やさいのきもち ~ベジタブルラヴァーズ幸せ物語~

素晴らしい有機野菜たちを多くの人に食べてもらいたい!と発進した移動販売ベジラブ号とそのスタッフ達の物語を綴ります。

しあわせのぼたもち

2006年07月30日 | やさいのきもち日記
秋場さんの畑では、今が一番、草取りの大変な時期と聞いていた通り、畑を見学させていただいた翌日から3日間で、延べ16人の方たちが、朝の6時半から草取りを始められているそうだ。
この時期に草取りをしておけば、この後もし草の対処ができないことになっても、作物が草に負けずに育つのだそう。

そんな忙しい大変な時だというのに、奥様がぼたもちを作って、もたせてくださった。
「明日の朝までに作って玄関に置いておくから、取りに寄ってね」。
ビアファクトリーでのお言葉通り、翌日お宅を訪ねると、メッセージを添えて用意してくださっていた。
たっぷりのぼたもち。ゴロゴロと大きく切ったきゅうり。ペットボトル入りのお茶。ごませんべい。

うわあ、ありがとうございます!

帯広へ向かう途中で、包みを開いた。
ぼたもちの餡は、もちろん秋場さんの銀手亡。お米は、京都の丹波ハピー農園の黒米のもち米。秋場さんのご友人で、長く自然栽培に取り組んでおられる方だそう。

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うまくできなかった、とメモに記されていたけれど、とんでもない。
しっとりしたもち米に、つぶつぶの残る餡の柔らかな甘さがからみあって、じわーっと身体中に、心づくしの温かさが染み渡っていく。
う~ん、しあわせ~~~! 

またこのきゅうりの、大きく元気なこと。薬味に味噌が添えられていて、カリカリ音たててかじる。お茶をぐいっと一口、うまいっ!
最高の昼食となりました。

オホーツク ビア・ファクトリーで

2006年07月29日 | やさいのきもち日記
秋場さんの畑は、全部合わせると27haほどにもなるそうだ。学業を休んでも、畑仕事を手伝ってくれていた4人のお子さんたちは、それぞれ自分の道を見つけて巣立ち、現在は、秋場さんご夫婦と、神戸から移り住んでこられたという、若いご夫妻のご主人の、3人で維持、管理されているという。

たった3人で! 
広い畑の、今どこをどうしなければならないか、天候にも気をつかいつつ優先順位を決め、作業を進めるのは、いったいどうやるのだろう? 想像もできないが、秋場さんは、そこは30年もやっていれば、だんだんわかるようになってきました、とおっしゃる。

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ここは、水田から転換されたという畑。
55年前、ご両親が自然栽培に取り組み始めたのも、ご自宅周囲の水田を畑にかえてのスタートだったそうだ。

そのあたりのことを全部書いているからと、「自然農法歳時記」と題した、サン・スマイルさんに依頼されてつづられているという、通信のバックナンバーをいただいた。
読み応えたっぷりの歳時記で、読むと、この地でいかにご苦労を重ねて、自然栽培を続けてこられたか、その様子がよくわかった。真摯に熱情をもって取り組み、あらゆる状況を大自然からのメッセージと受け止め、何事にも感謝の念をもって対処される、秋場さんの心構えに圧倒される思いがした。

作物の間に伸びる草。草のほうが作物よりも強いから、どんどん育つと考えるところを、秋場さんは、土が草を生い茂らせると考えておられるようだ。
主従の関係を、逆に考えていらっしゃると思いましたと言うと、笑って、「30年経ってようやくこの頃、そう思えるようになってきました」。

2日目の夜は、秋場さんご夫妻と夕食をともにさせていただいた。北見の地ビールが飲める、オホーツク ビア・ファクトリー。6種類のビールがあり、全部飲もう、と秋場さん。4種類めでギブアップしたが、いろいろなお話を伺って楽しいひと時だった。
奥様は、千葉のご出身だそう。秋場さんによると、だまして連れてきたとか(笑)。 
最初の年の冬、凍ってしまった五右衛門風呂に、そのまま火をつけて割ってしまったそうだ。氷の上に水を入れて、それから沸かさなければいけないらしい。へええ。
しばらく風呂に入れなかった、と笑う秋場さん。

寒さも農作業も、慣れない生活はどんなにか辛い毎日だったろうと思うのだが、奥様は、自分は弱いところがあるから、ずっとちゃんとした人間になりたいと思っていた、ここでおいしい作物を作らせていただこう、一生懸命働こうと思って来たのだと笑っておられる。

太陽の光を浴びて育っていく作物は、ほんとうに綺麗で、それを見ることが楽しみでとても嬉しい、とも。

気の抜けない農作業のなかで、4人の子供たちを育てあげ、今でも、夜が明ける前から深夜まで働いておられる毎日。
思わず言葉につまり、頭が下がるばかりでした。

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野菜の腐敗実験中

2006年07月28日 | やさいのきもち日記
「本物の野菜は腐らない」と教わったのは、以前に参加した河名さん(ナチュラル・ハーモニー代表)のセミナーだった。
冷蔵庫の隅で、野菜を腐らせてしまったことのある私は、え? 腐らない? とその言葉に驚いた。広口ビンに入れられた自然栽培、有機栽培(有機JASマーク付き)、慣行栽培の3種類のきゅうり。

もっともドロドロに溶けた状態のものが、有機栽培のものと知って、さらに驚きは広がった。慣行栽培のきゅうりは、まだその形をわずかにとどめている。
一方、自然栽培のものは、干からびてカラカラになっていた。

「大変なことになるから、フタは空けません」と河名さん。
有機栽培のものは、ウンチくさい臭い、慣行栽培の方は、薬品っぽい悪臭がするらしい。
それ以来、自分でもやってみようと思いながら、その“悪臭”に恐れをなして、二の足を踏んでいた。けれども一昨日、4種類のきゅうりが入手できたので、思い切って実験開始。

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ひとつは、農薬・肥料をいっさい使わない自然栽培のきゅうり。
ふたつめは、有機JASマーク付きの、有機栽培きゅうり。
みっつめは、農薬・化学肥料の使用を、通常の半分にすることを目標にして栽培されたもの。
よっつめは、慣行の栽培方法で育てられたきゅうり。

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昨日、今日の様子では、それぞれ表面が乾いて、このまま枯れていきそうな感じだ。
左上から時計回りに、自然栽培、減農薬・減化学肥料栽培、慣行栽培、有機栽培のきゅうり。
この先、どうなっていくのか、楽しみなような、怖いような。

途中経過は、順次アップしていきます。

奇跡の小麦畑

2006年07月26日 | やさいのきもち日記
わあ、思わず口をついてしまうほど、広々とした畑が広がっていた。
見渡す限りの小麦が、淡い黄色に輝いている。この小麦、昨年秋に種を蒔かれたもの。つまり、マイナス30℃近くにもなるという寒い冬を、積雪の下で生き抜いて、春に芽を出した小麦なのだ!

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極寒の地では、春に蒔く以外は小麦は育たないと言われていたそうだ。ところが一昨年、秋蒔きしてみたところ、しっかりと冬を越し、見事な実りとなった。そして昨年の秋蒔き小麦も、冬を乗り越えこうして立派に育っているのだという。

「すごい! 奇跡の小麦なんですね!」

なんと、土に窒素分がないからではないか、と考えられているそうだ。素人では、その理論はよくわからないけれど、学校で教わった「植物は、窒素・リン酸・カリで育つ」という説とは、まったく違う現象が起こっているらしい。

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それにしても、きれいだなあ。

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よく見ると、小麦の間にクローバーが。このクローバーは、“植えている”のだそうだ。小麦とクローバーを共生させるほうが、良い結果を生むのだそう。

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ところで小麦畑で、こんなふうに小麦が倒れているのを見たことはないだろうか?
これ、肥料の入れすぎ(!)によるそうだ。強風のせいかと思ってたなあ。
同じ隣の小麦畑では、小麦の根元には1本の草も生えていなかった。これが除草剤の威力なんだろうな。

小麦畑の向こうには、人参、だいこん、じゃがいもの畑が続いている。

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15町歩(約15ha)あるそうだ。
この畑は、国庫金から借り入れして購入された土地で、昨年ようやく返済が終わったとのこと。その間、何度も財政破綻の危機があり、そのたびに、秋場さんの言葉では「天の配剤」によって、厳しい局面を乗り越えてこられたという。

「この頃になって、頑張って働いていれば、きっと誰かが見ていて、手を差し伸べてくれると思うようになりました」。

どんな状況にあっても、無農薬・無肥料の自然栽培を貫いてこられた、その強い意志はどこからきているのだろう。
「自分の出生が、すでにそうなんですよ」。
伺うと、秋場さんが誕生する頃、お母様の体調が思わしくなく、子供はあきらめるしかないという状態であったそうだ。それを自然農法と自然療法で乗り越え、無事出生されたのだという。

以来、ご両親から含めて55年、秋場さんご自身でも30年、自然栽培を続けておられる。自然栽培以外の農業をやる気は、まったくなかったそうだ。
それでも高校を卒業するときは、やっていけないと思い、東京の大学へ進学した。ところが卒業する頃には、「帰って農業をやる気になっていたんだよ」。

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じゃがいも畑では、花が咲いていた。ところどころに長く伸びた、これは燕麦だそう。今のうちに抜いてしまわないと、タネが落ちてまた来年生えてきてしまうそうだ。
これを全部抜くって…、気が遠くなるな(苦笑)。

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だいこんは、5日ごとに1畝ずつ植えるのだそうだ。こうやって収穫時期をずらすんですね。このだいこん、まほろばさんにもやってくるらしい。もうから楽しみ!

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人参は、あの高橋さんのフルーティだそう! 6年ほど前から栽培を始め、自家採取を繰り返して、北見の地でも大きく育つようになったそうだ。

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今夏も種採り用の人参の花が、咲き誇っていました。

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がんばれ、雪手亡!

2006年07月25日 | やさいのきもち日記
雨の東京を飛び立ち、到着した女満別空港は、薄日のさす曇り空だった。
空港から、車を走らせること2時間弱。

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北見市の秋場さんのお宅に到着。秋場さんは、真新しい長靴を用意して、待っていてくださった。
ご挨拶もそこそこに、さっそく畑へ出発。秋場さんの畑は、この周囲15km圏内に点在しているのだそうだ。

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山野を開墾されたという畑には、雪手亡(インゲン系の豆)が栽培されていた。まだまだ土の力が弱くて、大きくならないと秋場さん。隣の畑に茂っているのは牧草で、このような牧草が育つ畑には、作物もよく育つそうだ。

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こちらも雪手亡の畑。
この4月はことのほか寒さが厳しく、けれども5月の連休明けから暖かい日が続いて、種まきも順調にすみ、スクスクと伸びた芽に、もう大丈夫と思っていたところに、5月末の遅霜、6月の冷雨と重なって、発芽不良の状態に。そのため、1列ずつ発芽していないところを、クワで筋切りして2粒ずつの種まき(差し豆というそうです)を、すべて手作業で行われたそうだ! 蒔き直しにまるまる1週間かかったそう。

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蒔き直し後は、順調に発芽成長して、5月蒔きのものより大きくなるほどの成長ぶり。ところがここ最近は雨が降らず、ようやく昨日、一昨日と降った雨が、ほんとうに恵みの雨となったとのこと。黄色くなっている下葉は、上の葉を育てるために、枯れていくのだそう。
湿り気を帯びた土は、柔らかい感触、雪手亡も元気いっぱいに見える。

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農薬も肥料も使わない自然栽培のため、また北限の地の1年1作きりという制約もあり、種まきの時期には、最大の神経を使って、1週間の天気予報を見て、土の状態を見極めての作業となる。
けれども、「天気ばかりは思うようにいきません。今年はもうダメかと思っていたけれど、天の恵みの雨をいただいて、なんとかいけそうです」。
寒さの厳しい北の地にあって、自然にゆだねるというのは、過酷な仕事だとあらためて思う。思わず、頑張って育ってね、と雪手亡の畑に向かって声をかけた。

銀手亡(白いんげんの原種的特性を残している豆)の畑は、車を止めることなく通りすぎたので、うまく写真を撮れなかったが、雪手亡と違って、ツル状に茎が伸びていた。このツルは1~3mほどにもなるそうで、そのため機械での作業ができず、その面倒さ大変さゆえ、栽培されているのは、秋場さんとお仲間の伊藤さんのお二人のみだそうだ。“幻”と言われるはずですね。

途中、農薬散布中のたまねぎ畑に遭遇。

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「うわ、こんなふうに撒くんですか?」「だいたい14、5回は撒くよ」。

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北見の地を流れる常呂川は、北海道内の主要河川のなかでも、もっとも汚染が進んでいるとのこと。原因は、冷害に強い作物として栽培されている玉ねぎ、ビート。農薬の散布とともに、どちらも大量の化学肥料を使う作物なのだそうだ。またこの地域は酪農が多く、ホルモン剤を含んだ家畜糞尿とともに、地中に染みこみ、地下水や河川を汚染しているのだという。漁業への悪影響も心配されているそうだ。
「大きな工場もないのにね」と秋場さん。

ふるさとの熊本も、同じ状況だと聞く。大型畜産業とハウス栽培による汚染。熊本の水はおいしいと思って育ってきただけに、水道水が危ないと聞いて、愕然としたのだった。

畑を巡るうちに、日が差してきた。緑輝く中を、さらに別の畑へと向かう。

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