『あるいは裏切りという名の犬』

2008-08-12 13:37:18 | シネマ





『あるいは裏切りという名の犬』

出演: ダニエル・オートゥイユ, ジェラール・ドパルデュー
監督: オリヴィエ・マルシャル


いやぁ、久々にフランス映画らしいノワール・フィルムを楽しみました。
いいですね、寡黙で渋いビター100%の男の世界。

ギャングとの仁義を通すため、投獄されても口を割らないレオも素晴らしいが、
出世の為には正義など一顧だにしないドニも渋い。

これらの男の世界には
甘ったるい“やさしさ”やぬるい“友達”なんていうエキスは毛ほども入りこむ隙はなく、
それらを支配するのは、他を圧倒する暴力と意地と“やられたらやり返す”という原則だけだ。

フィルム・ノワールの特徴として登場人物たちに幸福感はなく、
映像も暗く、影を多用し行き場のない閉塞感を演出する。

彼らは人格的に破綻しており、悲観やあきらめ、皮相な世界観でおおわれ、
仲間や敵にかかわらず裏切りや無慈悲な暴力が横溢し、
結果として主人公と言えども暗闇に向かって破滅していく。

そこが私はたまらなく好きだ。

そこには、口先だけの平和だとか友情だとか平等だとかの「嘘ばっかりの上っ面善人」は登場しない。
人間の本質としての、醜いかもしれないけれども【本音】が描かれており、
私は清々しささえ感じるのだ。


私は現実に、多くの「善人面した嘘つき」を知っている。

彼らに比べたら、この映画に出てくる破綻した男たちのほうが100倍マシだ。 





★★★★☆


パリ警視庁のふたりの警視、正義感あふれるレオと野心家のドニ。
かつてひとりの女性を取り合い、彼女がレオ夫人となったことから、友人だったふたりの間には深い溝ができた。
次期長官候補がレオであることがおもしろくないドニ。
どうしても出世したいドニは、レオが指揮をとる現金強奪事件の捜査に無理やり入ってくる。
そんなとき情報屋に騙され、殺しのアリバイの片棒を担がされたレオ。
やがてその一件は、ドニに勘づかれ、彼の人生を左右する事態に発展していく。








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