ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

劇団プロペラ「夏の夜の夢」

2009-07-20 20:24:15 | 芝居
 7月11日東京芸術劇場中ホールで、シェイクスピア作「夏の夜の夢」を観た(劇団プロペラ、演出エドワード・ホール)。
 この劇団については前回書いた。
 
 白布で三方を覆ったシンプルな舞台。正面に2階あり。
 役者たちは皆ハーモニカを首から提げて、時々合奏したり合唱したり。何せ「夢」だから何でもありだ。よく見ると、みんな眉をおでこの上の方に細長く描いている(前の方の席だったのでよく見えた)。
 
 第1幕第1場でライサンダーが公爵に、ディミトリアスとヘレナのことを暴露すると、イージアスは初耳らしく、驚いてディミトリアスの肩をオイ、とどつく。
 ヘレナに駆け落ちのことをしゃべってしまったハーミアは、ライサンダーを見て ”Oh , sorry " と謝る。
 どちらも自然で生き生きした演出で好ましい。

 第1幕第2場で、クインスに「お前はシスビーだ」と言われたフルートは、ニヤニヤ笑いながら ”Thysby ? or not Thysby ..”するとクインス、相手をじっと見て ”that is the question ? " これには驚いた。ハムレットの独白に引っ掛けたダジャレだが、こんなことをする劇団があろうとは・・・。ダジャレ大好きな野田秀樹新芸術監督の喜ぶ顔が目に浮かぶ。
 彼らはとにかく風のように自由奔放だ。
 
 第2幕第1場でパックの相手をする妖精は、大勢がセリフを分担してしゃべる。全員白衣。パックは赤い横縞のタイツ姿。この人はこの前ジェシカをやった人だ。個人的にはこのパック、結構いい線いっていると思う。わざと超スローに動くパックとかはあまり好きじゃない。それにやっぱり太ったパックは困る。スリムで小柄であってほしい。妖精なんだから。

 第2幕第2場でライサンダーに言い寄られたヘレナは彼を平手打ち!その後のシーンでは怒りのあまり、突如客席に向かって何語か分からない言語でまくし立てる。
 
 第4幕第1場でボトムがティターニアのそばに横になると、すごいオナラの音が(それも汚い音が)する。直後に彼女の ”How I love thee " というセリフが続くので、客席からは笑いが漏れる。その後すぐオーベロンとパックがやって来て、臭い臭いという仕草。
 こういう所、結構品が悪い。

 しかし、最後にシーシュース(役の Thomas Padden )がヴァイオリンを手に取り、ブルッフの協奏曲を一くさりやった時には、そのうまさに驚嘆した。この人、十分プロとして通用する腕前だ。テクニックは完璧だし、音が実に美しい。選曲も気が利いている。
 とにかく、次に何が飛び出すか分からない劇団だ。

 劇中劇のシーンは残念ながら長過ぎるし退屈。あんなに引き伸ばす必要があるだろうか。
 短剣の代わりに、あれは何と言うのか、トイレが詰まった時にパッコン!とやるプラスチックの棒を使っていた。

 「ヴェニス・・」も「夢」も、幸い前方中央付近のいい席で観ることができたので最高に楽しかったが、次にこういう劇団を呼ぶ時は、是非とも字幕をつけていただきたい。今時字幕もつけないで、その代わりにイヤホンガイドだなんて、あんまりだ。
 
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劇団プロペラ「ヴェニスの商人」

2009-07-13 21:50:37 | 芝居
 7月7日東京芸術劇場中ホールで、シェイクスピア作「ヴェニスの商人」を観た(劇団プロペラ、演出エドワード・ホール)。
 この劇団は今ロンドンで評判の、男ばかりの集団で、今回「ヴェニス・・」と「夏の夜の夢」とを引っ下げて来日した。

 舞台には何もなく、周囲に鉄製のやぐらが組んであるのみ。男達は皆同じ粗末な服で、どうも刑務所の中らしい。鉄格子を叩いたり、開けたり閉めたり人を閉じ込めたり、床を拭き掃除したり・・そう、彼らは囚人なのだった!

 彼らは太鼓、トランペット、リコーダーなどの楽器を上手に演奏する。特に合唱がいい。と言っても演技のつなぎなどに移動しつつハミングしたりする程度だが、その小声の合唱が美しい。

 冒頭、公爵が「どっちがクリスチャンでどっちがユダヤ人だ?」と尋ね、アントーニオとシャイロックが出てくるので驚いたが、そのシーンはそれでおしまいだった。最後にまたこのシーンが繰り返されたが、こんな所を強調してどうしようというのだろうか。

 ポーシャは小柄な黒人で、口紅とハイヒールとそれなりの衣裳だが、ネリッサには驚いた。背の低いがっしりしたおじさんで、乳首丸見え、網タイツが実に不気味。

 シャイロックは cockney(ロンドンの下町なまり)でしゃべる。"I hate [hait] him ・・・”ときた。

 ランスロット・ゴボーは看守(役)が演じる。父ゴボーは省略。看守だから当然だが、彼は誰に対しても偉そうに振舞う。一人だけいい服を着ているし。

 ジェシカは小柄。スカーフをかぶり悲しげな表情で、忍従の女という感じですぐそれと分かる。少年の姿になると称してスカーフを取ると、頭はツルツル。なるほど面白い。

 アラゴン大公の、スペイン人っぽい英語の発音が楽しい。(これはどんな演出でもそうだが。)
 銀の箱には阿呆の人形ではなく鏡が入っていた。

 「ユダヤ人には目がないか?・・・」というシャイロックの例の名セリフ(第3幕第1場)の後、舞台には彼と若い白人の二人だけになり、シャイロックはその男の両手を鉄格子にくくりつけて片目をくり抜き、双方血だらけに!やめてくれ~。「リヤ王」じゃないんだから。
 ここを頂点として、他にも暴力的なシーンが時々見られる。

 彼らのセリフ回しは美しいので、合唱と合わせて耳の楽しみは十分だが、所詮男性ばかりなので、目の楽しみが少なかった。

 ポーシャ役の黒人男性を見ていたら、’92年1月に来日し「お気に召すまま」でヒロイン、ロザリンドを演じた、劇団「チーク・バイ・ジャウル」のエイドリアン・レスターを思い出した。ロザリンドを黒人男性がやるなどということは想像もできなかったが、これが思いがけず素晴らしかったので、彼の名は忘れられない。彼はその後’01年6月にも来日し、ピーター・ブルック脚色・演出の「ハムレットの悲劇」で題名役をやり、これがまたよかった。いつかまた彼の演技を見ることができるだろうか。

 
 
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