ほろ酔い日記

 佐佐木幸綱のブログです

将棋名人戦第1局・森内俊之名人・羽生善治三冠

2014年04月09日 | 日記
 4月8日 稀有な体験をした。
 将棋名人戦第一局、森内俊之名人と羽生善治三冠が対戦する部屋に入って、記録係の横に正座して観戦したのである。
 「朝日新聞」に名人戦の短歌を作って載せるためである。部屋には対戦する二人と記録係と私の四人だけ。
 大きな窓の外には、椿山荘の池の一部が見えていて、水面に桜の花びらが風でゆれていた。
 私のすぐ右前に森内名人、左前に羽生三冠。部屋は異常な静かさで、対戦者の息づかいが聞こえる。私が部屋に入って着座したとき、森内名人が私の方に顔を向けた。前の晩、前夜祭のパーティで朝日新聞の記者に連れられて、一応、挨拶を交わしていた。が、何しろ大勢の人の中である、おぼえていたかどうかは分からない。
 しばらくしてから、身を伏せるように前のめりになっていた羽生三冠が体を起こした。体をおこすときの息を吐く音が、ごく小さい音ながら、うめきともあえぎともつかないかたちで、空気を揺らした。そして、羽生三冠の眼がちらっと私の方を見た。
 将棋の名人戦とはメンタルな、クールな戦いだと思っていた。しかし、すぐそばでその空気を実感してみて、体をぶつけ合うような、肉体的戦いだと直感した。二日間、数十センチの近い距離で対座するわけだから、肉体的圧力の勝負でもあるのは当然だ。
 森内名人が、右手を出して金を取り上げ、8六金と飛車を取った。すぐ立っては悪いだろうと思い、記録係の前にあるデジタル時計を見ながら三十秒ほど待って私は立ち上がり、そっと襖を開けて外に出た。
 全くの非日常空間の空気を味わったのは、時間にして四分ほど。
 写真は、前夜祭のパーティと8日の椿山荘の庭。

               

最新の画像もっと見る

コメントを投稿