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日々の体験や思ったことを綴ります(by 涼風)。

『インサイダー』

2005年09月07日 | 映画・ドラマ
先日、『インサイダー』という映画をビデオで見ました。



とても有名な映画で、監督は『アリ』『コラテラル』のマイケル・マン、主演はラッセル・クロウにアル・パチーノです。

内容は、タバコ会社の元技術者で副社長が、タバコの製造過程で意図的に中毒性が作られていたことを告発するという社会派ドラマです。その告発の過程で、ラッセル・クロウ演じる元技術者はタバコ会社から法的・経済的な脅迫を受け、彼の告発を放送しようとしたTVプロデューサー(アル・パチーノ)も企業の論理によって様々な妨害を受けます。

私にとって印象的だったのは、アメリカのエグゼクティヴが置かれているとても危うい地位でした。元技術者は会社の副社長だったのに、CEOの意向で簡単に解雇され、それを境に高級住宅の売却を余儀なくされ、病気を抱える子供の医療保険を本気で心配せざるを得ないという経済的ストレスに曝されます。

彼は仕方なく高校で化学を教えますが、その生活の落差は見ていて胸が締めつけられます。もちろん高校教師自体は、「悪くない」職業だけど、企業のエグゼクティヴから底辺高の教師という仕事の落差は、それが本意でなければ、受け入れるのに時間のかかることは想像に難くありません。

たとえ高級を得ていても一夜にしてそれまでの努力が無駄になるというアメリカの過酷な競争社会の一面を見た思いがしました。日本ではそういう話はあまり聞いたことがありません。

先日の読売新聞には、TVの放送局で高給を得ていたドイツの40代の男性が、仕事を失うことで、「公的奉仕事業」に従事せざるをえないことが報じられていました。

現在のドイツでは、失業保険が以前の給料額と連動せず、一律にかなり低い額に抑えられており、さらに就職への意欲を失わせないために(つまり福祉に依存させないために)強制的に肉体労働をさせています。一時間一ユーロだったと思います。1ユーロは130円です。

彼は「家も失い絶望したけど、自分を安売りすることには慣れるようになった」と言っていました。

人間はアイデンティティに寄りかかって生きている動物です。高給のホワイトカラーが道路のゴミ拾いをすることは、彼にとっては想像を絶する屈辱なのではないかと思います。

「グローバルな」、つまり無法による食い争いという世界の経済の現実を視るのはいい。それを認識できなければ、政治家も学者も評論家も失格です。しかし、それに対してどう対応するかという点で、ただその無法地帯を受け入れるだけなら、「政治」をする必要はないし、勝手に世界はそうなっていく。

「政治」というのは、その無法な世界に秩序をもたらすことが本来の仕事です。その秩序を考える意欲がないのなら、最初から政治をする必要はないと思います。

涼風

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2 Comments

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Unknown (せんたろう)
2005-09-12 22:05:13
はじめまして。

確かにアメリカの競争社会の格差には驚かされました。そしてこの映画は実話ということでびっくりしました!!
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Unknown (涼風)
2005-09-12 23:52:47
せんたろうさん、こんにちは。



そうですね。私も「ホワイトカラー」の危うさを改めて思い知らされました。



でも、日本のホワイトカラーにしても、これから企業のポストがどんどん減る可能性があるので、自分の子供達をどう教育するのかで悩んだりしているみたいです。



いつでも、誰でも不安を抱えて生きているのが今の社会なんですね。



気が向いたら、またいつでもコメントくださいね。
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