車止めピロー:旧館

  理阿弥の 題詠blog投稿 および 選歌・鑑賞など

ことりさんのうた

2009年11月14日 | 八首選 - 題詠2009
ことりさんの歌から8首。


099:戻
地平線が美しいから戻りましょう羊雲がやがて茜色に染まって

086:符
うす青き冬の切符を握りしめいつかひとりになるための眠り

084:河
真昼間の銀河の不可思議わたしたちいつも岸辺を辿ってばかり

053:妊娠
妊娠ってねおなかの中にほんのりと鈴蘭燈が灯ることホントだよ

030:牛
売られてゆく牛の額をなでてやる父の厚くてさみしいてのひら

026:コンビニ
コンビニはさびしき魚礁仄白く発光すればウミユリが揺れる

023:シャツ
Tシャツの袖ざきざきと切り捨てて驕りの夏をまちわびている

002:一日
風の一日雲の一日花の一日わたしの一日どの一日もすんすんとせつない



自分には決して出来ない言葉の使い方をされる
歌人のうたを読むと嬉しくなります。と同時に嫉妬も覚える。
ことりさんの「すんすんとせつない」とか「ざきざきと切る」とか。
そう。詩心なんだよなぁ。

26番。
初句、二句でやられてしまいました。
コンビニはさびしき魚礁。
たくさんの「魚」たちが、何を欲するでもなく、
ただ影をもとめて集まり、漂っている。
お互いに話をするでもなく。他にいくあてもなく。
コンビニはさびしき魚礁。

30番。
牛には、悲しみ・寂しさがよく似合う。
大きく潤んだ、黒い瞳をしているから。
いま蘇ってきた記憶があります。
小学生のころ、牛の頭を恐る恐るなでようとしたら、
いやいやと首をよじって逃げられたこと。
動物にはこちらの怯えが伝わるんですよね。
他意のない優しいてのひらだけが受け入れられる。

2 コメント

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ありがとうございます。 (ことり)
2009-12-10 18:04:52
お礼が大変に遅くなりまして、本当に申し訳ありません。

きちんと整理整頓もしておりませんでしたわたくしの百首からこのように丁寧に読み解いていただきまして、うれしいです。

励みになります。百首を詠むなんて、最初は永遠の彼方みたいな気持ちでおりましたが、どうにかがんばることが出来ました。このように完走した歌を取り上げてくださる方々のおかげでもあるかと思います。

来年ももしご縁がありましたなら、どうぞよろしくお願いいたします。

もっと上達したいです



こんばんは。 (理阿弥)
2009-12-10 19:46:46
はじめまして。
完走、お疲れ様でした

百首を詠み終えたときには、格別の喜びがありますよね。
丁寧にお礼を言ってくださいましたが、
こちらこそ素敵な歌をたくさん読ませていただいて、
本当にありがとうございます。

来年はどういう形になるか分かりませんが、
なるべく鑑賞は続けたいと思いますので、
どうぞよろしくお願いいたします。

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