谷沢健一のニューアマチュアリズム

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岡田監督(阪神)の思考

2006-08-14 | プロ野球への独白
 セリーグ首位決戦6連戦は、何と阪神が6連敗を喫したため、中日の優勝はほとんど確実のものになってしまった。私はこの6試合のうち3試合、ナゴヤドームに足を運んだ。当然、岡田監督とも雑談を交えてよく話をした。
 オールスターゲームを終えた後半戦の初っ端が「竜虎の戦い」だったが、その初戦の練習中、打撃ゲージの後ろで話を聞いた。その場所には偶々他の解説者はいなかったので、大学の先輩後輩という間柄もあってか、くつろいだ話しぶりになった。
 「久し振りにオールスターを堪能したよ。藤川とクルーンは見ごたえあったね」と言うと、岡田監督は満足そうな表情を浮かべながら「谷沢さん聞いてくださいよ」とにこやかに話し出した。
 「僕は神宮の第一戦をホームグランドだから石川(ヤクルト)で、第二戦を川上で考えていたんですよ。そしたら、落合さんから電話が掛かってきましてね。『川上を第一戦の先発にして欲しい』とね。かりに第二戦の宮崎で投げても中4日だから、うち(中日)とのゲームの3戦目に登板できる筈ですよ。落合さんにしてみれば、エースを休養十分で投げさせるという安全策をとっておきたいのでしょう。そう言われると、変えざるを得ないですよ。宮崎のゲームが雨で一日延びた時は、落合さんはしめしめと思ったでしょうね。」
 これが某氏のような「ファン?選手? そんなもん、どうでもいい。勝つことしか考えん。勝てば、ファンも選手も喜ぶんや」というような人物であれば、落合監督からの電話なんぞは無視するだろう。しかし、岡田監督の性格では、そこまでの「政治屋」にはなれない。語りながら、岡田監督の表情は微妙に変わっていった。藤川、クルーン両投手に固執して、首位を走る中日のストッパー岩瀬君を華やかな舞台から遠ざけたのもわからないでもない。
 4連敗後の12日も、矢野捕手の(横浜戦)退場による一日出場停止、藤川の離脱(首筋を痛める)など強烈な逆風のなか、「矢野は罰金無しで出場停止ですよ。審判もおかしいですね。三塁の審判が一番見えるんですから、『4人の審判で協議してくれ』と言ったら、三塁の審判だけが協議の輪にいないんですから。『バットに当たったか誰も判定できなかったので、最初の主審のジャッジを採用します』と、これですからね。審判によってはミスすると翌日はグランドに居ませんよ。外されているんですね。あの時の横浜戦の審判はナゴヤには誰一人きてません」審判への不満は山ほどあっても、今の審判はこんなもんだと、もう諦めてしまっているような感じがしないでもない話し方だった。
 話が藤川君に及ぶと、「彼は10日位で戻ってくると思います。久保田もほぼ全力で投げられるとの報告もきてますので、ファームで何試合か登板して、藤川といっしょに上に挙げますよ」。
 「藤川と二人で戻ってくればいい」などと目前の大事には達観の態(てい)で腰を据えているようで、落合監督の「計算」とは次元の相違を感じてしまったほどだ。私も岡田監督に「どうやっても成るようにしかならない面もあるし、ま、力を抜いて頑張ってくれ」としか言いようがなかったが、別れ際にちょっと笑みを浮かべてくれたのが印象的であった。
 オールスター戦の監督でも、あれこれ神経を使わなければならない(岡田監督の人柄を見抜いて仕掛けた落合監督の術策だったのか?)。ましてや、WBCの監督なら、どれほど太い神経が必要だったろうか。王監督の退院前日の表情を思い出した。