W1D (Whisper 1inch Deeper)

演劇・ダンス・アートのための備忘録

文化学院の改築問題

2006-02-27 02:58:01 | Weblog
 久しぶりに東京・御茶ノ水にある母校・文化学院を訪れる。というのも、この学校の校舎が4月以降に改築(解体)されることとなり、卒業生や在校生、学校関係者の間で、さまざまな意見や運動が出てきているからだ。特に戦前に建てられた旧館校舎は、この学校のシンボルでもあり、関係者であれば誰もが愛着を持つものである。

 文化学院が創設されたのは1921年だが、立てたばかりの真新しい校舎は1923年の関東大震災により損壊してしまった。現在残っている地上3階・地下1階の旧館校舎の建物は、その後1937年に再建されたものだ。重厚でありながら丸みを帯びたコンクリートの壁、外壁一面を這う蔦(つた)、エントランスに大きな口を開けるアーチは、その前を一度でも通ったことのある人であれば、決して忘れることのできない独特の雰囲気を湛えている。細部にもさまざまな趣向が凝らされていて、舞台装置のように突き出たヴェランダ、軒先に顔を覗かせるスパニッシュ瓦、そして縦長で観音開きに開閉する把っ手付きの窓の列などを持つ。

 学校の創立者である西村伊作が独学で設計したこの個性的な建物は、これまでにも貴重な西洋建築として数多くの学者・研究者の関心を集め、あるいはテレビドラマや映画、CM、PV、雑誌等のロケ地として数多く登場してきた。最近では、テレビドラマ『離婚弁護士』や、米国リメイク版『呪怨』などのロケで使われているから、「ああ、あそこか」と思う人も多いだろう。また、街の景観を考える上でもその佇まいは、駿河台に続く並木道“マロニエ通り”には欠かせないランドマークとして地域民からも親しまれてきた。

 この歴史的にも文化財的にも重要な建造物が、なぜ改築(解体)されることになったかというと、一つには校舎の老朽化とともに、耐震上の問題もあるため、対策を講じなければならないこと。もう一つは隣接する浜田病院がこの4月から高層化のための改築工事に入るため、その解体・建築の騒音で授業がままならなくなることだそうである。そして、こうした経緯の背景には、昨年暮れより学校の理事長が代わったことによる学校経営自体の改革という面もあるらしい。

 こうした事態に受けて、卒業生、在校生、講師などの間でさまざまな動きがでてきている。改築反対を唱える者、歴史的建造物としての認可を取って建物の保存を検討する者、解体される前に校舎の姿をとどめようと映画撮影を敢行する者、そして記念写真集を刊行しようと呼びかける者、等々……。

 ともあれ、これから3月いっぱいまで、校舎を撮影する人がどんどん増えていきそうな気配である。