joy - a day of my life -

日々の体験や思ったことを綴ります(by 涼風)。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

中立か支配か 『ザ・サーチ グーグルが世界を変えた』ジョン・バッテル (著)

2006年04月29日 | Book
話題のグーグル本が次々と出て本屋に平積みされていますね。その一冊を読んで見ました(本屋で買ったわけではないですが)。題名は『ザ・サーチ グーグルが世界を変えた』(ジョン・バッテル 著)。

グーグルと言っても僕は何がすごいのか全く知らず、まわり(というか色んなブログ)が騒ぐので気になっていた程度でした。たかが検索に何を騒ぐのだろう?という感じで。これを読み終わってもどこかで「でもたかが検索だし、期待しないほうがいいんじゃない」という想いがどこかであります。

しかし同時に、グーグルがなぜこんなに話題になるのか?ということもなんとなく分かった気がします。

僕は新技術・流行・時代の新しい流れというものに疎いと自分で思っていて、その新しいものが定着して初めてその重要性に気づくタイプの人間だと思っています。

この本はそういう僕のようなタイプにもグーグルの重要性をとりあえず教えてくれる本です。ただ、技術の話が(僕にとっては)少し細かくなるとついていけませんでした。

著者がグーグルという検索で強調する点(の中で僕が理解できた)のは、

・(開発成功当時の)グーグル検索はあらゆる検索の中でもっとも網羅的にウェブ上のデータをカバーし、打ち込まれたキーワードの文字を拾い出してくること。

ただ、この文字を拾い出す過程で、グーグルはそこになるべく検索機の解釈を込めないこと。

これは他の、例えばアマゾンの検索などとは違うらしく、他のポータルサイトの検索では、打ち込まれた文字から使用者の意図を解釈し、より使用者にあった情報を提供しようとする方向に開発が行われています。

ただその際に行われる他の検索機の開発方向は、広告主が払ってくれるお金に応じて、その広告主のページに誘導するような結果が打ち出されます。

ヤフーなどはこのモデルを、立派なビジネスモデルだとして追及しているそうです。

それに対してグーグルの方向性は、あくまで“中立”を保持すること。

打ち込まれたキーワードと関連するページを網羅的に紹介するスケールが革新的だったグーグルですが、またグーグルがそのページを提供する仕方は、商業的な要請に縛られないことをポリシーとしてします。

このあたりが30前後のエリート技術者が作った一風変わった傾向として強調されます。

グーグルが提供する検索結果は、あくまでキーワードに関連するページの中で、閲覧数の多いページを先に表示し、その閲覧数の多さも、どのようなリンクの経路でクリック数が多くなったかを緻密にサーチすることで、より“有意味”なクリックの数を弾き出します(ランク方式)。

それによりグーグルは、「中立」により使用者の側に立った検索結果を出すことを可能にしました。

しかしこの「中立」性とは、もちろんグーグルのアルゴリズムが作り出すものです(「アルゴリズム」という言葉の意味は僕は正確には知りません)。

したがって、世の中はウェブのページを網羅する能力の点で秀でるグーグルを使うように強いられる一方で、グーグルが弾き出す「中立」的な検索結果がキーワードと結果との有意的関連であるという結論を一方的に押し付けられることになります。

グーグルのもつこの「中立」的なポリシーと圧倒的な技術力が、こうして、世界・社会に対して、何が重要であり何が重要でないかを決める基準として作用します。

このことがもたらすネガティブな作用も例えば著者のジョン・バッテルは紹介します。

例えば、今やネットを用いない商売は消え行く運命にあると言われるほどネットの影響力は大きいものです。しかしネットが実際に消費者に市民に影響力をもつのは、検索を通じてネットに接するからです。

そこで、ある商店主が自分の商店名をグーグルで検索すると第一位に自分の名前が来ました。グーグルのアルゴリズムがその名前を選んだのです。

あるいは、今私が思いついたのですが、検索して上位に来るワードを使ってネット上のお店を作りビジネスを始めるというアイデアもあるでしょう。

そのようにして資金を借りビジネスを始めます。順調にお客はグーグルを辿ってネットのお店に来ます。グーグル様様です。

しかしこのお店は、お客が来る案内を完全にグーグルに依存しています。たとえグーグルにお金を払っていなくても。

ある日突然グーグルが、検索結果の表示方法を変えると、このお店はあっという間に結果順位が下がり、100ページ目に来てしまいました。100ページも後方の順位までクリックする人はおらず、そのお店は倒産の危機に迫られました。

これは本書で紹介されている実例です。グーグルは、その都合でアルゴリズムを変えるだけで、多大な影響を市民の生活にもたらします。

そのお店は仕方なくグーグル独自の広告方式アドワーズの権利を買うことを強いられました。

アドワーズはそれまでのバナー広告と違い、打ち込まれたキーワードに基づいて関連性のある広告をグーグルが選び出し表示するもので、皆さんのほうがよくご存知だと思います。

この広告も、グーグルの「中立性」というスタイルに固執する理想主義的な創業者の青年たちが採用したスタイルで、あくまで検索欄に打ち込まれたキーワードと関連する広告を、けばけばしいデザインを省いた文字だけの広告で検索結果とは別に表示するものですね。

(今「大足」という文字をグーグルに打ち込んだら、検索結果とは別に、「大足行きのツアーなら エイビーロード海外旅行予約サイト ツアー、航空券、ホテル情報満載! www.ab-road.net/」という広告が出てきました)

この事例は、「中立」であることを標榜しながら(グーグルの社是は“Do no evil”)、その圧倒的な技術力で個人の生活を完全にグーグルに依存させる危険性を示しています。

インターネットの時代だとよく言われますが、インターネットの影響力を左右するのが検索機であることを、グーグルは教えてくれました。それはヤフーもマイクロソフトも気づかなかったことだそうです。

つまり、ネットが影響を及ぼすのは、どういう情報を使用者が見るかで決まり、どの情報を見るかは検索機が決めるということ。検索機のアルゴリズムが私達の生活を決定することになります。グーグルの社是が“Do no evil”とわざわざ言うことは、いつでも彼らは“evil”になることができることを示しています。

その危険性を示した事例の一つが、中国政府の圧力に屈して、政府が指定する有害サイトを検索結果から排除する決定でした。中国ビジネスでの展開か「中立性」かの選択を突きつけられたとき、彼らはビジネスの展開を選びました。

このことは、検索の圧倒的な技術力が生活の隅々まで影響力を及ぼす一歩となりうると考えられます。中国政府との交渉やアメリカ政府の愛国法などによって、グーグルはいつでも検索機能を使用者に無断で変更することができ、そのような検索機能を私たちは「中立」と信じて使用します。

これはグーグルの問題というより、ウェブという技術の問題ですね。今までも新技術が生活を支配する事例はいくらでもありましたが、検索はそれとは比べようもないくらい個々人の生活を誘導する可能性をもっています。

おそらくケータイにコンピュータの機能が埋め込まれ、私たちは生活のあらゆる情報をネットで得るようになるのですが、そのときに検索機会社の意向に操られないという保証はないわけですね。

これは、グーグルを越える検索機が現れても消えない問題です。“no evil”という言葉を無条件に信じられるほど、私たちはナイーブにはなれません。


グーグルという会社が本格的に大きくなり始めてから、まだ6、7年ほどで、オン・ジ・エッジと変わりません。圧倒的な技術力をもっていると言っても、それは全く揺らぎようのない優位なのか技術に疎い僕には分かりませんが、彼らがマイクロソフトのようになれるかどうかはまだわかりません(もうなっている?)。

ただ、その「中立性」という看板とビジネスとのつながりをどう結び付けていくかで、グーグルはつねに自己矛盾を検証しながら解決策を導き出すよう強いられていく気もしました。

アドワーズは一つの解決策でしょうが、それでもウェブメールでメールの文章と関連するアドワーズの広告をメールに添付する機能は大いに不評だったそうです(その文章を機械が“読んだ”わけではないとしても)。

どこまでグーグルは「中立」であるのか。創業者でスタンフォード出身のインテリ青年である二人は、そもそもビジネスというものに興味があるのか。ビル・ゲイツほどビジネスに興味がないとき、彼らの「中立」にこだわる理想主義は、ルソーの「一般意思」のように、グーグルによるウェブと市民生活の支配にならないのか、等等いろんなことを思わされます。

この本はおそらく、「初期グーグル」に関するレポートということになるのでしょうが、なぜグーグルが話題になるのか、そのことを一般の人にも教えてくれる本だと思います。

参考:

同書を紹介したものとしては、「The Search -Webの進化をSerachという観点から俯瞰する-」『CD、テープを聴いて勉強しよう!! by ムギ』

ネットで話題のグーグル・アドセンスをめぐるトラブルの事例報告については、「【驚】Google AdSenseからの契約破棄通知」「【業務連絡】Google AdSenseのリンクを停止」『たけくもメモ』 この不正クリックの問題も『ザ・サーチ』で取り上げられていて、グーグルも対策に追われているみたいです。

この不正クリック疑惑の問題を通してグーグルの業務方針の問題点を述べたものとしては、「梅田望夫さんのブログで」『たけくまメモ』、「例外処理=プロとアマの違い」“404 Blog Not Found”

また、グーグルの技術力、グーグルという会社の成長度について冷めた目で分析しているものとして、「グーグルの価値」「『国家の品格』と『ウェブ進化論』」『池田信夫 blog』

逆にグーグルのビジネスとしての可能性を指摘したものとして、「Googleは広告会社か?」“404 Blog Not Found”

などがあります。

『本』 ジャンルのランキング
Comment   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 『母が教えてくれなかったゲーム... | TOP | 『あの頃ペニー・レインと』 »
最近の画像もっと見る

post a comment


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

Related Topics

Trackback

Trackback  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。