さてケレンマでの翌日、昨日のご主人の案内と交替して、奥さんのマルゴがどこかに連れて行ってくれることになった。
西の方にかなり車で走り、辿り着いたのは海産物の店で、水槽にエビや貝や魚がたくさんいた。どうやら今夜の晩餐のためカニ、ホタテガイ、エビ、牡蠣などを買うつもりだったらしい。
聞けばパリのミシュランの星がつくレストランが買いに来る[注文する]ところとのことだった。
とにかく新鮮なのだ。
そこを終ると近くのチーズ工場へ案内してくれた。最初に行ったのは山羊の飼育場で、沢山の山羊が屋根の下に柵で囲われて飼われていた。散らばっている藁を取り上げ、差し出すと柵の上から首を出してむしゃむしゃ食べてくれる。
面白いので近寄りすぎて、コートの襟を噛まれてしまった。山羊流の挨拶だったのだ。
驚いた私を山羊が笑っているようにその表情から思えた。
それからチーズ工場に行き、いろんなチーズを見せてもらった。マルゴは勿論チーズを買った。そして私はそこの従業員の人にこう言った。「今日初めて動物園以外で山羊を見たよ。」
その朴訥な従業員の若い男性が、真顔でこう言った。「僕は、初めて日本人を見たよ。」
フランスの田舎の人の中にはこういう人がいるわけだ。
考えてみれば驚くにあたらない。日本にだって「フランス人を見たことが無い。」人だってたくさんいるのだから。また外国人を皆アメリカ人と思っている人もいると、よく来日したフランス人から聞く。
それから一旦家に帰り、ランチを食べて再びあちこち連れてくれた。
この地方には古い小さい教会がたくさんある。
この地方は17~18世紀ごろ亜麻織物、帆布生産で栄えたそうだ。その豊かな経済力と敬虔なキリスト教信仰の結果、特産の花こう岩でできた教会がたくさんあると言うわけだ。
あまり沢山の教会に行ったので、今となっては写真を見てもどれがどれかもわからない。
しかし他の教会と違い、信仰心の厚さをその建物から感じとれる教会であった。
広い大きなお城にも行った。
帰りある陶芸家の所にも寄った。
陶器の個人の工房で、素朴なデザインの物が棚に並んでいた。でもやはり日本人の作品とは違った形や釉薬の模様のもので、見ているだけで楽しかった。
工房主に日本から来たと話すと、彼は日本の楽焼きの本を持っていて嬉しそうに見せてくれた。
(陶芸の分野で日本の技術が高く評価されていることは間違いない。
別のところでも陶芸家が日本の陶芸作品集を自慢げに見せてくれたこともあるし、また別のところの電動ロクロは日本製だった。)
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