落ち穂拾い<キリスト教の説教と講釈>

刈り入れをする人たちの後について麦束の間で落ち穂を拾い集めさせてください。(ルツ記2章7節)

降誕日説教 <語り>「神の道化師」 ルカ1:47−48

2011-12-27 10:06:12 | 説教
S12CC(L)
2012.12.25
降誕日説教 <語り>「神の道化師」 ルカ1:47−48

はじめに聖書の言葉 ルカ1:47−48を読む。
わたしの魂は主をあがめ、わたしの霊は救い主である神を喜びたたえます。身分の低い、この主のはしためにも目を留めてくださったからです。今から後、いつの世の人も、わたしを幸いな者と言うでしょう。

昔むかし、イタリアのソレントという町に、ジョバンニという、小さな男の子が住んでいました。ジョバンニには、お父さんも、お母さんもいませんでした。いつも、ボロボロの服を着て、あちらこちらで、パンをめぐんでもらい、夜はそのあたりの家の戸口の辺りで寝るのでした。
それでもジョバンニは幸せでした。
それというのもジョバンニはすばらしい技をもっていたからです。ジョバンニは何でも空中に投げ上げて、お手玉のようにくるくる上手に回すことかできました。
毎日ジョバンニは野菜や果物を売るチスタさんの店へ行き、得意の技を見せました。ジョバンニはレモンやオレンジをじょうずにくるくると回して見せました。リンゴやナス、それにカボチャだって、できました。町の人たちはジョバンニの技を見に集まってきて、終わると、ついでにチスタさんの店で買い物をします。そこでチスタさんのおかみさんはジョバンニに暖かいスープを御馳走してくれるという具合でした。つまり、これはジヨバンニにとっても チスタさんにとっても損のない話しだったのです。
ある日、旅芝居一座の一行が町にやってきました。
ジョバンニは芝居小屋の後ろの方にもぐり込み、芝居を見ました。美しい衣装を着て、踊ったり、歌ったりするのを見て、ジョバンニは小さな声でつぶやきました。
「そうだ、あれこそボクにピッタリの暮らしなんだ」。
そこで、芝居が終わるとジョバンニは親方のところへ行って「ボクを使ってください」と頼みました。「駄目、駄目」と親方は相手にしてくれません。「うちじゃ、身許のしっかりした人しか使わないんだ。どっか、よそへ行って、パンをねだっておくれ」。「でもボクはとっても役にたつんだよ」。ジョバンニは必死になって頼みます。「荷造りしたり、荷物を解いたりできるし、ロバの世話だってできるよ。それにネ、」。ジョバンニはしつこく食い下がります。「それにネ、ボクは何でも上手に空中でくるくる回せるんだよ」と言い、そばにあったキュウリや大根を空中に投げ上げて、くるくる回し始めました。ジョバンニの手並みを見ながら、親方は「なかなか、やるじゃないか。もう一寸、練習して、場数を踏めば……ものになるかもしれんな。ようし、合格! だけど、お金はやれないよ。寝る場所と、イタリアでも有名な役者たちの仲間入りをして、一緒に国中を旅できるだけでも満足だろう。そして飯。俺にできることは、それだけだぜ」。
「ありがとう、親方」、ジョバンニは大喜びです。「荷物をまとめておいで。間もなく、次の町へ出発だ」。こうして ジョバンニはチスタの旦那とおかみさんに、別れをして旅芝居一座の仲間に入りました。
ほどなく、ジョバンニは親方から舞台で着る衣装を貰い、大勢の前で芸を見せるようになりました。ジョバンニは道化師の化粧をして、芝居が始まる前に、幕のかげから舞台に飛び出します。そして、ピョコンとお辞儀をすると、派手な色の袋を開いて、道具を取り出し、敷物をひろげて、芸を始めるのでした。
ジョバンニは、先ず、何本もの棒を空中に投げ上げて、くるくると回して見せます。次は皿です。それから棒の上に、それぞれ皿を乗せて、上手にくるくると回して見せます。そして、今度は棍棒や、輪、それに燃えているたいまつも空中であやつって見せました。最後に、ジョバンニは赤とオレンジ色の玉を空中に投げ上げ、くるくる回しながら、それに黄色い玉を加えます。それから、みどり、青、紫と玉を増やすと、まるで、虹の輪を回しているように見えました。
「さーあて、みなさん、お次は“空に輝くお日さま“と、ござい」と、ジョバンニはここで叫びます。そして、玉を操りながら、金色に輝く玉を、どれよりも高く、はやく、投げ上げて見せるのでした。こうなると、見物している人たちは大喜びで、拍手喝采ということになります。

ジョバンニは、だんだん有名になり、やがて旅芝居一座の仲間とも別れて、独り立ちしました。イタリアのあちら、こちらと旅をして歩くうちに、ジョバンニの衣装は前よりいいものになり、美味しいものも沢山食べられるようになりました。でも、道化師の化粧だけは、変わりません。ある時は、国中でも一番偉いお役人の前で、また、ある時は、王子様の前で、得意の技を披露いたしました。しかし、どんなに偉い人の前でも、ジョバンニの芸は普段と変わることがありません。先ず、棒を使って、それから皿の芸、そして棍棒、輪、燃えているたいまつと、次々と変わり、最後には、色とりどりの玉をあやつって、虹にして見せます。
「さーあて、みなさん、お次は“空に輝くお日さま“と、ござい」と、ジョバンニは叫び、そして、金色に輝く玉を、どれよりも高く、はやく、投げ上げて見せるのでした。こうなると、見物している人たちは大喜びで、拍手喝采という具合でした。
ジョバンニを囲む人々の顔は微笑みに満ち、笑いと喝采のどよめきが町に響き渡りました。

こうして、年月は流れていきました。
ジョバンニは、だんだん歳をとり、やがて、つらい日々がやってきました。人々はもはやジョバンニの芸を見ようと足を止めたりしなくなりました。「年寄りの道化師がいろんなものを空中でぐるぐる回し見せるだけさ……。あいつの芸はもう見飽きちゃったぜ」。誰もがこう言うばかりでした。
ジョバンニは、惨めな気持ちで、それにもかかわらず、芸を続けていましたが、ある日、“空に輝くお日さま”を取り落としてしまったのです。玉がおりなす虹は、乱れ落ち、人々はジョバンニを取り囲んで、ドッと笑いました。でも、それはジョバンニの芸が面白かったからではありません。
そこで、人々はひどい仕打ちをしました。ジョバンニにむかって、野菜や石を投げつけたのです。ジョバンニは命からがら逃げ出すはめになってしまいました。

川のほとりにやってきたジョバンニは道化師の化粧を落としました。そして、棒や皿、棍棒や輪、それに七色の玉を、みんな袋にしまいました。着慣れた衣装も片付けて、芸をきっぱりと諦めることにしたのです。わずかなお金は、たちまち底をつき、ジョバンニの服はボロボロになりました。 ジョバンニは、子どもの頃と同じようにパンを恵んで貰い、よその家の軒先で眠りました。
「そろそろ、古里へ帰るとするか」。
年老いて、疲れ切ったジヨバンニは、こうして、懐かしいソレントヘと帰って行ったのでした。

ジョバンニが、やっとの思いでソレントにたどり着いたのは、ある寒い冬の夜のことでした。
風が激しく吹き、みぞれまじりの雨が降りしきっていました。ゆくてに、聖フランシスコ教会の修道院の建物が、ぼんやりと見えてきました。その窓は、どれも真っ暗でした。びっしょり濡れて、寒さに震えながら、年老いたジョバンニは建物の中にもぐり込むと、部屋の隅にうずくまりました。そして、たちまち眠り込んでしまったのです。

やがて、ジョバンニは歌声に気付いて目が覚めました。教会の中は、ろうそくの光にきらめいて、「神に栄光あれ!」と歌う人々で溢れんばかりでした。ジョバンニは夢かと驚きました。それは、あまりにも美しいながめでした。修道士やシスター、そして 町の人々が残らずすばらしい献げものを手にして長い列になって、並んでいます。そして人々は一つの銅像の前に、めいめいの献げ物を供えます。その銅像は幼子を抱いた女の人の像でした。「これは、いったい、どうしたのですか?」。ジョバンニは、そばにいた人に尋ねました。「まあ、おじいさん、今日はイエスさまのお生まれになった日ですよ」と、その女の人は答えました。「それで、みんな、こうして献げ物をしようと並んでいるんです」。ジョバンニは、歌声が終わるまで、うっとりと眺めていました。

やがて、人々はみんな帰ってしまい、教会はガランとして暗くなりました。
ただ、マリアさまとイエスさまの像のまわりだけは、ろうそくが明るく輝いています。ジヨバンニは、そばに近づいていきました。マリアさまの腕に抱かれた幼いイエスさまはおごそかな顔をしていました。
「マリアさま」。ジョバンニは呼びかけました。「わたしも何かお献げするものがあればと思うんですがね。あなたのお子さんは、こんなに、どっさり、すばらしい贈り物をお受けになっても、まだ、ひどく悲しそうに見えますぜ。そうだ。ちょいと待ってくださいよ。わたしは人を喜ばせるのは、お手のものだったんでさ」。
ジョバンニは、かついでいた袋から古い衣装を引っ張り出しました。それから道化師の化粧を済ませると、お辞儀をして、ちっぽけな敷物をひろげ、芸をはじめたのです。
先ず、初めは棒、それから皿を空中で回して見せました。次は、その棒の上に皿を乗せて、くるくる回しました。そして、棍棒、輪と続きます……。そこへ一人の若い修道士が鍵をかけようとしてやって来て、芸をしているジョバンニを見つけました。修道士はびっくり仰天して、「神父さま」と叫びながら、大急ぎで、神父さまを呼びに走って行きました。「畏れおおいことだ、早く来てください!」。
しかし、ジョバンニには、その声も聞こえず、その姿も目に入りませんでした。
「さあて」、ジョバンニは幼いイエスさまに微笑みかけました。「まずは、赤い玉。お次ぎは、オレンジ色」。「それから黄色……」。「そして、みどり、青、おまけに紫」。いろいろな色の玉は高く、ぐるぐる回って、虹にように見えました。
「いよいよ最後は、“ 空に輝くお日さま”と、ござ−い」。
ジョバンニは声を張り上げました。 金色の玉は、いちだんと高く、ぐるぐると回り続けます。それは、これまでにないほど、すてきな出来映えでした。ますます高く、ぐんぐん早く、七色の虹はきらめいて、満ちあふれました。なんというすばらしさでしょう。ジョバンニの心臓はドキドキ、はやがねのように、鳴り続けました。
「あなたに、神の御子イエスさま、あなたにささげます」。
ジョバンニは声をふりしぼって叫びました。その時、突然、ジョバンニの年老いた心臓はハタと止まったのです。そして、ジヨバンニは床に倒れて、死んでしまいました。
そこへ、神父さまと修道士が、大急ぎで、やって来ました。ジョバンニのそばにかがみ込んで、神父さまは言いました。「ああ、かわいそうに。この道化師は、もう死んでいる。どうか、彼の魂が安らかに憩わんことを」。しかし、そのとき、若い修道士は、マリアさまと幼いイエスさまの像をジーッと見つめたまま、口をあんぐり開けて、後ずさりしました。
「ああ一つ、神父さま」。若い修道士は、マリア像を指さして、言いました。
「ご覧ください、神父さま!」。
幼いイエスさまは、ニッコリ微笑んで、その手には金色の玉をだいていたのです。


「神の道化師」(トミー・デ・パオラ作、ゆあさ ふみえ訳)
本書は「絵本」として出版されているので、これを「語り」で話す場合、多少工夫が必要である。たとえば、旅芝居の親方の前で、主人公が得意の技を見せる場面では、「絵」がその状況を説明しているが、「語り」の場合には、それを言葉で補う必要がある。
また、旅芝居一座の演目は、ストーリーを煩雑にするので省いた。
同様に最後の場面で登場する修道士の名前も「若い修道士」ということで匿名化した。
また、全体の流れと時間の関係で、2人の旅の修道士との会話の部分は省いた。
その他、語り言葉に改めている部分もある。

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