冬桃ブログ

敬老の日だったけど……。

 地方に住む女友達と久しぶりに電話でお喋り。
 この夏はどこも酷暑だったよねえ、という話になり、
「8月に熱中症で倒れちゃって……」と打ち明けた。
 
 すると彼女が、
 
「じつはね、私も一か月くらい歩けなかったの」

 テーブルの角で足を打ち、あまりの痛みで
立ち上がることすらできなかったという。
 時間がたってもその痛みは消えず、足は腫れ上がる一方。
 翌日になっても歩けない。

 彼女は私より四歳若い。仕事は私同様、フリーランス。
 もはや中年という年齢になってから、
華やかな東京暮らしを捨て、見知らぬ土地へ
たった一人で移り住んだ。
 車の免許を取得し、面倒な人間関係を避けるため、
あえて、近所づきあいはシャットアウト。
 だからこういう時は孤立無援だ。

 「病院は?」
 「行かなかった。車を運転できる状態じゃなかったから」
 「救急車は?」
 「呼ばないわよ! だって足が折れたわけじゃないし」

 とはいえ、一日たっても動けないほどの打撲なのだ。
 ほっといていいはずがない。

 まあしかし、救急車を呼ばなかった気持ちはわかる。
 私も熱中症で倒れた時時、苦しくて怖くて
パニック寸前だったが、119番はしなかった。
 まだ意識があるんだから、そんな大げさな、と思ったのだ。
 意識がなくなったら救急車もへったくれもないんだけどね。

 で、歩けない彼女はどうしたか。
 なんと、アマゾンで松葉杖を注文したのだ!

「すごいよねえ、アマゾンって。
 なんでもあるの。しかも即日届くのよ!」

 いやいや、感心してる場合じゃないでしょ。

 で、その後は松葉杖でようやく家の中くらいは
移動できたらしいのだが、一週間たってもその状態。
 で、ついに友達に電話をして、現状を話したのだという。

「それで病院へは?」
「行かなかった。一か月くらい松葉杖だったけど
なんとか回復したから」

 電話をして、友達が来てくれたのかどうか
詳しいことは聞かなかったが、まあ、買い物くらい
お願いできたのかもしれない。
 車がないと身動きできないところだから。

 私は横浜という都会に住んでいるが、
独りで対処するしかないという点では同じだろう。
 誰かそばにいて、これ以上悪くならないよう、
様子を見ていてほしいと切実に思う。
 けれども友達だってそれぞれ仕事や家庭の都合がある。
 具合が悪いからといって呼び出せるものではない。
 逆の立場で、私が友人から助けを求められたとしても、
徒歩圏内でない限り駆け付けられるものではない。
 私には車もないし。
 結局、「救急車を呼んだら? なんなら私が
電話しましょうか?」くらいしか言えないだろう。
 
 死ぬのはいやじゃないのだが、死に至る過程は怖い。
 どれだけの時間、独りで苦しまないといけないのか。

 彼女との電話は、結論として、それぞれ、
住んでる町の役所へ行ってみよう、ということになった。
 要支援とか要介護は、いますぐそれが必要になっても
「では今日から」というわけにはいかないらしい。
 かといって、「転ばぬ先の杖」としていまのうちに
認定してもらえる、というものでもない。
 
 だけど非常事態になった時、
「救急車を呼びなさい」ではなく、誰かが駆けつけて
様子を見守ってくれる制度があるかもしれない。


 ……と考えたけど、ないね、それは。

 こないだ倒れた時、結局、ふらふらの状態で
混みあった病院まで歩いて行ったし。

 ふとカレンダーを見れば「敬老の日」。
 敬ってくれなくてもいいから、いたわってほしい。
電車の優先席なんか、大きな顔して若者が座ってる。
 蹴っ飛ばしてやりたい。
 たぶん、マトを外して私のほうがこけ、
顔で笑って心で泣きながら、吊革につかまってるんだろうねえ。
 


 
 
 
 

コメント一覧

yokohamaneko
酔華さん
なんと羨ましい!
「若く見えるということじゃない?」
と友人は嫌みだか慰めだかを言いますが、
私よりもっとよぼよぼの人が立っていても、みんな知らんぷり。
手作りの介護ベッドマークを胸からぶらさげようかしらん。
酔華
先週の電車内でのこと。
優先席に座っていた中年の女性に、「どうぞ」って席を譲られてしまいました…。
これで私も見た目老人の仲間入りなのね。
29歳のとき、公園で遊んでた小学生から、
「お兄さん」ではなく、「おじさん」と呼ばれたとき以来のショック。
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