が名義人の譲渡収入や臨時収入によるものなのか。親族等から相続財産を取得したのか。永年の事業収入や給与・退職金・年金等の収入の蓄えなのか。永年の贈与によるものか。配偶者や子どもたちの固有の預貯金なのか。預け入れの時期が土地を譲渡した年で、しかも土地代金が決済された月のものか。貯金の存在を知りつつも自分の財産だとの認識がなかったのはなぜか。夫から家族に贈与をするとの話があったのか。あったとすれば、なぜ受贈者が手元で管理しなかったのか。なぜ贈与税の申告に至らなかったのか。など名義貯金の源資、家族名義貯金の動機と経緯をもとに、名義貯金が名義人固有の財産なのか、被相続人の相続財産なのかを仕分けをします。

・名義貯金の取扱と申告は
 家族名義貯金は名義人固有のものを除き被相続人の遺産ですから、相続人による遺産分割協議を経て各相続人がこれを取得することになります。生前に「上げます」「頂きます」とする贈与契約によって貯金を受贈した者は、翌年3月15日までに贈与税を申告納税しなければなりません。ところで、相続又は遺贈(遺言など)によって遺産を取得した者は、相続開始前3年以内の贈与財産を相続財産に加算する必要がありますから、贈与を受けた名義貯金については期限後であっても、必ず申告納税を済ませる必要があります。なお、贈与を受けるも、贈与税の申告期限から6年を経過すると贈与税の申告納税が不要になる場合がありますが、時効を主張するに足りる証拠を用意しておく必要がありますから留意して下さい。

・生前贈与の工夫
 名義貯金は、文字通り他人の名義にした相続財産ですから、相続対策としての効果は期待できません。毎年110万円まで無税で贈与できるもの、配偶者への居住用財産の贈与、子や孫たちへの教育資金の一括贈与、父母や祖父母から子や孫への住宅取得資金の贈与、結婚子育て資金の贈与、障害者扶養信託契約による年金の受給権の贈与などの特例は、無税で贈与できるだけでなく家族の生涯設計を実現すべきものですから、名義預貯金に優先して実行したいものです。

・名義預貯金の見直し
 相続税における名義貯金は、生前払戻金とともに公平課税の見地から税務調査の必須項目になっています。納税者は相続が始まると「相続人固有の貯金である」と主張するも、贈与の実体もなく、生前においてその存在を知らされていない場合が多いことから、相続財産として修正申告を求められる場合がありますから留意して下さい。
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