芸術と本 WORKS ON PAPERの営業日誌

芸術関連専門古書店「WORKS ON PAPER」を営む、代表・濱門慶太郎の営業日誌

イギリスのおじさん2人組

2006-05-30 02:47:49 | 営業日誌
イギリスの2人組アーティスト、ギルバート&ジョージ

この人たち、今はもう60歳を超えたおじさんです。
2005年には、ヴェネチア・ビエンナーレにイギリス代表として参加しました。

その彼らが若い時の作品が、とても刺激的なんです。
例えば…

↑向かって左のページの左端でひざまずいている2人が、彼らです。
右ページでは右端でスーツを着て立っています。↑
なんだか異様な雰囲気です。上の方には顔色の悪い生首が浮いています。




この作品では、上部に「DEATH」と書いています。
「DEATH」って直接的な単語。
真ん中で縦に並んでいるのが、彼らです。
大きいのから小さいのまで3組のギルバート&ジョージが、花と一緒に登場。

自分たちが登場しない作品もあります。


原色を用いていて、とても強いです。
素直に、かっこいい。黒との組み合わせが美しい。

で、分厚いカタログの表紙にも自分たちが登場しています。

赤いスーツと黄色いスーツ。
画面を構成している色は、白黒と3原色の合計5色だけ。
よく考えたらあり得ないんですが、しかしなんというかハマってます。
調和…と言う言葉はふさわしくないような気がしますが、
「これは違うんじゃない?」という感じは全くしません。
むしろ、気持ちがいい。
これが本当にスゴいと思います。

ところで、ギルバート&ジョージは自らを「生きる彫刻」と主張して、自身を彫刻作品としましたことで有名です。
例えば、肌を金箔で覆い何時間も歌を歌い続ける「歌う彫刻」などがあります。
そう聞くと、ここで紹介している作品も「ほっほ~と言うことは…」と納得出来そうな気もします。
まあでも今回は、そんな解釈のようなことは置いておきましょう。


このおじさん2人が、一体何を思いながらやっているのか。
私には、詳しいことはよく分かりません。
よく分からないんですけど、私はものすごく好きなんです。
ギルバート&ジョージ。特にこの写真モンタージュが好きです。

なんというか、勢いがあるというか、強さがあります。
それで気分が盛り上がるので、何度も見たくなるのです。
時には、思いっきり排泄物が描かれていたりもしますが、それはそれで面白い。

ギルバート&ジョージの関連書を入荷出来ると、とてもうれしくなります。
上の写真を見て、少しでも興味が湧いた方。
あなたには、自信を持ってオススメします。
本当に、良いです。

出来れば、作品を目の当たりにしていただきたい。
もちろん図版より何十倍も大きな作品もありますから、かなりの迫力です。

当店の在庫をご紹介しておきます(一部欠品中)。
ギルバート&ジョージ関連の取り扱い書籍一覧

ところで、以前「ギルバート&ジョージは、ずっと2人で生活しているらしい」という噂を聞きました。
真偽は未だ不明です。
他のプライベートにも、かなり謎が多いということです。

やはり興味は尽きません。

WORKS ON PAPER 代表:濱門慶太郎

丸坊主の美術家

2006-05-27 12:15:29 | 営業日誌
先日、丸坊主を抜けるべく美容室へ行きました。
それから数日…ちょっと馴染んで来た気がします。

丸坊主つながりで、思い出したのが工藤哲巳でした。
工藤哲巳について

工藤哲巳といえば、男性器をモチーフにした作品が思い出されるアーティストです。
1960年代~1970年代の活躍がとても印象的です。
のちに東京芸大の教授になりますが、1990年に55歳でこの世を去りました。
インパクトのある作品を見たあとに、芸大の教授だったことを知り、ギャップを感じたことを覚えています。

その工藤哲巳は、作品もさることながら風貌も強烈でした。


これで国立大学の教授なんですから、面白いです。



1963年にパリ・ビエンナーレで行ったハプニング「ヒューマニズムの腹切り」のようす。
本当に腹を切っている訳ではないと思います。



これは何をやっているのかと思えば、またパリでセレモニーをやっているところのようです。
こちらは1980年。丸坊主に白装束、というのもまた強烈ですね。

こうやって見ると、丸坊主には何かしら特有の「意味」を持っている様な気がします。
普通の感じの髪型だったら、少しインパクトに欠けるでしょう。

写真はすべて「工藤哲巳 回顧展」より


私にとって、工藤哲巳は学生時代からスターでした。
彼の作品は、私の想像出来る範囲を超えているのです。
好き嫌いではありません。なんかもう圧倒的なのです。

…で、当分は丸坊主はやめておこうと思いました。

WORKS ON PAPER 代表:濱門慶太郎

脱、丸坊主

2006-05-23 01:38:47 | 営業日誌
2000年の夏、福岡に引っ越して来た時のことです。
美容院に行くのが面倒だなぁと思って、
頭を丸刈りにしました。

いや、面倒だという理由は二番目でした。
本当は、無職だったからです。
中学二年生の時に買ったバリカンを持っていたのです。

(写真はイメージです)

「髪なんてどうでもいいな」と思っていて
丸坊主だと髪について何も考えなくても良いので、
気楽に過ごしてきました。

しかし
もういい加減飽きて来たというか
面白くなくなってきました。
時々「たまには違う髪型でもいいのでは?」と思うことが多くなりました。

ところが丸坊主は「たまには違う髪型でも」と思った所で
全く変化に対応することができません。

と、いうことで、髪を伸ばすことにしました。


髪を伸ばす、とは「ただ切らずに伸ばしっぱなしにする」わけではありません。
おかしくないように、ちゃんと切らなければなりません。

(こういう風にならないように)

伸ばすからにはちゃんと伸ばそうと思ったので、福岡に来て初めてちゃんとした"美容室"に行きました。
お願いしたのは、近所のCOCOON(コクーン)です。

店主のHさんとは以前から面識はあったのですが、髪を切ってもらうのは当然初めてです。

切ってもらうと言っても、
まだ伸ばしたてなので、色々な注文は出来ません。
どんな注文をしたらいいのか、よく分かりませんでした。

そこはさすが美容師さん。
伸ばしたての丸坊主を、
あっという間に丸坊主ではない髪型に変化してくれました。
期待以上の、素晴らしい仕上がりです。

これからどんな髪型にするのか、
まだ全然決めていません。
伸びてから考えます。

コクーンのHさん、優しく相談にのっていただきありがとうございました。
数年ぶりの美容室に浮き足立っていた私でも、椅子に座るなりリラックスできました。
お陰でスムーズに『脱、丸坊主』が出来そうです。

hari & make COCOON
福岡市中央区薬院1-6-28-103
(電話番号などはサイトでご確認下さい)

WORKS ON PAPER 代表:濱門慶太郎

ピカソ!

2006-05-17 02:34:41 | 営業日誌
ピカソ



ピカソと言えば、先日(2006年5月4日)の報道で

>ニューヨークのサザビーズで3日夜、
>オークションにかけられたピカソの1941年の「ドラ・マールと猫」が
>8500万ドルで落札された。

というのがありました。
手数料など含めると、9521万6000ドル。日本円だと約108億円!
絵画オークション史上2番目の高値だったそうです。

そして1位もピカソの「パイプを持つ少年」で、落札額は1億416万8000ドル。日本円で約118億円。

108億円と118億円。
1位と2位で10億円も違います。
「10億円」と書けば簡単なことですが、10億円です、10億円。

やはりその日に落札されたアンリ・マティスの「背中を見せて眠る裸婦」(1927年)が約21億円。
これが、マティス作品としてはオークションの最高落札額なんだそうです。

この10億円がいかに大きい数字かが分かります。
なんだかんだ言っても、ピカソは桁が違います。
と言って、あくまでもオークション落札額だけの話ですが…。

>今回の作品は、ピカソが愛人のドラ・マールを描いたもので、
>猫が嫌いだったとされるドラの右肩後方に、
>影のように小さな黒猫が描かれている。
>サザビーズによると、猫はピカソ自身の投影だとも言われている。
>鮮やかな色彩の絵の具が厚くカンバスに塗られ、体の立体感を伝えている。

こうなると、108億円の作品がどんなものなのか、とても気になってしまいます。
そこで
PABLO PICASSO : A RETROSPECTIVE


を開いて、探してみました。

しかし、同時期の作品はあっても、そのものズバリの作品が見当たりません。

そこで記事をもう一度よく読むと

>米国の収集家が所有し68年以降、一般展示から遠ざかっていた。

とありました。

それはどうりで収録していないはずです。外に出ていないのですから。
結局どんな作品なのか、わからず仕舞いです。

ところで、ピカソに関して私の個人的な好みで言えば



↑この右ページの上に載っている作品が一番好きです。

自転車のサドルとハンドルを組み合わせて、牛の頭に見立てています。
この作品を作るのに、特別な技術など必要ありません。

もしかしたら、その辺に落ちているものを拾って、適当にくっつけただけかも知れません。
もしそうだとしたら、なおさらです。

あの極度にシンプルな構成で、非常に説得力のある作品になっている。
これは、他に類を見ない彼のスバ抜けた”観察力“のたまものではないか、と
私は思っています。

誰でも出来るようでいて、おそらくは誰にも真似出来ない作品です。
その観察力が生む、圧倒的な説得力に私は陶酔してしまうのです。


…とか色々書いておきながら、残念な話があります。
実はこの作品を写真でしか見た事がありません。

ピカソの作品の中で一番好きであると同時に、これまでに見たすべての美術作品の中でも一番好きと言えるほど…。
10年程前に手に入れたこの作品のポストカードを、肌身離さず持ち歩いていたほど…。
好きな作品なんです。

ちなみに、生まれて初めて自分の意志で行った展覧会は、
高校を卒業して間もなく(もしくは在学中に?)行った「ピカソ展」(熊本県立美術館)でした。

しかし、残念ながら実物を見ていないのです。
本当に残念。
いつの日か、目にすることが出来るのでしょうか。


20世紀思想家文庫5 ピカソ

飯田善國著



彫刻家・斎藤義重による装幀。中央の青が印象的な、ジャケ買いしたくなる一冊。

そういえば、あの牛の頭の作品は一体いくらなんですかね(出来れば所有したい)。

WORKS ON PAPER 代表:濱門慶太郎

非売品の写真集

2006-05-15 23:08:02 | 営業日誌
ニコンの会員用に出版していた写真集のシリーズから「須田一政 わが東京100」

須田一政 わが東京100


なんと装幀は亀倉雄策
亀倉雄策は戦後の日本を代表するデザイナー。
東京オリンピックのポスターやNTTのマーク、明治のミルクチョコレートのパッケージなどが有名です。
もちろん他にもたくさんの代表作があって、挙げきれません。

ところで「わが東京100」です。

須田一政 わが東京100



この写真ではよくわからないと思いますが、
収録している写真作品は、どれも濃い作品ばかりです。
最近の写真作品では見られない濃さです。

須田一政 わが東京100


何が濃いのか?
それはなんと言っても、被写体になった人たちです。
ガツンときます。
「見たぞ!」という気分になります。
「お腹いっぱい」という言い方も出来ます。

当時は、会員配布用の非売品だったそうです。
詳細は「須田一政 わが東京100」のページでご紹介。

須田一政についてはこのページで。


WORKS ON PAPER 代表:濱門慶太郎