光明真言

　おん 　

　あぼきゃべいろしゃのう

　まかぼだら 　　

　まに　　

　はんどま

　じんばらはらばりたや 　　

　うん

三橋 鷹女

　眼底に　のこれる人も　夕映えぬ

小林 一茶

　手のひらに　かざつて見るや　市の雛　

若山 牧水

　幾山河　越えさり　行かば　　寂しさの　終てなむ国ぞ　　今日も旅ゆく

松村 蒼石

　たわたわと　薄氷(うすらひ)にのる　鴨の脚　　

中村 草田男

　冬の水　一枝（いっし）の影も　欺かず　　

林原 耒井（らいせい）

　片隅で　椿が　梅を　感じている　

八木 重吉 ゆふ陽

　
　もうすこし
　
　心を　やしなへば
　
　この
　
　あかい　ゆう陽を
　
　のこらず
　
　うれしむことが　できるだろう

五所 平之助

　生きることは　一筋がよし　寒椿　　

三橋 鷹女

　消炭を　夕べ　まつかな　火に　戻す

竹下 しづの女

　路　幽（かそけ）く　椿の紅を　燃えしめざる

中村 汀女

水仙の こち向く 花の 香を もらふ

阿波野 青畝

　にぎはしき　雪解雫（ゆきげしづく）の　伽藍かな　

三橋 鷹女

　笹鳴と　風花と　手の　灰ふるひ

安立 (あんりゅう） スハル

「ああ駄目だ、日本は負ける」と　言ひし父を　憎みき　昭和十九年ごろ