『乙女の祈り』という映画を観ました。監督は『ロード・オブ・ザ・リング』で超有名なピーター・ジャクソンで、1994年に製作された映画。
舞台はニュージーランド。イギリスから転校してきた名家の少女と地元の少女が女学校で出会い、親密に仲良くなりその想像世界を共有するようになります。その豊かな想像の世界を共有する間は良かったのだけど、名家の少女は親の愛情を受けられず孤独を感じ、それだけに二人の少女はお互いを想い合い強烈に惹かれあうようになります。そのあまりにも慕い合う子供たちを見て危惧の念を感じた少女たちの両親は二人の仲を遠ざけようとしますが、それによって一層ふたりはお互いを求め合うようになり、ついには二人で片方の母親を殺害します。その母親を殺せば二人は一緒にいられるようになると思い込むことで・・・
この映画がショッキングなのは、二人の少女が親に理解されないという孤独な想いをもち、それだけに一層お互いを必要とする心理が見事に映像化されているから。愛を求めるがゆえに孤独になってゆく人間の心の闇を、言葉ではなく映像で完璧に再現しているがゆえに、その美しい映像が逆に見る者の頭をくらくらさせます。
最後には二人は片方の母親の殺害を謀りますが、その結末がショッキングなのは、そこに至るまでに少女たちの孤独と愛情への飢餓感が鮮烈に描かれているからです。
ご存知の人も多いのでしょうが、この話は事実であり、二人は服役後に釈放され、現在も存命しています。そのうちの一人はこの映画が公開された後に「あの少女は自分だ」と名乗り出たそうです。
映画としての完成度はとても高く、観てよかったと思います。しかし、あまりにも人間の心理を完璧になぞっているがゆえにその映像世界は不気味であり、人に薦めたいとは思えない映画でした。
涼風
参考:「乙女の祈り」『映画瓦版』
「乙女の祈り」『映画瓦版のDVD日誌』
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