フランス人観察記録

日本人から見て解ってきたフランス人の考え方、行動についての覚書

パリジェンヌのマルチーヌ

2011年05月10日 | パリ4区

パリジェンヌのマルチーヌ

そのメールはもう少しで迷惑メールとして削除するところだった。
見慣れない外国人名でのメールだったから。

「この見知らぬメールは、あなたを驚かせたことでしょう。」から始まっていた。
「あなたが半年前に日本で会った私の友人の紹介でメールしました。私の日本への旅についてお願いしたいことがあるのです。」と続く。

どうやら彼女は、半年前に出会った
六人のグループ旅行のリーダ格の女性の友人であるらしい。
突然本人から来ると言うことにびっくりした。

このような場合日本なら、そのリーダー格が先に連絡をしてくるものであると思うのだが、この時が例外なのではなく、その後もこういうダイレクトなメールが来るケースは時々ある。
フランスでは、普通のことなのかも知れない。


彼女は大阪、京都、奈良、東京のホテルの予約をしようとしたのだが、小さいホテル故、フランス語はもとより英語でもうまく意思疎通できないと言うのでお手伝いをすることになった。

彼女は空港から着いた日に大阪泊を予定していたが、京都泊がいいのではないかと提案したところ、「すべて任せる。」と言ってきた。

後の宿の手配は、彼女の希望していたところにすべて電話で予約を済ませた。
彼女は「完璧よ。何とお礼を言ったらいいのかしら。」と喜んだ。やはり外国人には、宿泊予約手続きをスムーズに行うことが難しい宿もあることがこの時わかった。

来る直前に電話があった。空港まで迎えに行くと言うと「黄色いジャンパーを着て行くからそれを目印にね。」と言ってきた。
私が「あなたの名前を書いたカードを持っていくから。」と言うと、「子供のお迎えみたい。」と言いながら笑った。

メールのやり取りをしていて、彼女の心の温かさをその文章から何度も感じた。
温度と言うのが文章にもあるとしたら、それを教えてくれたのは彼女が最初であったかもしれない。

そして彼女は一人でやってきた。
空港で待っていたら、何と時の外務大臣A氏も同じ飛行機であったらしい。もちろん彼は早く出てきた。

彼女は満面の笑み、いたずらっ子のように照れ笑いもしながら、いきなり抱きついて(ハグと言うよりは、抱きつくがぴったり)きた。
今ではハグやビズ(軽いほほへのキス)にも慣れたが、それはそれは驚いた。

初めて会った時から、いやメールを交換していた時から、絶大なる信頼を置いてくれていることが感じられた。
京都の宿まで送ろうとその電車を空港で待つ時すぐに、親愛を示す二人称を使おうと言った。

このタイミングは相手の年齢などにもよるので難しいのだが、彼女はほんとにすぐに言ってくれたのである。
この親しい二人称は一気に関係を近くする。逆に長くついあっていてもまだ距離のある二人称を使う間柄の人もいるのだから。

京都に送り届け、今度は奈良で会おうと約束をした。

数日後、彼女が奈良にやってきた。



奈良を案内したのち宿へ帰る後ろ姿を見送っていて、気付いた事がある。
別れた後、見送っている私に振り返らないのだ。

その後、ほとんどのフランス人がこういう場合、振り返らないのを経験した。
その最初だった。
振り返らずに前を向いて進んでゆく、これはラテン系の生き方に通じるものなのだろうか?


お尻を振り振り、向こうをむいたまま綺麗にさっさと歩いていく50代のパリジェンヌを眺め、「おや?あれ?振り返らないな?」ときょとんとした私であった。



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