oji弁理士の日常

おじさんで中堅どころをとっくに越えてしまった弁理士の日常と非日常生活

今日見た回答書(長く、かつ読み難い、です)

2008年08月05日 | Weblog
 某社の社長、特許が取れたというので、かなりの数のコンペチタに「お知らせ」(特許を取得したこと、侵害のおそれがあること-請求の範囲を丸写し記載、適正なロイヤリティーを支払って使用して欲しいこと、の3点記載。)をお出しになった。まあ、この手紙だけで交渉しましょうと言ってくれる企業は無いだろうというソフトなもの。

 なにせ、「本件特許を適正な条件で使用して頂きたいと存じます」、「・・・日までにご見解を賜りたく、お願い申し上げます」ときた上に、差し止め、損害賠償には一切触れず、だもの。

 これに対するある社の代理人弁理士の回答書(要点のみ)

・侵害と警告され、実施契約を強要された→「強要」って、「無理に要求すること。無理やりさせようとすること」だよね。この手紙のどこが?(というほど低姿勢過ぎるお知らせなので・・・)

・(いきなり)特許の或る特徴的構成Aを備えていないから非侵害!→おいおい、せめて構成の比較ぐらいしてよ。

・「強要する戦略的行為は、特許法に疎い者を欺く悪質非道な行為であり、当社に鑑定費用等の無用な出費を強いる許し難い行為・・・謝罪を要求する」

→ハァ~????
 特許を取得しても、他社に手紙、警告書のたぐいを送る前に、そういう行為が不法行為に該当するかどうか裁判所に判断してもらわなければいけないらしい。そうしないと、「特許法に疎い者を欺く悪質非道な行為」になるらしいから(笑)

 ・・・でも、そういう「疎い」会社が、この種の手紙をもらってすぐに弁理士に相談に行くかな~?
 それに、疎かろうと、疎くなかろうと、会社を経営していたらこの種の法的なトラブルに巻き込まれるおそれがあることぐらい認識してるでしょ。

 ・・・なお、悪質非道な行為って?→悪逆無道は知っていますけど・・・「悪質、非道」な揚げ足取り。。。

・特許発明では「開口部から不如意に水が浸入してX装置が誤動作するおそれがある」から「無償でも使いたくない」そうな。

・・・この特許発明に係る商品は、水が入ってきてX装置が動作してくれないと商品としての意味が無い、というか、『使用者が危険な状態になる』ものなので、水が入りやすいように開口部を設けてあるんですけど~~~そちらの商品では、水は入らない、したがってX装置が作動することは無い、んですか。。。
それは、「ヤバイ」のでは?→こんなこと書くと、商品がわかっちゃいそう・・・

・・・それと、また揚げ足取りですが、「不如意」って「思い通りにならないこと」って意味ですよネ。

大疑問
 弁護士法第七十二条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件(中略)その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

もちろん相手方の名前を教えずに仲間内でいろいろ聞いてみました。が、微妙なようです。
『報酬を得る目的で鑑定その他の法律事務を取り扱」ったという要件には該当しそうですから、それが弁護士法の「ただし・・・」に該当し、かつ弁理士法第4条「弁理士は(中略)これらの手続に係る事項に関する鑑定その他の事務を行うことを業とする。」に該当するかどうかが問題になるところでしょう。仲間たちの間では意見が分かれました。
 ほぼ半々。
 謝罪を要求している点が問題になるのでは、という意見も多かった。

 私が、上述の代理人弁理士だったらどうするか、ですか?
 私の場合、自分で回答を書いても弁護士に見てもらい、その弁護士の名前で出します。出してもらいます、かな。もちろん報酬は弁護士経由。形だけじゃないか、と言われれば、そうなんですけど、ね。「形」が大切と思っているわけで。。。
 
久々の弁理士ネタ(^_^.)で、長くなりました。
後日談もいろいろ書けそうです。
ではでは

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