山川草一郎ブログ

保守系無党派・山川草一郎の時事評論です。主に日本外交論、二大政党制論、メディア論などを扱ってます。

ウルトラマンとしての日米安保

2004年01月19日 | 日本の外交
科学特捜隊の本部はパリにあった―。それは近未来、相次ぐ怪奇現象を解明し、怪獣の襲撃に備えるために創設された、捜査と実力行使の権限を有する精鋭部隊である。

その指揮権は、日本国でなく、パリの本部に属するため、科学特捜隊の怪獣への攻撃は、日本国憲法が禁じた「武力による紛争解決」に当たらない。

戦後19年、自衛隊発足から12年後にスタートしたTVシリーズ「ウルトラマン」には、各国の自衛権を超えた「世界警察」の姿が描かれていた。

しかし、科学特捜隊だけで怪獣を倒すことはできず、その力は、あくまでウルトラマンが現れるまでの「予備戦力」にすぎなかった。

その姿は、警察予備隊として発足し、米軍に守られながら、国土防衛に専念してきた「自衛隊」に重なるものがある。

一方、米国の代表的ヒーローと言えば「スーパーマン」だ。クリプトン星から地球へやって来た「移民の子」であるスーパーマンが、異質であるがゆえに力を発揮するという、その物語は「アメリカンドリーム」を象徴しているとも言えなくもない。

スーパーマンの正体である新聞記者クラーク・ケントが異星人であるのに対し、ウルトラマンに変身する科特隊員ハヤタは、地球人であった。

宇宙警備隊員として怪獣を追って地球へやってきた異星人ウルトラマンは、追跡の途中で事故を起こし、ハヤタを死なせてしまう。申し訳なく思ったウルトラマンは、ハヤタの身体に乗り移り、「潜入捜査官」として地球にとどまることにした―という筋書きだ。

従って、ハヤタは可能な限り、科学特捜隊員として怪獣に立ち向かい、限界までウルトラマンにはならない。とは言え、科学特捜隊は怪獣に対しあまりに無力で、最後はいつもウルトラマンが登場して、怪獣を退治するのだ。

この設定に、戦後日本の「国防」の実態が凝縮されている。戦後の日本人にとって、日米安保条約とは「ウルトラマン」だったのである。

他力本願と言えば、あまりに他力本願とも言える、このヒーロー物語に、当時の少年たちは拍手喝さいを送った。戦後の日本人にとって米国は、やはり頼れる存在であり「超人」だった。

そのウルトラマンも、最終回ではゼットンという宇宙人に急所を襲われ絶命。守護神を失った科学特捜隊は、イデ隊員の開発した新型銃でゼットンに立ち向かう。

主役のヒーローが「殉職」するラストに、幼心に衝撃を受けたものだが、それよりも、ウルトラマンを失った科学特捜隊が自力で怪獣に立ち向かう姿に、何か熱くこみ上げてくるものを感じた。

ただし、放送終了の4年後には、もう「帰って来たウルトラマン」に頼ることになるのだが・・・。(了)



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