浮世風呂

日本の垢を落としたい。浮き世の憂さを晴らしたい。そんな大袈裟なものじゃないけれど・・・

ロシアを追うオバマ、欧州を窮地に追い込む

2015-01-30 22:14:59 | 資料

追い込まれたロシアが握りしめるトルコ・中国カード

欧州と米国が寛容性を失い、ユーラシア中西部の混迷に拍車かける

2015.01.29(木) W.C. JB PRESS

2015年も1月がもう終わろうとしている。にもかかわらず、過ぎ去った2014年のロシアを巡る諸々の情報は眼前に山と残り、いまだにその消化不良に悩まされ続けている。それと言うのも、ロシアの問題が世界経済や国際政治がこれからどうなるか、にまで果てしなく広がってしまったからだ。

ことの発端は2014年2月の革命

 多くの識者によるロシアと世界の2015年の見通し開陳が、これまでの年に比べるとやや遅れて出てきている(ように見える)のもそれが理由に違いあるまい――などと勝手に決め込み、己が力量を慰めるばかり。

 思い起こせば、ことの発端は昨年2月のウクライナでの「革命」に連なる騒ぎだった。

 それからロシアによるクリミアの併合、西側諸国の対ロ経済制裁発動、これに対するロシアの逆制裁、ウクライナ東部での独立派と政府軍の戦闘、それにロシアが軍事力で干渉した、いや、していない、の応酬、何の関係もない他国の旅客機の撃墜という無茶苦茶と誰がその下手人なのかの詮索、年が終わってみればこのウクライナの「内戦」で5000人を超す死者の数・・・。

 何度も関係国が話し合って停戦協定らしきに到り、その傍から崩れるパターンの繰り返し。そうこうしているうちに、秋からは原油の国際価格が急速に下がり始め、年末までにロシアの通貨・ルーブルは暴落。

 自国をそこまで追いやったウラジーミル・プーチン大統領は思ったほど賢明じゃないね、対ロ制裁はちゃんと成果を上げているよ、と米国のバラク・オバマ大統領は誇らしげに語る。議会選で大敗してレームダック極まれり、などと酷評された彼にまだその種の余裕らしきが残っているなら、圧倒的に強い米ドルに支えられているからに違いない。

 今年の世界経済を牽引するのは、当面は米国経済しかない、が消去法の結果のようだ。中国も経済の転換期でもがいている。それを横目に、米国の独り勝ちになる。

 欧州とウクライナ政府への対ロ督戦が仕事の米国は、実は本気でロシアと争うつもりはない、という見方もあるが、馘(かく=解雇)になったチャック・ヘーゲル国防長官は、「ロシアは長期で見れば米国にとって最も危険な国だ、だからこそ米露間の緊張を高めぬように動かねばならない」と進言して、ボスに受け入れてもらえなかったらしい。

 争うつもりがないから話をしない、というならその結果は争っている時と変わらない。ボスの取り巻き連中にはまともな米国外交の担い手がいない、と批判されるゆえんでもあろう。それを好調な経済の陰に押し込めるなら、やはり経済での繁栄が民主主義にとって不可欠ということなのか。

世界のリスク、1位は欧州、2位ロシア、3位が中国

 だが、米国はそれですむにしても、ことはもはやロシア一国がどうのこうのではなく、世界経済全体への問題に関わってきてしまった、と皆が唱え出す。IMF(国際通貨基金)は、2015年の世界経済成長予測を3.8%から3.5%へ引き下げた。

 QE3を解除した米国がそこで金利引き上げに向かうなら、マイナスをこうむる他の国が続出する可能性がある。その中でロシアが倒れたら、綱渡りを続ける欧州経済への一突きになってしまう。

 欧州だけではない。資源国・ロシアが潰れたとなれば、他の資源国も危ないのでは、で各論の詳細などすっ飛ばしてブラジル、ベネズエラ、ナイジェリア、イランも皆同じ、とばかりに並べられ、欧州発の金融不安らしきと一緒にされて最後は世界経済の停滞というストーリーに行き着いてしまう。

 そうなると、それがことの発端であっても、ウクライナ国内の紛争はローカルな問題になり下がってしまう。1年前には人一人が騒乱の中で亡くなっただけでメディアは大騒ぎだったが、今では2桁の人々が一挙にかつ頻繁に犠牲になっても、紙面の扱いはごくわずかでしかない。

 現状は、と言えば、ウクライナ国内の紛争と西側の対ロ制裁の出口は見えぬままで、直近だけを見ても悪化しているとさえ言える。それに対して欧州の有力政治家は大原則を振りかざして、ロシア許すまじの姿勢を維持する。

 その大原則とは、「国境はもう二度と武力によって書き換えられないという、現代欧州の安全保障秩序の基盤の前提」であり、「ロシアによるクリミア併合とウクライナ東部侵攻は、この前提を覆した」ということになる。

 だが、それで欧州すべてがロシアへの姿勢で一致しているわけでもなさそうだから厄介だ。ユーラシア・グループは今年の国際情勢「10大リスク」のトップに、欧州の政治経済状況の不安定性を据えてしまった(2番はロシア・リスク、3番が中国経済減速のリスク)。

 日本の轍を踏むデフレ経済への転落、ギリシャ問題の再発、ウクライナ問題のこれから、そしてあるいはイスラム問題までも、と懸念材料は盛り沢山だ。しかし、それらに対処すべき欧州の意思統一がゴタつかずに図れるのか、という懸念は払拭しきれない。

西側全体が自信を失いつつある状況

 何とも憂鬱な欧州である。

 今月に入ってパリのシャルリー・エブド社襲撃事件が起こると、言論の自由を旗印に欧州の首脳諸侯がこぞってデモ行進に参加した。この事件の本質が「言論の自由」にあるのかどうかはさておき、そうでもして欧州の団結を訴えねばやり切れない、という気持を多くの人々が抱いていたからだろう。

 その背景としての「市場経済・民主主義・米国の圧倒的な力、の3点セットがいずれも崩れかけ、西側全体が知的な自信を失いつつある状況」を論者は指摘する。もしそうなら外部世界への警戒心や恐怖感は否応なく高まり、国粋主義の台頭も宜なるかな、である。

 だからなのか、事件の直後にパリの国際機関で働く某氏からは、「事件の背景には様々な要素があるはずなのですが、職場でもそんなことを口に出せるような雰囲気ではありませんよ」との返事が届く。イスラム教徒の置かれた立場を少しでも弁護や擁護していると受け取られたなら、もう袋叩きも同然といったニュアンスのようだ。

 恐らく、それはロシアに対する気分と同根なのだろう。

 ロシアがウクライナに対して行ったことと、シャルリー・エブドへのテロ行為は同列視される。どちらも欧州の大原則に触れるものと断罪され、「一国家の独立を軍事力で他国が犯すことは、法の支配と言論の自由を脅かすテロと同じく欧州への脅威」ということになる。

 西側やウクライナ側の報道によれば、ウクライナ東部の「分離主義者ども」をロシアは軍事的に援護し、どうロシアが言い繕うとNATO(北大西洋条約機構)をはじめ西側はその証拠をすべて押さえている。ロシアのやっていることは、まさに隣国への軍事侵攻にほかならない。そんなことをあえてするとは、やはりプーチンが「まだソ連崩壊の喪に服している」からで、「大国は自国の近隣地域を支配するのが当たり前」と考えているからだ・・・。   

 諸悪の根源はプーチンということになる。

 何やら、トム・クランシーがその遺作で描いた『米露開戦』に出てくるロシアとその為政者そのものだ。こうした小説まがいの想像が想像を生んで、ルーブル安がインフレを加速させ国民生活に大打撃を与えることを避けるため、新たな国際緊張を醸し出して原油価格を上昇させようとプーチンが強硬路線に出るのではないか、といった論まで出てくる。

プーチン大統領の本音を知らずに終わる危険性

 ロシアも反論する。

 クリミアの併合が国際法違反というなら、ではNATO空爆とその後のコソボの独立はなぜ許されるのか。そもそもの2月の非合法手段による政権打倒は正当化されるのか。その非合法政権の面々の中に鍵十字の紋章まで身につけてロシア排斥を叫んでいる向きがいることと、「民主主義」とがどこでどう結びつくのか。ウクライナからの離脱を決める前のクリミアの住民が、そうした鍵十字にどれほど恐怖感を抱いたのか分かっているのか。

 ロシアがこう力んでみたところで、無視されるか、でっち上げのプロパガンダに過ぎないと批判されるのが関の山だ。議論に引き込まれて、ロシアの主張にも某かの真実が含まれている、などという結果になってしまったら、大原則擁護の錦の御旗に傷がつきかねないからなのだろうか。

 だが、こうした姿勢が理由なのかは不明にせよ、ウクライナ問題のこれからを占うために必要な事実に触れる記事は、西側の報道でもほとんど御目にかかれない - 昨夏の終わりにウクライナ政府軍がボロ負けした理由は何であったのか。実際に東部で民間人を攻撃して殺傷したのは誰だったのか。今のウクライナ政府はまともに機能しているのか。実業家のペトロ・ポロシェンコ氏が大統領に選ばれたのは、もう戦争などしたくはないというウクライナ国民の大多数の願いからであり、対ロシア強硬路線派がその大多数に支持されたとは言えないのではないか。

 ロシアもそのメディアも、真実を語っているとは限らない。だが、だからどっちもどっちだろう、では済むまい。より多くの目に触れるはずの西側のメディアが疑問点に対して正面から答えなければ、なぜプーチン大統領が頑なに西側に抵抗するのか、その彼がなぜ国民から高い支持率を得ているのか、を西側の多くの読者は理解せずに終るしなかなくなる。

 以前にも書いたが、ロシア国民は独裁者の下で嘘ばかりを吹きこまれて真実を知らないでいる、と形容されるほど愚か一辺倒ではない。

 憂慮されるのは、ロシアもこうした状況が短期で修正されることなど、もはや諦めているかのように見えることだ。制裁が2017年まで続くと言うシナリオを描き、長期戦を覚悟している。愛国主義に染まることなく、バランスの取れた見方を述べてきたロシアの論者も、ロ欧・ロ米関係の修復には匙を投げた格好だ。
http://www.themoscowtimes.com/opinion/article/future-isnt-bright-for-eu-russian-relationship/513145.html

 長引くものと予想される対立の中で、ロシア経済の行方に明るい題材は見当たらない。その経済が最も影響を受ける要素と信じられている油価がこれからどうなるか、についてはご存じの通りの百家争鳴である。

油価が100ドルを超える日は再びやって来るか

 原油価格の低下は世界経済にメリットよりデメリットを多くもたらすのか、油価はなぜ下がったのか、いつまた100ドルを超えるのか、そんな時がそもそも来るのか、そして米国のシェール革命の行方は、と果てしない議論が続く。

 需給論で見れば、世界の原油総需要41億トン(2013年)に対して7000万トン(140万bd=1日当たりバレル)の供給過剰と言われるが、それで価格が2分の1にも3分の1にもなるというのはどうにも解せない。大体、需要量そのものが価格次第で変わることもあろうから、過剰とされる量の算定はそう簡単ではなかろう。そして、価格に占める実需と投機の割合がどうなのかは誰にも分からない。

 油価の変動はほぼすべて米国の金融政策で説明可能という経済学者の論もある。しかし、これは市場参入者の元手の出所を説明しているにすぎないのではないか。

 そうなると、「原油価格は、中国に始まり中国に終わる一つのサイクルが終了した」とかのダニエル・ヤーギン(ケンブリッジ・エネルギー・リサーチ・アソシエイツ)のコメントがもっともらしく聞こえる。

 確かに2013年までの10年間で、世界の原油需要の伸びの51%は中国が一国で占めていた。その中国経済を安定成長(減速成長)に向かわせる、と為政者が断言している以上は、これまでのような急速な伸びは期待できまい。市場参加者の多くがそう思い込んだら、中国が米国を追い抜いて世界最大の原油輸入国になろうと、原油はもう「買い」ではなくなる。

 油価が短期で三桁へ復帰しないとなると、油価から最も影響を受けるとされるロシア経済は苦しい。ロシア政府も含めて、誰もが2015年のマイナス成長予測を否定しない。

 市場はこうした不安材料に取り憑かれると、もう聞く耳を持たなくなる、とある論者は言う。その通りで、ルーブル相場が極端な動きに走るのも、だからであり、その根本をたどれば、結局ロシアやその経済への無知に行き着く。分からないから不安が増幅して、誰かが動き出せば皆が一斉にワッと、になる。

 そこでは、1998年のデフォルトの記憶も行き交う。その経過やその後の結果が何であろうと、デフォルトが生じたことには間違いないのだから、となる。当時と比べ、ロシアの外貨準備高はまだ余裕が多少はあるものの、それは急減中で、今回は前回とは異なり民間部門が資源企業も含めて制裁で借り換えができないことから、危ないのではないかと皆が口々にその予測をまくしたてる。

どれだけむしり取られるかと、頭を抱える欧州

 破局が来る前に様々な手が打たれたり、新たな状況変化が生まれたりするだろうから、デフォルトに到るとは思えない。デフォルトなら、先にウクライナの方が大問題になるだろう。いくら資金を注ぎ込んでも穴の開いたバケツ、あるいはブラックホールだと気づいている欧州は、これからどれだけむしり取られるのかで頭を抱えるしかない。

 だが、ウクライナがどうであれ、ロシア経済の実態が多くに知られていないところにそのリスクがある、ということは認めるしかない。その意味で、ロシアは投資家にとって確かにリスキーな国なのだ。

 最期に、マクロ経済と同じように原油価格の影響を免れないロシアのエネルギー資源開発・輸送計画に少し触れておきたい。

 米国のシェール・ガス/オイルもそうだが、ロシアの東シベリアの原油・ガス開発でも、これまでの膨大な計画や議論には原油価格が70~80ドル以上といった大前提があった。それがすべて引っ繰り返されてしまったも同然なのだから、採算見通しが立たなくなる話も出てくるだろう。

 未来永劫にわたって40~50ドルのままはあり得ない、と分かってはいても、ではいつ価格が上昇するのかである程度の確証が持てなければ、投資決定には踏み切れない。

 その命運は、中国が救済の手を差し延べるか否かにかかってくる。

 開発投資をロシアが自分でやれば高くつくが、中国が手がけたならあるいは安くできるかもしれない。もっともそこまで対中接近の度を深めてしまうと、金看板だった高度成長がこれから鈍化していくと見なされる中国にどこまで頼れるのかで、ロシアにも不安がないわけでもないだろう。

 西方では、対欧ガス輸出でのサウス・ストリーム建設計画が撤回された。これには原油価格の下落が全く関係ないとは言えないものの、撤回の主たる理由は、これまでの欧州側の姿勢に業を煮やしたプーチン大統領が欧州との協力を遂に見限ったというところに求められる。

ガスの流れを変更するだけ

 某誌は「欧州のガスの買い付け意欲が薄れて、プロジェクトとして成立しなくなったから」と論じているが、欧州がガスでの対ロ依存を軽減したいと思っていることは間違いないにせよ、それは短期で達成できるような目標でもないし、欧州でのガス需要減少は対ロに限った話でもない。

 そして、撤回と言っても、ガスの流れを変更するだけとも言える。ただし、その変更は流れの途中にトルコを参加させるというもので、これには欧州側も内心で当惑し切っているだろう。

 撤回が発表された時には、これでプーチン大統領の面目が丸潰れになったと手を叩いた向きもいたようだが、仕組まれた新たな流れの示唆するところが明らかになるにつれて嗤(わら)えなくなっている。

 コーカサス・中央アジアからも、ロシアからも、そして将来的には中東からも、欧州に向かうガスがすべからくトルコ経由となることに、野心的なレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が対欧外交での意味を見出さないはずはないからだ。

 東で中国、西でトルコと、障害は多々あろうが、プーチン大統領は習近平国家主席・エルドアン大統領と連携することにより、新たな国際戦略の土台を構築し始めているようだ。それは我々が考えていたよりもはるかにスケールの大きい国策の大転換なのかもしれない。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42783

◆ロシアに空から包囲されるヨーロッパ

2014年11月7日 グローバル・アメリカン政論

ウクライナ危機を契機にロシアとNATOの緊張が高まるにつれて、ロシア空軍はバルト海および黒海方面からだけでなく、ノルウェーおよびスコットランド沖の北大西洋上の空域からもヨーロッパを包囲している。このことはロシアが東西両前線からヨーロッパのサプライ・ラインを切断できることを意味する。このニュースが私の注意をひいたのは、イギリス空軍の公式フェイスブックでスコットランド上空に飛来するロシアの爆撃機に対してタイフーン戦闘機がスクランブルを行なっているとの情報を頻繁に目にするからである。特に10月29日にロシアがNATO空域で行なった挑発行為は多発的で大々的なものだった。ベルギーのモンスにあるNATO軍司令部付きのジェイ・ジャンセン報道官は「この24時間以内に行なった我々の観測を通じて、ロシア軍機の数とその一部の飛行計画はこれまでに見られなかった規模だと断言できる」と述べた(“NATO says Russian jets, bombers circle Europe in unusual incidents”; Washington Post; October 29, 2014)。それはアメリカ戦略軍が毎年行っている「グローバル・サンダー」演習の時期を見透かしたかのように行なわれた。『エービエーショニスト』誌のリチャード・クリフ校正員はロシアも演習に参加した米軍機と同様な長距離爆撃機を飛行させたと指摘する(“Spike in Russian Air Force activity in Europe may be a reaction to large US Strategic Command bombers exercise”; Aviationist; October 30, 2014)。

スコットランドのアレックス・サモンド自治政府首相は上空での緊張をもっと意識する必要がある。スコットランドが連合王国の国防の傘によってロシア航空兵力の侵入に対する必要があるのは明白であり、事態はファスレーン海軍基地を母港とするトライデント戦略ミサイル原潜の問題をはるかに超越したものなのである。西方前線でのロシアの包囲網はポルトガルにまで拡大している。スコットランド空域は、そうした動きを阻止するために重要である。興味深いことに、イギリスやノルウェーのような西方前線の国がバルト海および黒海地域の「新しいヨーロッパ」の国々と同様にロシアから直接の脅威を受ける一方で、「古いヨーロッパ」の国々はそうはでない。これはドイツに代表される「古いヨーロッパ」がイギリスや「新しいヨーロッパ」よりもロシアに柔軟姿勢である理由の一つかも知れない。ヨーロッパにおけるロシアの脅威を論ずる際に、メルカトル図法のように標準的な世界地図を見慣れていると東方前線にばかり目を奪われがちである。ロシアの海軍と空軍はムルマンスク周辺からバレンツ海を通ってスコットランドの海空域に進出することができる。 

歴史的に見て、ノルウェーからスコットランドにいたる海空域は大国の係争の場である。両世界大戦ではイギリスとドイツが激しくたたかった。冷戦期にはこの海域がソ連の水上艦隊および潜水艦勢力に対するNATOの防衛線であった。今日ではこの海空域は英露衝突の場である。私はノルウェーからスコットランドの海空域がロシアの支配下に入ればアジアとヨーロッパを結ぶシーレーンが切断されかねないと主張したい。最近になって北極海航路の潜在性にアジアとヨーロッパ双方の政策形成者達が注目している。しかしカナダ沖の航路をとったとしても、大国がぶつかり合う海空域に国際的な商業船舶が入り込んでしまえばロシアの甚大な脅威に直面するだろう。

こうした観点からすれば、ロシアの海軍攻勢も注視しなければならない。アメリカのジョナサン・グリナート海軍作戦部長はウクライナ危機よりロシアの潜水艦の動きが活発化しているが、水上艦隊の方は老朽化が目立つと語っている(“CNO Greenert: Russian Navy ‘Very Busy in the Undersea Domain’”; USNI News; November 4, 2014)。海中の脅威に対抗するにはハンター・キラーとも呼ばれる攻撃型原子力潜水艦が有効な手段の一つとなる。ファスレーン海軍基地は世界最強のハンター・キラーの一つと言われるアステュート級潜水艦の母港でもある。同級艦には最も効果的なソナー・システムが装備されている(“Astute Class Submarines”; BAE Systems Products)ので、潜水艦のように隠密性が要求される兵器体系が「ファースト・ルック、ファースト・ショット、ファースト・キル」を行なううえで非常に有利になる。スコットランド周辺の空と海は、ロシアの進出を阻止するうえではそれほど戦略的に重要なのである。

ここでロシアが東アジアでも同様な行動をとっていることを銘記すべきである。日本の航空自衛隊はロシア軍機に対してこの6ヶ月以内に533回のスクランブルを行なっているが、これは昨年同時期の308回より大幅に増加している(“Russian Jets Invading Japan Airspace In Record Numbers Over Past Year, Japan Wants To Know Why”; Inquisitr; October 19, 2014)。ウラジーミル・プーチン大統領が何を言おうとも、これが日本に対してロシアが行なっていることである。我が国はNATOと同様な脅威に直面しているのである。ナショナリストや左翼は日本がウクライナ危機に関して欧米から自主独立路線をとるべきだと主張する。絶対的な事実はそうした主張をきっぱりと否定している。そうした主張をする人達はクレムリンが深層心理では日本に対して好意的だという証拠を握っているとでも言うのだろうか。

ヨーロッパとアジアはロシアという共通の脅威を抱えている。よって双方は戦略的な政策調整を深化する必要がある。ヨーロッパ諸国の中でも東アジアとの関係強化に最も積極的なのはイギリスで、それは再優先化(re-prioritisation )という語によく表れている(“Does Britain Matter in East Asia?”; Chatham House Research Paper; September 2014)。 スコットランドと北海道の安全保障情勢はそれほどまでに似通っている。

http://newglobal-america.tea-nifty.com/shahalexander/cat3881025/

オバマ政権はアメリカのハードパワーを外交政策に活用することを大変忌避しているので、リベラル派や海外の指導者達さえも大統領自身の指導力不足と超大国の自殺行為を批判している。

世界がロシアや中国といった冷戦の怪物の復活とISISのイスラム・テロに典型的に見られるような宗教的な狂信主義の台頭に直面しているため、我々はオバマがハードパワー外交に稚拙なことばかりに注目しがちである。

オバマがハードパワー外交を好まないなら、もっと強力なソフトパワー外交を展開する必要がある。しかし大統領就任から6年間、オバマはほとんど何も成し遂げていない。

通常は平和志向の国ならソフトパワー外交に力を入れる。
カナダや北欧諸国が開発援助やエンパワーメントを自国の外交政策で優先度の高い分野としていることは非常によく知られ、それによってこれらの諸国は世界の中でシビリアン・パワーとして重要な地位を占めている。
そうした平和志向の国々はアメリカ、イギリス、フランスとは比較にならない軍事小国である。そしていずれもドイツのように全世界とヨーロッパ地域での通貨システム安定の重責を担えるような経済大国でもない。ソフトパワー外交こそが、国際政治の中でこれらの国々の存在感を高めている。

しかし、オバマの政策にはそれすらも無い。

◆アメリカの「世界の警察官退任」発言に対する歴史的教訓

2015年1月24日 グローバル・アメリカン政論

バラク・オバマ大統領がアメリカはもはや世界の警察官ではないと発言した際、それを歓迎する声はほとんど聞かれない。イラク戦争を「傲岸不遜」として反対した者達さえも、あまりに唐突な一言に当惑している。重要な問題は、アメリカが本当に世界の警察官から本当に降りる気なら、その責任の一部でも分担できるパートナーを指名する必要があるということだ。歴史を振り返れば、アメリカはベトナム戦争後に国際的な関与を弱めると表明した。今日と同様にアメリカ国民の間には長い戦争に対する厭戦気運が広まっていた。しかしベトナム戦争後のアメリカを率いたリチャード・ニクソン氏はバラク・オバマ氏よりもはるかに責任ある行動をとっていた。

まずニクソン・ドクトリンについて述べたいが、これは1969年にニクソン大統領が戦争のベトナム化を表明したものである。当時、世界各国のオピニオン・リーダー達はアメリカの衰退を語り、アメリカが世界の安定の礎であり続けるかどうかにさえ疑問を呈した。現在のオバマ大統領と同様にニクソン大統領も同盟諸国に広まるポスト・アメリカ世界への不安を宥めるため、アメリカは条約上の遵守し、同盟国が死活的な安全保障上の権益を脅かされれば支援をしてゆくというメッセージを発した。他方でニクソン氏は、アメリカは敵の脅威に直面している国を背後から支援し、自国の防衛に第一の責任を持つのはそうした国々だと強調した。これらの点はオバマ政権の外交政策と方向性が似ている。しかし超大国がその地位を降りるあるいはその責任を他の国に委譲するというなら、そのためのパートナーが負担を分担できる能力を持てるように支援する必要がある。この点に関する限る、オバマ政権はニクソン政権よりもはるかに稚拙である。両者の顕著な違いが見られるのは中東政策においてである。

ニクソン大統領が自らのドクトリンを公表してからほどなく、パーレビ王政下のイランがペルシア湾の憲兵として台頭するための支援に乗り出した。このことが典型的に表れているのは、ニクソン政権がイラン帝国空軍の強化に対して行なった好条件で迅速な支援である。1970年代初頭のイランはソ連による領空侵犯に悩まされていた。特に高速で飛行するミグ25戦闘機はイラン空軍のF4戦闘機でも侵入を阻止できず、イランはソ連空軍のなすがままに偵察され放題であった。イランは自国の主権下にある領土を守るためにも、最先端の戦闘機を必要としていた。そのため、モハマド・レザ・パーレビ国王は1973年7月にワシントン郊外のアンドリュース空軍基地でニクソン大統領と会談した。ニクソン氏はF14かF15のどちらでもイランの防空に好ましい方を選ぶようにと、同基地での飛行デモストレーションにシャーを招待した。両機の飛行を見たシャーが躊躇なく選択したのはF14である。

帰国したパーレビ国王は翌年1月に30機のF14を発注すると、6月には矢継ぎ早に50機のF14をAIM54フェニックス・ミサイルとともに発注した。ニクソン政権の迅速な行動によりイランは1976年1月に最初のF14を受け取り、それとともにイラン空軍のパイロットもアメリカから集中的な訓練を受けた。その結果は目覚ましい成果となった。1977年8月にはイラン空軍のF14がフェニックス・ミサイルの発射テストで無人機を撃墜し、ソ連の侵入に対するイランの防空能力を誇示した。それ以来、恐るべきミグ25がイランの領空に飛来することもなくなった。ニクソン氏が公約を果たしたと言えるのは、シャーが自国を充分に防衛できるだけでなく、ペルシア湾の憲兵としてアメリカの代役を務められるほど軍事力を備えるなでになったからである。この件から我々が学ぶべき重要な教訓は、アメリカが世界への軍事的な関与を削減できるのはその地域に強固で信頼性の高いパートナーがある場合だけだということである。

上記の歴史的事例と比較すると、オバマ大統領が世界の警察官から降りると発言したことは著しく思慮を欠いていた。ニクソン政権と違い、オバマ政権には中東の地域安全保障でアメリカの責任を委譲できるほど信頼できるパートナーはない。特にイラク政策は稚拙をきわめ、ISISの台頭に見られるように地域の不安定化を深めている。ニクソン政権はパーレビ王政下のイランが地域の警察官を担えるほどの軍事力強化を支援したが、オバマ政権はイラクの治安部隊の再建も行なわずに撤退してしまった。湾岸戦争勃発時にサダム・フセインが空軍機の多くをイランに疎開させ、残りの空軍機もイラク戦争で破壊されてしまったので、イラク空軍は実質的に存在しなかった。よってアメリカとの安全保障合意を結んで地上のテロリストを掃討するためにも、イラク空軍の地上攻撃能力の再建は必要不可欠であった。

このため、イラクはF16戦闘機とアパッチ攻撃ヘリコプターの購入を決断した。マリキ政権はブッシュ政権末期にF16の購入を検討し始めた。彼らが決断を下したのはオバマ政権の発足から数ヶ月後である。イラクは2011年にまず36機を発注することでアメリカとの間で最終的に合意に達したが、UPI通信の報道によればそれでもイラク全土をカバーするには不十分だという。問題はサダム・フセインが政権の座を追われてからイラクにはジェット戦闘機がなかったので、そのような先進機器を使いこなせるパイロットがほとんどいないということであるさらにISISの攻撃から教官とイラク軍パイロットの安全を期すため、F16の飛行訓練地はイラク北部のバラド空軍基地からアリゾナ州ツーソンに変更された。そのうえ、イラク軍パイロットには長時間の集中的な訓練が必要である。よってF16がイラクに引き渡されるのは2017年になるという。イラク議会はF16の引き渡しがさらに遅れる事態に苛立ちを募らせている。

イラクがアメリカから輸入しようとした地上攻撃用の航空兵器にはAH64アパッチ・ヘリコプターもある。しかしオバマ政権がイラクとの合意に達すると、民主党のボブ・メネンデス上院議員が委員長を務めていた上院外交委員会は、シーア派のマリキ政権がISISや反乱分子との戦闘よりも少数派のスンニ派への抑圧にアパッチを利用するのではないかとの懸念を提起した。合意には何とか達したものの、イラク政府は両国で合意した24機に加えて6機のリースを要求した。最終的にイラクはその合意を破棄した。F16の場合と同様に、オバマ政権はイラク政府が要求してきた機数を迅速に引き渡すことができなかった。

上記のような失敗を重ねたためにイラクはISISだけでなくイランに対しても脆弱になった。オバマ政権はISISとの戦いでイランに協調を依頼しながら難しい核交渉を行なう羽目になった。さらにイランはイラクでは南部のシーア派を通じて影響力を浸透させている厄介なアクターである。今やイラク政府はシーア派民兵への依存度を高めている。オバマ氏はイランとの反ISIS提携を一時的なものと考えているかも知れないが、それではイラクの治安には長期的な悪影響を及ぼす。イランは依然としてシリアのアサド政権を支持している。また、シーア派民兵はスンニ派住民を自分達の周囲から追い出そうとしている。そうした宗派間の亀裂を克服する唯一の方法は、中央政府があらゆる民族と宗派を取り込んだ強固な治安部隊を作り上げることである。

イラク国内でアメリカの重要な同盟者であるクルド自治政府は多国籍軍の空爆によってISISの脅威は相対的に封じ込められたが、シーア派民兵を通じたイランの影響力の浸透に非常な危機感を募らせている。それら民兵の内でもアサイブ・アール・ハクとバドル民兵がクルド人にとっては重大な脅威で、双方ともイラン革命防衛隊と緊密な関係にある。シーア派勢力が最も活発なのはクルド地域とイランとも境界を接するディヤーラー県で、彼らはさらに北のキルクークにまで進出している。そうした問題にもかかわらず、オバマ政権は核交渉のためにイランに対する政策を緩和しようとしている。それは一般教書演説で議会の反発を呼び、オバマ氏はイランの脅威を理解しているのか疑問視される有り様である。そうした批判は当然のことで、オバマ氏はまるで中東の安全保障をイランに委任しているかのようにさえ見える。

アメリカがイギリスの覇権を引き継いで以来、その力は好調な時期も不調な時期もあった。ニクソン政権とオバマ政権の歴史的背景はきわめてよく似ているが、それに対応する政策には著しい違いがある。オバマ政権は世界の警察官という責任を投げ出してアジア転進政策をとろうとしているが、その準備は何もしていない。多くのコメンテーターが表面的なアメリカの衰退を議論しているが、本当に問題なのはリーダーシップの質である。ニクソン氏とは違いオバマ氏には外交政策のビジョンがない。パーレビ国王にはニクソンおよびフォード政権との相互信頼があったが、マリキ氏もアバディ氏もオバマ氏との信頼関係にはない。ニクソン氏にはヘンリー・キッシンジャー氏がいたが、オバマ氏には頼るべき外交政策の助言者がいない。両大統領の歴史的な比較によって、今日のアメリカ外交に多大な示唆を与えてくれるものと信じている。

http://newglobal-america.tea-nifty.com/shahalexander/

◆「対露制裁解除を」仏独の合唱 高まる「露発ドミノ不況」懸念

2015年1月22日 産経新聞

 2015年は経済危機がさらに深刻化すると予測されているロシアに対し、欧州の主要国から対露制裁を緩和、もしくは、解除すべきだとの声が相次いでいる。昨年12月、ロシアがクリミア半島を併合して以来、先進7カ国(G7)の首脳として初めてモスクワを訪れ、ウラジーミル・プーチン大統領(62)と会談したフランスのフランソワ・オランド大統領(60)。公共ラジオ局フランス・インターの年頭インタビューに応じ、「私は対露制裁を今すぐにやめるべきだと思っている」と語った。

 ■オランド氏が直言

 制裁解除はウクライナ情勢での進展があれば、との条件付きだが、その根拠として、内戦が続くウクライナ東部について、ロシアはクリミアのように見ていないからだ、とオランド氏は主張する。

 「プーチン大統領と会ったとき、彼は『ウクライナ東部を併合するつもりはない』と語っていた。彼の望みは影響力をそのまま保ち、ウクライナをNATO(北大西洋条約機構)陣営に加入させないことなのだ」

 一方、ロシアの主要貿易相手国であるドイツのジグマル・ガブリエル副首相(55)は対露制裁の継続は「危険ですらある」と、さらに突っ込んだ表現で懸念をあらわにしている。

 ガブリエル氏は1月4日、独紙ビルトの日曜版に対して、「制裁を望む者は、私たち欧州の全てを危険な状況に追い込む」と主張。さらに、欧州の目標はウクライナ危機を解決に向かわせることであり、「政治的、経済的に追い込んで、ロシアをひざまずかせることではない」との見解を示した。

 ■ドミノ不況を警戒

 こうした発言の背景にあるのは、ロシアの経済危機を端緒にした欧州のドミノ不況への警戒だ。

 ドイツ政府は昨年10月、14年と15年の経済成長率を下方修正し、それぞれ1.8%から1.2%(14年)、2.0%から1.3%へと大きく引き下げた。昨年夏以来、ドイツ製品のロシア向け輸出は2割ほど減少しており、独企業に対する影響は設備投資面にも及び始めた。

 一方、フランスもロシア要因により、経済成長率を下方修正した。プーチン政権は昨年8月、対露制裁の報復として、欧州の農産物の輸入を禁止に。農業国フランスの農業団体幹部は「ロシアの措置は欧州を危機に陥らせる」との懸念を示した。さらに、製造費12億ユーロ(約1700億円)とされる仏製のミストラル級強襲揚陸艦のロシアへの引き渡しが対露制裁のあおりを受けて宙に浮いたままとなっており、プーチン政権はフランス政府に対して、違約金の支払い請求訴訟を起こすと圧力をかけている。

 ■仲介役に潜む内向き側面

 欧州諸国への影響は、昨年12月16日の「ブラック・チューズデー」、露通貨ルーブルの暴落を前にした予測であり、今後、人口1億4000万人と欧州最大の市場を持つロシアの状況次第では、さらに落ち込みが深刻化、長期化する恐れが広がっている。

 ドイツのガブリエル副首相は、ロシアを苦境に追い込むことは「ドイツの国益、そして、欧州の利益にはならない」とまで明言した。この主張は、一部で「制裁主義者」とまで揶揄(やゆ)される米国保守派、欧州連合(EU)内の強硬派を牽制(けんせい)した言葉だとも言える。

 1月15日、カザフスタンの首都アスタナで、ウクライナ危機の解決をめぐり、ロシア、ウクライナと仏独の首脳が一堂に会した4カ国会談が開催されると報じられている。仏独がこうして仲介役を担うのは、ウクライナの政治改革促進やロシアの拡張主義を防ぐことを目的にしただけでなく、実は、陰りが顕著になり出した自国産業の救済という内向きの側面が理由にあるのである。

 英紙フィナンシャル・タイムズは8日付で、「窮地に追い込まれたプーチン大統領は、政治的に危険になる可能性がある」ことを一部の欧州の者たちが恐れている、と指摘している。

 制裁がもたらすロシアの孤立化は、是か非か。2015年の国際社会の主要課題の一つになりそうだ。(国際アナリスト EX)

http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/snk20150121553.html

◆ノーベル委員会、オバマ氏に平和賞返上を要請

2014.08.19 ロシアの声

ノルウェー・ノーベル委員会のトールビョルン・ヤグランド委員長は19日声明を表し、オバマ米大統領はノーベル平和賞を直ちに返上することを見直すべきだと語った。

ヤグランド委員長は、委員会は平和賞返上を要請した前例はないものの、「未だにグアンタナモは稼動」しており、アフガニスタンも、リビアの爆撃も存在すると語った。

ノーベル委員会は2009年、オバマ氏が大統領就任後の最初の数ヶ月で行なった一連の演説に対し、平和賞を授与していた。

ヤグランド委員長は、オバマ氏が公式的なメダル返上に当惑しているのであれば、紙袋にメダルを入れ、通常の郵便で返送してくれれば十分だと語っている。

これに対し、ホワイトハウス側はコメントを拒否。

http://japanese.ruvr.ru/news/2014_08_19/276111068/


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