ローマ皇帝クラウディアの妻メッサリーナは虚栄心、物欲、そして何より性欲の強い女だ。
虚栄心は皇妃としては前例のない、凱旋式に参加してローマ市民を唖然とさせた等々で満たした。
物欲は、他人の財産、庭園などを、その持ち主を姦通罪や国家反逆罪で陥れて奪うなど残虐非道だ。
そして性欲が異常なのだ。
俳優や遊び人と寝るだけでは飽き足らず、夜な夜な娼家に下り客を取っていたという。下賤の者に身を任せたということだ。
そして遂に、美男で評判のシリウス、元老院議員で次の年は執政官に選出されている40代の独身男。
この男にメッサリーナは惚れ込んでしまったのだ。
そして浮気だけなら兎も角、結婚まで考え、夫の留守に実行してしまったのだ。
二重婚である。
周囲の者たちもこればかりは容認できないと、クラウディアに知らせた。
尋問されたシリウスは一言も弁明せず死罪と決まり自死した。
皇帝はメッサリーナに対しては弁明を求めるように使者を使わせたが、その使者は皇帝の命を偽り、兵士を使わしメッサリーナの殺害を命じた。
かくしてメッサリーナのの23歳の人生は終わった。
現代イタリア語で「メッサリーナ」と言えば性欲をコントロールできなくてだれとでも寝る女の代名詞だそうだ。
だが、なぜ皇帝クラウディアは皇妃の放縦をここまで許してしまったのか?
カエサルは正妻がありながらクレオパトラとも結婚し3人の子まで作った。
当然二重婚である。
そして人の妻とも公然と寝る男だった。 寝取られた男も承知なのだ。
誰もが知る公然のことで秘密でも何でもないのだ。
そしてどの女もカエサルのことを恨むどころか生涯愛しているのだ。
この時代の倫理観というのは現代以上におおらかな部分もあったのかと思ってしまう。
女は男の共有所有物、男も女の共有所有物みたいな。
だからクラウディアも浮気ぐらいまでは目をつむったのかも知れない。
流石に皇妃の二重婚だけは許されなかったということか?