萩尾作品で二番目に好きな作品です。(一番はやっぱり『ポーの一族』) 以前、テレパシー、瞬間移動、透視などの超能力ブームがありましたが、これはそういうSFファンタジーものです。(『スター・レッド』は、アニメーションにもできる作品だと思うのですが) この作品の次に印象深い作品は『百億の昼と千億の夜』でした。または『マージナル』。
『スター・レッド』は赤い惑星、火星のお話。
スター・レッド 価格:¥ 840(税込) 発売日:1995-04 |
<火星 in スターレッド>
火星 1日は約24時間40分 1年は約687日 自転軸の傾きは25度 春夏秋冬あり。直径は地球の約半分、体積は地球の15% 重力は地球の38% 酸素はほとんどないが改良の余地あり。月はフォボスとディモスの二つ。
2050年(あと約40年後・・)、地球の人口増加のため、地球人が月や火星や金星に植民するようになったものの、どういうわけか火星では胎児死亡率が100%。その為、火星の植民は禁止になり、火星は流刑地になる。その後22世紀半ばまで、流刑地としてのみ機能するが、火星における平均寿命は何故か6~7年。 22世紀後半にそれも廃止。
その後23世紀になり、科学者が実験的に火星のクリュセ(ドーム)に移住したところ、どこからともなく白い髪と赤い目を持った火星人がやってくる。彼らは火星に棲息していた地球人の子孫で、超能力をもっていた。ドームなしでは火星に住めない地球人と、火星に順応し「念力」を持つ火星人は対立し、争う。
昔 火星まで 人が逃げた時
フォボスとディモスの魔物が呪いをかけたので
生まれてくる子は みな魂をぬきとられていた
だけど わずかの人間は
魔物に忠誠を誓って魂を返してもらった
それから彼らは火星人になった
ヒロインの星(セイ)は、地球人の医師に育てられた火星人の5世代目。白い髪と赤い目と超能力を隠して地球で暮らしているが、火星に行くことを切望している。エルグという異星人と知り合い、火星に密入国。火星ではクリュセの地下にある場所でだけ子供は生まれることができる。クリュセで、怨念に支配されて死んだ男に感応して、彼の思念に支配されてしまった星(セイ)を救おうとしてエルグは行方不明になる。そして星(セイ)は火星人に助けられる。
星は、砂漠に棲む火星人たちと会うが、未来に感応する「夢見」の予言で「災い」とされた星は、一族と対立し争いになる。エルグを探しにクリュセに戻った星は、罠にはまり、超能力者を憎む地球人ペーブマンに捕まってしまう。地球のESP研究所に送られた星は、そこで火星生まれの、超能力を持つたくさんの子供に会う。自分たちが持つ強大な超能力の行く末に混乱した星は、自分の能力を制御できず、結果的に研究所を破壊してしまう。
ペーブマンの見解。超能力者は目の視力ではなく超感覚で物を見ている。念動力があるならば手や足は不必要ではないか。テレパシーがあれば、言葉も口も耳も必要なくなるではないか。何十億年かけて海の中から進化した霊長類こそが正しい進化で、超能力者は人間の退化現象だという。・・(超能力をそのように考えるのはおもしろい見解だと思う。そう言えば、竹宮恵子著「テラへ」でも、超能力者は肉体的弱者で、それを補うために超能力を持つことができるようになったという話だった・・)
宇宙空間で、冬眠中の繭のような形で漂っていたエルグ(彼は不死)を見つけた星(セイ)が、ニュートーキョーシティのエルグのアパートに帰ると、そこには、ゼスヌセル系のアープという星からエルグを追ってきたミュージュという異星人と、星(セイ)を探していた地球友達サンシャインとESP研から派遣されていたカッパ、火星から星を追ってきた火星人の黒羽(クロバ)がいて、ミュージュと争っているうちに、6人はアープ星にワープしてしまう。
エルグは、火星と似た古い星の超能力を持つ種の生き残りで、宇宙のルポライターのような仕事をしていた。超能力者が生まれる火星のような惑星は赤色螢星と呼ばれ、このような惑星ではアミと呼ばれる形のない精神生命体が育ち、巣食い、そこで生まれる超能力者は星すべてを破壊するほどの力を持つようになり、やがてその星自体を滅ばしてしまうだけでなく、他の星にも危険を及ぼしていく。アープ人は宇宙の秩序を保つために赤色螢星を一掃し始めたと言う。
星(セイ)たちは、火星と同じアミの巣食う一番古い遺跡ネクラ・パスタへ行くことにする。その星は4つの人工衛星ポイントによって立ち入り禁止区域になっている。黒羽たち4人に待機してもらい、エルグと星の二人は廃墟のようなその場所にテレポートで降り立つ。
惑星の外で2人を待っていた4人は、アープ星の委員会からの追手に捕まってしまうが、源(ゲン)の犠牲でサンシャインとカッパだけは地球にテレポートできる。星(セイ)はこの惑星の共鳴に囚われ消えてしまい、エルグはこの惑星に一人取り残されることになる。
魂だけになり宇宙空間を漂っている星(セイ)は、エルグが不死のまま、この惑星で星(セイ)を永遠に探し求める姿を見ていることしかできない。エルグは封印した自分の超能力を解き放つ。星(セイ)を愛し探し求めたエルグもいなくなった、遠い未来の死の惑星ネクラ・パスタ。何故かそこに、炭素が生れ、水と草が生まれる光景を、星(セイ)と火星人ヨダカは幻のように垣間見る。
ヨダカは、火星の百黒老のもとにある自分の肉体に、小さい胎児に変化させた星を連れて戻ることができる。
やがて、ヨダカを母として、星はもう一度生まれ変わる。ジュニア・星が生まれた後の空に、火星はもうない。