日本で初めて会った数週間後、彼女とはパリで再会した。
この時は、ご主人も一緒だった。
前に書いたようにその彼は、北アフリカ出身で、彼女より10歳以上若い。
年下のご主人といると若がえるのか、彼女はこの後も会うたびに若く見えた。
年齢を重ねて痩せていくより、個人的には「ふっくらめ」がいいと思うが、彼女は初来日で着物を着て、その時のことを「まるでクジラでした」といい、気にしているようであった。
それからはダイエット?し(日本食に習い、魚中心でお肉はほとんど食べないそうだ)、少しずつスマートになり、そのことも若く見えるようになった一因なのである。
横道にそれたが、この時は、ゴブラン織りで知られるゴブランの近くの小さな宿に泊まっていたので、車で宿まで迎えに来てくれ、一緒に夕食をとることになった。
この宿はメトロの三駅が使え、観光地を車窓から楽しめる27番のバスが使えるとても便利な宿で、キッチンつきの部屋もある。
予め予約を入れてくれていたレストランはマレ地区の近くで、エプロン姿でオペラを歌う給仕さんがいるレストランだった。
オペラに詳しくはないが、ピアノが始まると急にそのあたりにいる給仕人が一斉に歌い出す。どの給仕人も本格的な素晴らしい声の持ち主で、肝腎の味もよく、日本人に食べやすく軽めで、見た目も繊細な料理であった。
私も彼女も魚をリクエストしたが、ご主人は魚がだめだとのことで、「野菜も好きでないし、健康に良くないのよ」と彼女に言われながら、お肉をおいしそうに食べていた。
彼女がすべてリードしているような夫妻で、ご主人は無口だったが、支払いの段になると、彼がさっと済ませた。
なかなかそれだけでは別れがたく「お茶でもどう?」と言ってもらったが、デザートまでしっかりいただいて満腹だったし、「もしできればお茶より、パリの夜景をみたいのだけど」とお願いをした。
それまで私は、夜はなかなか出歩く機会がなく、初めて見るパリの夜景だったこともあり、その美しさにワインより酔いしれたほどだ。
セーヌ沿いの建物はライトアップされていて「ああパリは本当に美しい街だ」と改めて感じ、エッフェル塔のライトアップにも感動した。
そのエッフェル塔のライトアップを見ている時、黒人の物売りがピカピカ光るエッフェル塔のおもちゃを売りに来た。
彼が「いらない」と落ち着いてさりげなく断わると、すぐに引き下がっていったのでほっとした。この態度に彼の人となりを感じたのであった。
今では何人か肌の色の違う友達もいるが、そういう友達と会う最初の機会だった。そして宿まで送り届けてもらったのだった。
そして帰国後、彼女から「Tutoiement」(親しい二人称)で話しましょうと、嬉しい言葉をいただくのだが、これは私たちの距離が近くなったことを意味する。
そして彼女は、またこの半年後、紅葉狩りにやってくるのだった。
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